第13話 トラベルウィーク3日目!逃げてかわして目的地
昨夜、キャンプ場についた3人は初めてキャンプ場での朝を迎える
外から聞こえる笑い声でタクトは目を覚ます
二人はまだ寝ているようだ
タクトはそっと外に出る
まだ少しくらいがもう少しで二人も起きる時間だろう
タクトはさっさと着替えを済ませる
さっきの声はどうやら近くにあるのテントに泊まる三人組の声のようでタクトを見つけると
「あ、すみません、うるさかったですか?」
と申しわけ無さそうに頭を下げてくる
「いえ、起きる時間だったのでいいですよ」
「そうですか、ありがとうございます」
そう言ってリーダー的な人がほかの二人にもう少し静かにしようぜと囁く
「皆さんはプレイヤーですか?」
「はい、そうですよ?あなたは……」
「僕は実はNPCなんですよ、ほかの二人も……」
「へー、NPCですか、レベルも僕らと同じくらいですね……」
「そうですね……」
「……NPCは大変ですよね」
「……死ぬのが怖いです
死んでしまえば今あるもの全てを失ってしまうような気がして……」
タクトが俯くと一人の男がタクトの肩を叩く
「あぁ、わかるぞ、実はな、俺たちの仲間に一人NPCがいたことがあるんだ、だが……」
男はためらうような間を開けるが話し始める
「だが、そいつはある日突然暴れ始めた
多分、エラーとか何だろうけど収まることがなかった、俺たちは止めようと必死に食らいついたが三人がかりでも止められなかった
ついには俺たちを攻撃してリスポーンした時にはもうそいつはいなかった」
「……」
「だからな、本体が別にある俺たち人間はNPCよりも弱いんだ、逃げ道があるんだからよ、でも、NPC達はちがう、生まれた場所も暮らす場所も、死ぬ場所も、全部がこの世界なんだよな、そいつを俺たちは忘れちまってたんだろうな……」
「……いつか、また会えるといいな」
「あぁ、そう願ってるよ」
そういうと男はあとの二人と一緒にテントに帰って言った
タクトも自分のテントに戻るが中には入らず近くの石に腰掛ける
さっきの話、どこか違和感がある
他人の話ではないような気がする
タクトのデータのバックグラウンドが何かを思い出そうとしているがシステムが押し止める
何かはあるのに何かがわからない
ぼやけてしまった不自然な何かがタクトの心に引っかかったままだ
「タクトくん?おはようございます……」
「あ、おはようミク……」
どうやら起床の定刻が来たようだ
目を擦りながら少しはねた青髪をとかしながらミクがテントから現れる
「今日は早いですね」
「あぁ、目が覚めちゃってな……」
「……何かありました?」
ミクは相変わらず鋭い
だが、黙るタクトをみて察してくれたようだ
「……いつかは……話してくださいね」
「あぁ……いつかが来ればな」
続いてスグも遅れて起床
いつものタクトには言えることではないが今日なら言える
「スグ、遅いぞ……おはよう」
「あ、今日は早いですね、おはようございます」
こちらも目を擦りながらだが、ミクより短めの赤髪は大きく反り返り、ツノのように見える
「スグちゃん、顔、洗いに行こうか」
ミクに連れられてキャンプ場近くの川に洗いに行くふたり
それを見送ってタクトは朝食の準備をすることにする
自分でもできることは何かと探すが定番しか思いつかない
フライパンを用意し、その上に卵をわる
もう片方ではウィンナーを焼く
それらをさらに並べ、食パンをサッと焼く
トーストまではいかないがそのままではない
この絶妙な感じか二人は好きらしい
まぁ、火にさらすくらいなら料理スキルLv.1でもできるんだが……
「二人とも遅いな」
そんなことを呟いてグリルの火をとめる
完成した定番朝食、食卓に並べ、メープルをセット
二人の向かった方へ向かう
顔を洗うにしては遅すぎる
「スグ?ミク?朝ごはんが完成した……ぞ?」
タクトが見たのは川の中で水をかけ合う二人の姿
サンライトが輝かせて美化している
だが、その二人はどちらも下着姿
水着ではなく下着姿
やはり、見られるターンのあとは見るターンが来たか……
タクトは昨日の光景を思い出す
スグには悪いがミク、おあいこだ……
幸いにも二人はまだ気づいてい内容でタクトは茂みの中に隠れ、
「スグ?ミク?」
ともう一度声をかける
二人は声に気づいたようで慌てて服を着る
濡れた体はミクの魔法で瞬間乾燥!
主婦たちが喜ぶひと技
着替え終わり返事を返してくる
「は、はーい!」
「二人とも、朝食作っといたから早めに帰れよ!」
「わかりました!」
気付かれずにミッション成功!
タクトはそそくさと一人でテントに戻る
少しして、二人が帰ってくる
三人食卓に着いていつものようにいただきます
簡単に作った食事だが満足していただけたようで
今日はキャンプ最終日、明日からは海だ
「何がしたい?」
「釣りがしたいです!」「私も……」
というわけで今、川に来ている
釣る場所を探して歩くが初心者だからよく分からない
適当な場所に荷物を置く
三人並んで釣り糸を下ろすが一向にかかる気配がない
近くで釣っている3人グループがいる
そこは何故かバンバン連れていてワイワイしているようだ
そのうちの一人がこっちに気づいたようで
「こっち見んなよ」
なんて言ってくる
チャラいやつもいるもんだと無視したのだが
「NPCだろ?あいつら、雑魚のくせに……」
その言葉にタクトはキレてしまった
3人組に怒鳴り込もうと体を動かした瞬間、タクトの横を何かが走っていった
ミクだ
ミクは至近距離で弓矢を構え、雑魚と行ってきたプレイヤーの首筋に矢の先を当てる
「雑魚って言ったのは……お前か?」
完全に目がちがう
普段のミクではありえない表情をしている
タクトは駆け寄り今にも爆発しそうなミクの怒りを沈める
なんとか落ちついたようだが3人組は落ち着いていないようだ
「な、なんだよ!?お前、いきなり突きつけやがって!」
一人がミクに飛びかかろうとする
ミクは杖を構えた手を振りかぶる
「み、ミク!落ち着け!」
だが、心配入らなかったようだ
ミクはひらりと男をかわす
もう一人の男も飛びかかってくるが二人対一人でもミクはかわしてしまう
疲れ果てた二人の男を見下ろす3人組のリーダーの風格をした女が
「情けない……」
そういった
「あんた、名前は?」
「ミクです……」
女はタクトにも目線を向ける
「た、タクトだ」
「ミクとタクト……あっちのも連れだろ?」
女はスグを指さして言う
「あぁ、そうだがそれがど「私たちと勝負しないか?」……は?」
「私たちも負けたままでは気が済まないんだ、3本勝負を受けてもらえないか?」
凛とした顔つきで真っ直ぐにタクトを見つめてくる
タクトはミクの目を見てやるのか?と聞く
ミクは察してくれたようで深く頷く
「よし、受けてやる!」
「そうこなくてはね!ではまずは……釣り勝負だ!」
「!?」
(これはまずいかもしれない……)
3人と3人、6人が釣竿を構えてスタンバイする
制限時間は20分、より大きな魚をつった方が勝ちというルールだ
スタートの合図と同時に全部が竿を振る
タクトとミクは真剣だが、スグは鼻歌なんて歌いながら楽しそうだ
重大さがわかっていないらしい……
だが、なかなか連れないまま時間が過ぎていく
ふと向こうを見ると結構大きな魚を釣っている
(クソッ!このままでは……)
と焦るのも束の間、終了の合図
結果、あちら側の勝利だ
ミクは悔しそうな表情を隠そうとしている
なぜ、ミクがこんなにも勝負にくらいつくのか……
それは分からない
けれど見ていればわかる気がする
ミクは自分という存在をバカにされるのが嫌いなのだ
だから、そんなことをする奴を許せないのだろう
三人組の見下すような笑みをみれば気持ちがわかる気がする
2回戦目は木登りだ
あちらの男が木登りが得意らしい
だが、こちらのミクも大得意だ
スタートの合図と同時に両者、サーっと登っていく
だが、ミクの方が少し早かった
2回戦目はこちらの勝利だ
だが……
「た、タクトくん!降りられません!?」
ミクは登るのは得意でも降りるのが苦手だった
ここらで1度昼食を挟む
「3本勝負、1勝1敗だな……」
ミクは焦るような表情を見せている、だが……
「しょうぶって何ですか?」
スグの言葉につい笑顔をこぼしてしまう
「そ、そうか、スグはまだ教えてなかったな……さっきの3人組と勝負をしているんだ、次勝たないと負けるんだ……」
「でも、勝負って楽しんだほうが勝ちですよね?」
スグの言葉にハッとしてしまう
タクトとミクは勝つことに必死になりすぎていたようだ
釣りの時のスグはすごく楽しそうだった……
「あぁ、そうだな……」
スグはうーん、と言っていたがなにか思いついたようで
「それでは、楽しんで勝てる勝負を挑みましょう」
_________________________________________
両組が昼食を済ませる
「なぁ、今度は俺達が勝負を決めていいか?」
「え?あぁ、構わないよ?」
「それじゃあ勝負内容は……」
タクトはスグとミクと目を合わせて頷く
「デュエルだ!」
タクトが宣言すると三人組はフッと鼻で笑う
「お前達のレベルはいくつだ?」
「……30だ」
「俺たちは55だ、やる前から分かっているだろ?」
「そんなことわからない!」
真っ先に食らいついたのはスグだ
「私たちは……負けない」
「なら、証明してみろ!私たちを倒してな!」
「あぁ、言われなくてもそうさせてもらうさ!」
デュエルは一対一を3回
1人1回ずつ行い、先に2勝した方が勝ちというルールだ
試合はデュエルタイプで行われ、HPはデュエル専用を使用され、均一に設定される
1回戦目
敵の男 レートVSミク
開始までのカウントダウンが始まる
レートはアックスをつかうようだ
ミクは片手剣を構える
ついにカウントがゼロになり、両者が動き出す
互いに武器を振るがわずかにレートの方が早い
肩にアックスが直撃し、スグの体が吹き飛ばされる
「くっ!はやい!」
スグのHPはかなり削られてしまった
「もう終わりか?」
片腕を抑えながら立ち上がるスグ
「ま、まだまだいける!」
「そうでないとつまらないわ!」
レートはもう一度スグに詰め寄りアックスを振る
だが、今度はスグがガードする
「受け止めたか……」
(どうすれば勝てる?)
スグは考えるが受け止める手が持たなくなってくる
限界と同時に横に体を転がしてかわす
「私の全力を!」
スグは左手に魔法陣を発動させ呪文を唱える
「詠唱 ハッスル!回復!スーパースピード!シェル!」
スグの攻撃が上がった
HPが回復した
SPDが上がった
防御が上がった
「私は……負けない!」
またもや詰め寄ってくるレートの首に向かって剣を振る
レートはそれをガード使用とアックスを……
とそこでスグは体制を低く展開しレートの膝裏に蹴りを入れる
とっさのことに体制を崩しレートは倒れる
その衝撃で自分のアックスが肩に刺さってしまう
「うをぉ!」
うろたえた隙をついてスグは奥義を発動する
「奥義錬磨乱刀!詠唱 ポルターガイスト!」
奥義 錬磨乱刀は武器を適当に振り回す技で命中率は低いが攻撃力は高い
魔法 ポルターガイストは物体を浮かせる魔法
両方を使うことで片手剣を浮遊させ、振り回すという究極奥義を発動できる
空中で暴れる剣はレートを貫通し続ける
攻撃アップが付与されたスグの攻撃はグイグイとレートのHPを削り……終わりを迎えた
スグの頭上にWinの文字が現れる
まずは1勝
あと1勝でタクトたちの勝ちだ
「次は俺だ」
タクトが名乗りをあげる
2回戦目
敵の男 サイVSタクト
サイは魔術使いのようで左手に魔術書を構えている
カウントがゼロになれば正面からタクトが突っ込む
だがサイは動こうとしない
「もらったぁ!」
タクトは片手剣を振りかざす
だがサイに刃が触れる瞬間、衝撃波で体が後ろに仰け反る
ギリギリのところで魔防を展開し、ダメージは入らなかったが衝撃波を使えるとなるとかなりの強者だ
タクトは攻撃から防御に体制を変更する
「ん?こないのか?ならばこっちから行かせてもらおう!」
サイは魔術書を上空に投げる
すると魔術書は光を放ちその形を失う
光の塊となった元魔術書はサイの両手のあいだに浮かび……
「放て!エンドレスリピート!」
サイが唱えた瞬間、光の塊から5色のエネルギー弾がタクト目掛けて放たれる
「……今だ!」
タクトは剣を振り上げ赤のエネルギー弾を真っ二つに切り、続いて青を切る
ステップを踏み緑を切り、魔防を剣に纏わせて黄色を弾き白にぶつけて消滅させる
だが脅威は目前まで迫っていることに気づかなかった
「召喚!ファングガイアドラゴン!」
サイの召喚したドラゴンがタクトの立つ地面ごと飲み込んでいた
成すすべもないままタクトは意識を失った
「フッ、雑魚は雑魚のままだ……」
最後に聞いた声が頭の中に響く
_________________________________________
目が覚めると空は真っ黒になっていた
「あ、お目覚めですか……」
左側にスグがいて手を握っていた
「デュエルだったから良かったものの……」
「あぁ、ごめんな、負けちゃって」
「いいえ、ちゃんと仇を討ちましたよ……」
ミクが現れる
「仇?」
「NPCをバカにしたお返し、ちゃんとしてやりました」
ミクの目はいつものものに戻っている
「と言うことは……」
「はい、勝ちました!」
勝負は2対1で勝利
話によるとミクが物凄かったらしい
どうすごかったのかは教えたくないらしいが……
実はあの三人組、このゲームでNPC狩りをしている組織の一員らしい
その割にデュエルを受け入れてくれたことからするとそこまで根っからの悪ではない気もする
「もう体調は大丈夫ですか?」
「あぁ、だいじょう「じゃあさっさと行きましょう!」……へ?」
その瞬間、当たりが光に包まれる
気がつくと木々のざわめきがとまり、代わりに波の音が聞こえる
そう……海だ
真っ暗な空にどこからとも無く聞こえてくる波の音……風情があるねぇ
「それじゃあ、泊まるとこに行きましょう!」
タクト達は今日から海の宿屋 通称オーシャンハウスに泊まることになっている
ミクとスグに手を引かれ、いつの間にか重い荷物を背負わされ、砂浜を走っていくタクト
二言だけ言わせてくれないか?
ありがとう、いつまでも一緒にいてくれ
それと……
「ワープ使えるならはじめっから使ってくれよ!」
明日から海の生活が始まる……
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