第30話 俺様ボス、誕生

 トモは、ユタカに言ってる。

 「ユタカ。フィルを含めて、新人4人に独り立ちできるメニューを作れ」

 「はあ?」


 今度はフィルに。

 「フィル。2年間だ。2年間、ユタカの所で研修を兼ねて仕事をする。

 そして、2年後にはフランスに戻り、他の2人を連れて3人で会社を興せ」

 「え?」


 トモの言葉は続く。

 「エドの見解では、あと数年で、フォン・パトリッシュは終わるだろうとの事だ。そうなると、欧州とのリンクはイタリアだけになる」

 ユタカが、すかさず言ってくる。

 「イタリ」

 トモは、ユタカの言葉を遮る。

 「だけど!フランスにあると、欧州の事がリアルに分かる。

 それに、一々イタリアに伺いを立ててやるのは適切ではない。そう思わないか?」

 それを聞き、ユタカは呟いてる。

 まあ、そうだけど…。


 トモの話は続いてる。

 「そのスポンサーとして名を上げるのは、アメリカにあるスーザンの病院であり、パースにあるエドワード・ジョンソンの病院であり、ミスター・コウの病院だ。もしかしたら、香港のミスターの病院にも話をすれば、名を上げてくれると思う。ミスターには、まだ話をしてないから分からないけど。

 イタリア国も、名を上げる。そして…、パースにある、フクヤマグループの一つとしてリンクする。OK?」


 フィルは嬉しくなった。

 「ラジャ!王子、よろしくお願いします」


 はあ…。

 深く、ふかーく溜息を吐いたユタカは、フィルに声を掛けた。

 「分かったよ…。それじゃ、フィル」

 「はい!」

 「良い返事だな。それじゃ…、その調子で、私をミスターと呼んでもらう」

 「え…」

 「2年間も毎日居るんだ。出来るはずだ」


 「ミスター…。ミスターだなんて無理だっ。

 王子でなければ、どう呼べば…」

 フィルの頭はパニックになる寸前だ。

 そんな時、トモが助言してくる。

 「フィル、とっておきの言葉があるぞ」

 「どんな?」

 「『ボス』だ。なにしろ会社のトップだからな。ボスと呼ぶのは当然だろう」

 うん、それもそうだなと思い、フィルは声に出して言ってみる。

 「ボス。…ユタカ・ボス」


 その言葉にビクッと反応したユタカは、王子風に表情や口調が変わった。

 「ふっ…。苦しゅうない。良い響きだな。皆にも、そう言わせよう」


 ボスなのか、王子なのか。

 俺様ボスが、また1人誕生した。

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