第20話 チャットにて

 4月も終わりに近づいた、ある日。

 トモは、1本の国際電話を受け取った。

 それは、ドイツからだった。

 エドワードがドイツに話をしたらしい。

 その時、ドイツのフォン・パトリッシュの『御』と、PCの画面越しで話をした。

『御』は言ってきた。

 「一度、フェスティバルの前夜祭で会った事がある。今でも覚えてるよ。

 医学生だった君が、声楽の連中と一緒に唄いに来た。

 私は、君に『御大公』と呼ぶ事を許した。

 だが、今日からは歳の離れた友人として、同盟を結びたい」


 トモは、その言葉に応じた。

 「同盟を結んでいただけるのは、とても嬉しいです。

 ありがとうございます。

 ただ、あなたを友人呼びしようとは思っておりません。

 『御大公』と呼ばせてもらう事を、お許しください」


 すると、違う声が聞こえてきた。

 「狸同士の話し合いか」


 トモは、その声の主に向かい睨んだ。

 PC画面から声が掛かってきた。

 「その声は、博人か?」

 「お爺様、お元気そうですね」

 「ああ。フランツも元気だよ」

 博人はPCに向かって言った。

 「フランツ」


 博人から声を掛けて貰い、嬉しそうにフランツはPC画面に声を出した。

 「はい。ヒロト様、なんでしょうか?」

 「お爺様が棺桶に入るまでは連絡してこなくて良いからな」


 それを聞いていたトモは、額に手を置いて溜息を零していた。

 同じく、それを聞いていたエドはゲラゲラと笑っていた。

 PC画面の向こうでは、フランツが『御』に言ってるのが聞こえてくる。

 「御…。ヒロト様が、あんな事を…」


 博人は、フランツに呼びかける。

 「フランツ、返事は?…フランツッ!」

 自分の名前を強く呼ばれたフランツは勢いよく言ってしまった。

 「OK!」


 その返事を聞いた博人は、満足そうな表情だ。

 「うん。良い返事だ。さすがフランツだ」

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