出会いの記憶-④
その夜、僕は祖父母に晩ご飯をお隣で
食べてくると言い残して白浜の家に向かう
インターホンを鳴らすとドタドタと白浜が
近づいてきた。
「いらっしゃい」と快活に笑う彼女に
僕は「いらっしゃいました」と返す。
いらっしゃいましたという言葉にだろうか
彼女はツボに入ったまま数分間笑いが止まらなかった。
「友理。ご飯よ」という若い女性の声が
中から聞こえる。おそらく彼女の母親だろう
僕はまだうちが仲良かった頃の母を思い出す
こんなに快活に声を出すような人だったか
否。母はこんな人間ではなかった
無意識に僕は他人様の親を自分の親を比較する癖がついているらしい。
治そうと思うのだがいつまでも治らない。
僕はこの癖に溜息をつき白浜に手を引かれるままに家の中に入る。
その食卓の中で僕は小学校に入る前の自分の家族のことを思い出して感傷的な気持ちになった。
「ご馳走様でした。とても美味かったです」
と向こうの両親に感謝すると
「お礼ならあの子に言ってあげてください」
と返す。そう言われて僕が
「ありがとな。すごく美味かったよ」と言うと白浜は照れ顔で「別にあなたに作ったわけじゃないよ」という。
とんでもないツンデレだ。
びっくりするというか引くレベルそんなやり取りをしたあとで僕は白浜の家を出て
自宅に帰ると祖父母はもう寝ており
もぬけの殻となったリビングを見渡し
僕は悲しい気持ちになった。
白浜がこの街に来たことは僕にとって
とてもプラスなことのようだ。
そのプラスな面はいろんな所に現れている
と分かるととても嬉しかった。
それから何年かして僕は恋をすることになるのだがそれはまた別の話。
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