第21話 祝賀祭

 バトラー用として買ったスーツを身に着けると、なんとなく緊張感がある。

 エドワードは、5月のある日に公式の発表を行いたいと考えていた。

 その日は、9年前に起きたシンガポール銃撃戦の日。

 少しでも、乗り越えて欲しい。

 そう思ったからこそ、その日にしたのだった。


 関係者が、前日にパース入りした。

 そして、当日。

 男性がほとんどだが、女性はここぞとばかりに鮮やかな色のドレスに身を包んでいる。ステージが設置され、そこで式を執り行う。

 日本、香港、シンガポール、ドイツからのゲストが主だ。

 同盟を結んだ病院の関係者も来ている。

 中華料理店のオーナーシェフをしているヨウイチが呟いてる。

 「うー、久しぶりに着ると喉が締まる…」


 そのうちにアナウンスが聞こえてくる。

 「まもなく式が始まります。皆様、ステージ前に、お集りください」


 そして、場内の明かりが消え、ステージにライトが当たる。

 最初にステージに上がったのは、エドワードだった。

 「これより式を執り行います。私はエドワード・ジョンソン。ドンのバトラーです」


 すると、5匹のドーベルマンに囲まれたトモが、ステージに上がってきた。

 ステージの中央には、座り心地の良さそうなソファが置かれてある。

 そこにトモが座ると、5匹は、それぞれ動いた。

 トモの膝の上に1匹、足の前に2匹、ソファに上がってトモの左右に1匹ずつ。


 エドワードが、それを見て呟いてるのか。

 「あの5匹は、勝手な事を…」

 だけど、マイクはその呟きを拾っていた。


 エドワードはマイクを握り直し、言ってくる。

 「ご紹介します。

 トモアキ・フクヤマ。

 このパースを発祥の地として、これから活躍していく、フクヤマ家のドンです」


 一斉に、皆が拍手をする。

 「それでは、ドンとなられた御方からメッセージをお願いしたいと思います」


 エドワードからマイクを手渡されるまでに、トモは呟いていた。

 「ほら、オマエ降りろ。重いんだよ…」

 でも、ドーベルマンは降りようとはしない。


 仕方なく、座ったままでトモは挨拶をした。

 「立ち上がることが出来ないので、このままで失礼します。

 トモアキ・フクヤマです。『ドン』と言われてますが、なりたての未熟者です。

 皆さんの力を借りて、これからやっていこうと思っております。

 ここパースを含め、日本、香港、イタリア、シンガポール、ドイツ。という強力なタッグを組むことができ、大変嬉しく思っております。

 今回を機に、お互いが仲良くして頂ければ幸いです。

 これから、どの様な事が待ち受けてるいるのか分かりませんが、出来る限りの事はやっていこうと思っております。

 そして、皆さんの力をお借りすることも出てくると思います。

 その時は、よろしくお願い致します。 Thank you. 」


 エドワードはマイクを受け取る

 「次に、皆様からメッセージをお願い致します」


 日本からは、サトルの父親である『御』が。

 香港からは、ミスター・ワンが。

 イタリアからは、ユタカが。

 シンガポールからは、シンガポールマフィアのドンが。

 ドイツからは、博人さんの祖父である『御』が。

 そして、パースからは、ミスター・コウが。

 順々にメッセージを言ってくれる。


 エドワードが言う。

 「皆様。ありがとうございます。

 これからも末永くお付き合いくださいますよう、よろしくお願い申し上げます。

 これにて、式を終わらせていただきます。

 それでは、皆様。別室に移って、楽しみましょう」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る