第12話 トラベルウィーク2日目!目覚めはテントで、当たり前でありたいな
目覚めるとそこはテントの中
まぁ、当たり前だな
起きたら屋根の上でしたなんてことになったら恐ろしすぎる
何よりも恐ろしいのは自分の寝相だが……
隣には誰もおらず外からは二つの声色がうかがえる
眠い目を擦りながらテントの表面から微かに入る陽の光で着替えを探す
着替えを済ませるとテントを出て二人におはよう
二人ともどうやら30分前に起きたようでもう朝食はできていた
机に並ぶのは食パンに焼いたステーキを挟みレタスやトマトやらをお好みで追加するもの
サンドイッチだ
タクトの起床に合わせたかのように焼きたてだ
「タクトくん、川が向こうにありましたので顔を洗ってきてください」
ミクの言葉にうなづいてタクトは言われた方へと向かう
歩くにつれて水の流れる音が大きくなってくる
昨日は暗かったからわからなかったが川があったんだな
そう思いながら川に両手を沈め、器を作って水をすくう
それを顔にかけながらゴシゴシと洗う
冷たい水のおかげで完全に目が覚める
(どうせなら体も洗うか)
タクトは服を川原の大きな石に置いてパンツのみで川に入る
足は冷たくて少し痛いが木々のあいだからこぼれる木漏れ日が少し暖かい
タクトは頭、腕、肩、腹、背中、脚と流していく
すべてを洗い終わり、服を取ろうと川原へ向かった時
「タクトくん?早くしないと・・・!?」
ミクだ
肉をひっくり返すやつを片手にミクが現れた
その目に映るのはパンツ1丁のタクト
ミクは顔を赤くするがすぐに視線をそらして
「す、すみません・・・さ、冷めちゃいますから早くしてくださいね?」
そう言ってそそくさと帰ってしまった
タクトは呆然と口をパクパクするだけだった
タクトは着替えを済ませるが少し座る
(……今まで見ることはあっても見られることなんて無かったのに……は、恥ずかしい)
タクトはまだ少し冷たい手のひらで顔を叩き、冷静に戻ろうとする
だが、いざ戻ってみてミクが目をそらすとぶり返してしまうこの熱気
熱からでも喉からでも鼻からでもない
気の持ちようからくる微熱
それでも席についてサンドイッチに手を伸ばす
かなり時間が経っているがまだ暖かい
きっと温め直してくれたのだろう
恥ずかしいよりも感謝が上回る
「ミク、上手いな!」
「あ、ありがとうございます・・・」
ミクのほうはまだ克服は出来ていないようだ
スグと違ってミクは慣れていないからな
スグが慣れているといえば変に聞こえるが幼馴染だから
この機会だ、話しておこう
タクトは目覚めた時、スグが目の前にいて何故かパーティが既にくんであった
ミクは少したった時、記憶のない状態で一人で森にいた
そこで一緒に行こうと誘ったのだ
言ってしまえばどちらも幼馴染だがスグの方が少し先で性格的にもスグの方が良くいえば積極的で悪くいえば空気の読めない行動をしてきた
スグは良くいえば天然、悪くいえばアホなのだ、強いけど・・・
まぁ、だからミクが目を合わせてくれるのは少し時間がいるかもしれない
「今日は私も手伝ったんですよ?」
「えっ!スグが!?」
「ムゥ〜、信じられないみたいな顔・・・」
「何をしたんだ?」
「ムフフゥ、野菜を挟みました!」
スグは胸を張っているが誰にでもできることである
だが、よく見ると俺が好きな野菜ばかりが挟んである
スグも俺のことをしっかり理解してくれてるんだな
なんて思ってしまう
美味な朝食を済ませて片付けをする
今日は食器洗いや食材の片付けがないからタクトが全部やることにした
そのあいだに二人には支度をしてもらう
10分後ぐらいに両方が終わり、出発の準備が整う
バーチャルグリルをしまい、バーチャルテントを片付けてもちろん荷物はタクト持ち
「川があるなら川に沿って降りようぜ」
「どうしてですか?」
「進む目処にもなるし水も確保できる、それにこの川は確実に街に流れているからだ」
「この山に流れている川は一つだけですし……街の西に降りれます」
ミクはまだ俯き気味だが教えてくれる
「それじゃあそうしようか」
全員の意見が一致したところで下山開始
川原の足場は少し悪いが木々しか見えないよりかはマシだ
徐々にしたに向かっているのがわかる
おふた方は重力軽減魔法でひょいひょいと軽やかに進んでおられる
だが、こちらは今にも死にそうだ
必死について行くがやはり差は開くばかり
だが、少し先で悲鳴が聞こえる
疲労など忘れ去って全速力で悲鳴の居場所を突き止める
するとそこには巨大なうさぎの顔をした全身白い毛がふさふさのムキムキモンスターが二人を攻撃しようとしていた
二人は攻撃を与えるが頑丈な体に刃が通っていない
二人の向こうは崖である
タクトはとっさに石を拾い上げモンスターに向かって投げる
それはちょうどモンスターの肛門に刺さり刺さった本人は唸っている
この好きに二人を助けようと駆け寄るが逆に怒り始めたモンスターが腕を振り回す
その腕はスグに直撃しいとも簡単にその体は吹き飛んでしまう
「す、スグ!」
崖の下へ消えようとするスグ
それを追いかけてタクトは飛び降りる
「た、タクトくん!?」
ミクはただ一人取り残された
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タクトは空中でスグの体を掴み抱きしめる
どうやらさっきの一撃はかなり聞いたらしい
意識はあるものの動けないようだ
水面にぶつかる直前、タクトはスグをもっと強く抱きしめる
激しい水しぶきとともに水中に沈む
スグを片脇にしっかり抱えて必死に水面を目指す
どうやら無意識に魔防を発動していたようでダメージはくらっていない
やっとのことで水面に顔を出し、スグを抱えて陸に上がる
さっきの川の滝で出来た小さめの湖に落ちたようだ
下が水だから良かったものの地面なら耐えきれなかっただろう
スグを優しく寝かせる
息はしている
「スグ、スグ!起きろ!」
「むにゃむにゃ、あと五分だけぇ〜」
「お前は思春期の男子中学生か!」
「女子でもそんな事ありますよぉ〜」
「こんな時に適切なツッコミするな!」
「は、はひぃ!」
タクトの強めの口調に驚いたのか寝ぼけていたスグがはね起きる
「お、起きました!」
スグは敬礼をしてみてる
「あ、あの〜、スグ?」
「何でしょうか!」
スグは敬礼を止めない
「目のやり場に困るんだが・・・」
さっきまでは生死に関わる一大事で気が付かなかったがスグの服が水で濡れて透けている
タクトの指摘に目線を下ろしたスグは敬礼していた手を休めることなくもう片手で胸を隠す
羞恥よりも敬礼が大事なのか・・・
だがスグはそこでクシャミを一つ
濡れたままでは風邪をひいてしまうとスグの火炎魔法で焚き火をすることにした
崖の上にはミクを残してきた
あのモンスターを倒せたのだろうか・・・
そんなことを気にする前にタクトもクシャミを一つ
スグがスっと寄ってきて肩をくっつける
いつものふわっとしたポニーテールをほどいて髪を下ろしたスグがそこにいた
「私たち、帰れますか?」
その声はいつもと同じに聞こえるが生まれた時から一緒にいれば嫌でもわかってしまう
そこには少しの不安が混じっていた
「あぁ、大丈夫だ」
これしか言えない自分が情けないと思う
でもスグはその一言で安心できたようで
「絶対に帰りましょうね」
そう言って微笑んだ
タクトはこの笑顔を守ると誓ったあの日を思い出す
「あぁ、絶対に3人で帰るんだ」
そう言ってタクトはあたりを見渡す
崖に登れそうな場所は見当たらない
ぐるっと回っていくしかないようだ
「もう大丈夫か?」
「はい!」
スグが焚き火に向かって人差し指を向けて下にスライドすると火は消えてしまう
二人は立ち上がり、湖の反対側に回る
その奥にある木々の密集地には道などない
そこは明るい場所になれた二人の目では奥の方まで捉えることのできないほど暗い
タクトが先に足を踏み入れ、タクトのシャツの裾を掴みながらスグもついてくる
どれくらい進んだかわからない
少し広い場所に出る
だがそこは平和ではない
イモムシ型のモンスターが5匹ほど待ち構えていた
「い、イモムシぃ〜!怖いですぅ〜」
スグは虫が苦手だ
虫モンスター相手だと戦闘に参加してくれない
仕方なくスグを背後にまわして前から迫ってくるモンスターsをやっつける
戦闘に参加はしていないけどパーティとしてしっかりとスグは経験値を貰っている
理不尽だ・・・
二人はまた歩き出す
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ミク目線で・・・
「二人をよくも落としてくれたな!?」
ミクはうさぎの顔をしたモンスターに対しての怒りで性格が変わってしまっていた
ミクはモンスターに奥義を連発でくらわせ、オーバーキルを重ねるほどボコボコにする
あっけなくモンスターは散り、ミクだけが残される
ミクは二人が落ちていった先を見下ろす
高いところが苦手なミクには飛び降りるなんて出来なかった
ミクは山を降りることに決めた
ミクは杖を地面に立てて手を離す
右側に倒れたので単純だがそちらに進むことにする
崖に沿って歩いていく
特に危ないこともなく順調に下りていく
ふと崖の下を見ると少しほかより気の少なめな場所が見える
よく見ると二つの人影が見えた
(タクトくんとスグちゃん!)
二人が目に写ったことでやる気を取り戻したミク
疲れてくる足も無理やり動かしてやっともう少しで降り切るところまで来た
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いくら歩いても同じ景色
同じ場所をループしているような錯覚に陥るほど木ばかり
何時間歩いただろう
日も傾いてきた頃
気の少なめな場所につく
ふと右を見ると上の方に山から降りてくる道が見える
そしてそこにいたのは
「ミク!」
その声はしっかりと届いたようで
「!? タクトくん!スグちゃん!」
3人は一斉に走り出した
走るにつれてミクの走る高さが下がってくる
それはついにタクトたちとおなじたかさになり
「ミク!やっと会えた!」
「タクトくん!う、うぅ・・・」
ミクはミクらしからない泣き顔を見せた
だが、それも安心ゆえの涙
今は好きなだけ泣いてもらおう
スグも涙を流しながら微笑んでいる
タクトは涙を堪えながら言う
「あ、あそこは・・・目的のキャンプ場だ!やっとたどり着いた!」
おりてきた道が繋がるのは少し遠くのキャンプ場
夕日が照らす姿がまさにキャンプだ
ポツポツと見えるテントがそれらしさを醸し出す
「……行こうか」
二人はうなづき並んで歩き出す
3人とも涙で潤った瞳で夕日を見つめていた
キャンプ場につく頃には完全に夜になっていた
音で周りの人に迷惑をかけてはいけないのでグリルは使わず、簡単に食べられるもので夕飯を済ませる
寝ることになってからは以下省略
昨日と同じである
同じでないとしたら服に入ってきたのがミクじゃなくてスグであることと・・・
_________________________________________
朝起きたら屋根の上でしたという事だ
正確にはテントの上だが
どうやらスグが間違えて魔法を放ってしまったらしい・・・
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という夢を見たのだが正夢にはならないでほしいと願うばかりのタクトであった・・・
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