第5話 女の子の看病はなかなか大変である
目覚めるといつもの朝だ
一つあくびをして起き上がる
いつもならもうそろそろミクがご飯だっていう時間のはずだが・・・
タクトは時計を見て確信するがどうやらまだ誰かがベッドで寝ているようだ
「まぁ、たまにはゆっくり寝てもらいたいしな」
タクトはそっとベッドに近づき覗く
(あれ、スグか?いや、ミクも二人ともいる)
近づいて見てみると二人とも顔が真っ赤で苦しそうだ
「だ、大丈夫か?」
「あれ?タクトくん?目の前がぼやけてみえないよ」
「そんなに・・・熱があるのか?」
「大丈夫だよ・・・今起きるから」
「今、ご飯作るから待ってて・・・」
二人ともフラフラしながら立ち上がってスグはまたベッドに倒れてしまった
ミクはふらふらした足取りで台所に向かうが
一瞬ガクっとしたと思えば倒れ込んでしまった
「だ、大丈夫か!?ミク、怪我はしてないか?」
「フフフ、これくらい、ハァ、だ、だいじょうぶ・・・」
ミクはまた立ち上がろうとする
「無理するな、1度熱をはかろうか」
ミクは仕方なく頷いた
タクトは二人をベッドに寝かせてウィンドウ画面を展開して健康画面から体温計を開く
まず、寝転んだスグの体の上に手をかざす
「・・・38.2度、高熱じゃないか!」
「私なら大丈夫だから、ケホッケホッ」
「咳も出てるし、今日はゆっくり休まないとだな」
次にミクの上にも手をかざす
「うわっ!39.8度!?なんで無理しようとしてたんだよ、今日は俺が全部やっておくから休んでいろよ」
「でも、ケホッ、全部だなんてケホッ」
「いつもしてもらってるお返しだ、看病もするし、家事もする、今日のミクは寝てるだけでいい」
「・・・うん、よろしくね」
「あぁ、かんぺきにやっておくよ!」
「タクトくん、ケホッケホッ、治りますようにってほっぺにチューして!」
「・・・スグは速攻で治りそうだな」
「してよ!して、ケホッ、してしてしてしてよ!ケホッケホッ」
「お前は子供か!」
「スグは永遠にケホッケホッ、子供だよ!ケホッ、ケホッ、ケホッ」
「無理してそんなこと言わんでいい!ゆっくり休んでおけ」
「むぅー」
ふてくされているスグをよそにタクトは台所に行く
「やっぱり病気の時はおかゆだよな」
しかし、おかゆってどうやって作るんだ?
ミクに聞くわけにも行かないし・・・
ダメもとで運営に聞いてみるか!
えっと、『おかゆの作り方を教えてください(なるはやで)』っと
ピロリン♪
うわっ!まじでなるはやだったな
タクトは返信されてきたメッセージを見て驚く
そこに書かれていたのは
『まず、米と水を適当に用意します、水は多めで!自分の目の前にそれらを置き、こう唱えましょう!『パーパラパーパラ・イリュージョン!』するとあら不思議・・・
「いや、こんなんで出来るわけないだろ」
・・・チャーハンの出来上がり!』
「いや、何でだよ!一番不思議なのはお前の思考回路だよ!」
メッセージをしたにスライドしてみたが空白が続いている
「まさか、本当にチャーハンの作り方を送ってきたのか?」
まだまだ空白が・・・っと文字が見えた
『ここまでたどり着いたあなたの運勢は・・・最悪!今日は悪い日になるかも!ラッキーアイテムはおかゆです!』
「やかましいわ!ってそのおかゆを作りたいんだよ!運営に聞いたのが馬鹿だった・・・」
タクトがウィンドウを閉じようとした時、
ピロリン♪
またメールだ、開いてみると
『そこの貴方!今、ウィンドウを閉じようとしましたね?』
「なんでバレてる!?」
タクトはあたりを見渡すが怪しい人影が見えたりはしない
『そんなあなたに朗報です!』
「ん?なんだ?」
↓がずっと並んでいる
ずっとずっと、遂には限界まで来て・・・
『※おかゆを作るには呪文を『オカーユオカーユ・イリュージョン!』に変えてね♥』
イラッ「それを先に言えやぁ!」
ウィンドウが端末だったら確実に投げつけていた
一度深呼吸して
「やってみよう、米と・・・水っと、準備完了!」
息を整えて
「オカーユオカーユ・イリュージョン!」
「・・・・・・」
1秒後、変わらない
2秒後、変わらない
3秒後、変わらない
4秒後、ピロリン♪
メールを開いてみると・・・
『ぷぷぷ、ドッキリ大成功!』
プチッ
タクトの中で何かが切れた
「ふざけんなぁ、運営!」
ドンドン、バンバン!
「隣のものです!静かにしてください!」
ドアを叩く音で我に帰り
「す、すみません!」
あっ、メッセージになにか付いているようだ
『ほんのささやかな気持ですがおかゆを付けておきます、NPCの皆さん!今後ともよろしくお願いします!運営より』
「う、運営!感動しちまうぜ、俺、お前のこと勘違いしてたよ、ごめんな」
と、付属していたおかゆを試食でパクっと
「・・・マズッ」
吐き気がする程に不味い
何を入れたらこんなに不味くなるんだよ
こんなもの食わせたら逆効果だ
「こ、こうなったら、仕方ない!」
コンコンッ
ガチャッ
「何でしょう?」
「すみません、隣に止まってるタクトと言います!もし良かったら、おかゆの作り方を教えてくださいませんか?」
「あ、えぇ、いいですよ」
結局、お隣さんに聞いた・・・
「ありがとうございました!」
ガチャリ
「ちゃっかりお隣さんの台所借りちゃったよ、でも、意外と簡単だったなぁ」
ガチャッ
「ただいま!ってそ、それは!」
スグが起き上がって先程の運営版おかゆを食べようとしていた
「それはダメだ!」
慌てて止めようとが足を滑らせてそのままスグを押し倒してしまった
「ご、ごめん!大丈夫か?うわ!」
見るとスグは頭からおかゆをかぶって全身ドロドロだった
「ふぇ〜、気持ち悪いよぉ」
「ごめん!今拭くものを取ってくるから!」
慌てて立ち上がろうとしたがフローリングの上のおかゆはかなり滑る
足が滑って体制を崩し、スグの唇にキスしてしまった
まるで、ラノベのような展開である
「ご、ごめん!わざとじゃないんだ!」
するとスグは顔を赤らめてタクトの唇に人差し指を当てて
「もぉ、チューしてって言ったのはほっぺだよ?でも・・私が得しちゃったかも」
ドキッとした、今まで感じなかった何かがタクトの中で芽生えた気がする
だが、そんなことを考える暇もなくスグらまた倒れてしまう
「す、スグ!ベッドに行こう!おかゆ作ったから・・・な?」
スグは目を閉じたまま頷く
ミクはスヤスヤ眠っているようだ
ミクの寝顔はかなり珍しい
大抵は家事なんかで他二人より遅く寝て朝食作りで早く起きるからだ
(幸せそうな寝顔だな・・・)
じゃあまずはスグの分だけ用意するか
ミクは起きてからでいいだろう
「ほら、スグ、おかゆだぞ!」
おかゆをお茶碗によそって渡す
それを受け取ったスグは少しもじもじしながら上目遣いでタクトを見る
「なんだ?トイレか?」
「ち、ちがう・・・あのね、あーんってして?」
「えっ?いや、それは・・・」
「なんで?してよぉ」
熱だからか妙に火照った顔でお願いしてくるスグはいつもとは違った可愛さがあった
「は、恥ずかしいから・・・」
「私たちしか居ないからさぁ、おねがい!」
「わ、わかった、食べたら大人しく寝るんだぞ?」
「うん!」
「ほら、あ、あーん」
「あーん」モグモグモグモグごっくん
「美味しい、これタクトくんが作ったの?」
「いや、お隣さんに手伝ってもらったんだ」
「へー」
「あーん」
「あーん、んっ」ケホッケホッ
「大丈夫か!?」
「う、うん、大丈夫、ちょっと咳き込んだだけだから・・・」
「まだ、食べれるか?」
「ううん、ちょっとしんどくて食欲が・・・少し寝るね」
「あぁ、ゆっくり休めよ」
寝転ぶスグを見届けてミクの方にまわる
ミクはぐっすりなようでこの調子だとすぐに治りそうだ
でも、
ミクが目を覚ましていなくてよかったよ
もし目を覚ましていたらさっきのキスを見られていたから・・・
あとは何をすればいいんだろう
昨日の食器も洗ってあってすべて食器棚にしまってある
掃除を使用にも音が出てしまう
(こんなんじゃいつも頑張ってくれてるミクに恩返しできたことにならないな・・・)
そんなことを考えているとミクが少し目を開く
「あっ、ごめん、起こしちゃったか?」
「ううん、大丈夫」
「なにか欲しいものがあったら言ってくれ」
「じゃあタクトくん・・・」
「なんだ?」
「欲しいものじゃないけど・・・体を拭いてくれない?」
「え?あ、いや、でも・・・」
「汗でビチョビチョで気持ち悪いの、おねがい・・・」
確かにビチョビチョでパジャマが体に張り付いている
このままでは寝づらいだろう
決して下心があるわけじゃない
そう心に叫んで「わかった」という
「じゃあ、タオルと氷水を取ってくるから・・・」
そう言ってタクトは台所で氷水をつくり、お風呂の収納ケースを開いてお目当てのものを見つける
ミクのところに戻り、タオルを氷水に浸す
「服を・・・」
「タクトくん、脱がせて・・・」
「え?あ、それは、やっぱり、男子として・・・」
「お願い、わたし今、視界がぼやけてボタンを外せないの、だからお願い・・・」
タクトは仕方なくミクのパジャマのボタンに手を伸ばす
なんとか見ないで全部を開けることが出来た
「脱ぐのは自分で出来る?」
ミクは頷いたかは見ていないからわからないが自分で脱いでタクトに渡す
「下も脱がせて・・・ベタベタで気持ち悪いの・・・」
タクトは一瞬ためらったがやるしかないことは分かっていたし、これが少しでもミク孝行になるならば、と下にも手を伸ばす
汗で体に張り付いていて脱がせずらい
「うぅ、くすぐったい・・・」
「ごめん、少し我慢してくれ」
なんとか脱がし終わったが、問題はここからである
氷水に浸してあるタオルを適度に絞ったが、どうやって見ずに拭けるかが問題だ
悩んでいると
ミクの手が僕の手を握る
「見てもいいんだよ?タクトくんなら・・・」
「いや、でも・・・」
「みーて!」
ミクの大きめの声につい、ミクを見てしまった
一瞬見えてしまったものの目をつぶる
もう1枚のタオルで胸を隠し、目を開く
「もぉ〜、タクトくんは本当にウブだね、でも、そんなタクトくんも好きだよ」
少しドキッとしたが堪えて、タオルでミクの体を拭いていく
腕、肩、お腹、太もも、足
そして見ないようにしながら最後に胸を拭いた
タオル越しでも柔らかい弾力が伝わってくる
タクト終始ドキドキしながらだったがミクが気持ちよさそうだったからよかった
ひと通り終えてミクの着替えを取りに行く
女の子にはどれがいいとかはあるのだろうか?そんなことを思ったがわからないので一番上のを取った
ミクのところに戻り、
「はい、着替え、一人で着れるか?」
ミクは静かに首を横に振る
タクトは仕方なくミクのパジャマを開いて右腕を通させる
左腕を通させる時に体を少し持ち上げて背中もきちんと伸ばす
それからボタンを止めて上は完成!
ズボンは足を少し持ち上げながら少しずつ上げていく
途中からミクがウトウトし始めた
腰の位置にしっかり合わせて完成!
「それじゃ、ゆっくり休むんだぞ?」
「うん・・・ありがとう・・・」
少しするとまたミクは寝息を立て始めた
「そうだ、おでこに冷たいタオルを乗せたらいいらしいから・・・」
先程のタオルを洗濯カゴにいれて新しいものを出してくる
それを氷水に浸して適度に絞ってミクのおでこにそっとのせる
スグにもタオルを乗せる
二人とも気持ちよさそうだ
少ししたらタオルをもう一度濡らして・・・
を繰り返していたら気づいたら日も沈みかけていた
スグのタオルを取り替えた時、
「はぁ〜、疲れた、あれ?なんか頭がぼーっとするような・・・」ガクッ
タクトはそのままベッドにうつ伏せで眠ってしまった
確かに今日の運勢は
最悪かも・・・しれないな・・・
_________________________________________
目が覚めると部屋が明るい
今何時だ?と思い時計を確認しようとすると
(あれ?体が重い・・・)
下を見るとスグがお腹の上でうつ伏せになって寝ていた
(あれ?昨日何してたっけ?たしか、二人の看病してて、その時に俺もしんどくなったんだ!)
タクトのおでこにはまだ冷たいタオルが置いてあった
(スグ、遅くまで看病してくれてたのか・・・)
看病する側だったのに看病される側になったのは少し恥ずかしいがスグが必死に看病してくれている姿を想像すると心が暖かくなる
眠っているスグの肩を揺すり起こす
「ふぇ?あ、タクトくん、起きたんですか?」
「あぁ、それよりスグとミクは大丈夫なのか?」
「はい!完治です!人にうつせば治るらしいので多分、タクトくんにうつったんだと思います!」
まぁ、病人二人とずっといたんだもんな
うつっても不思議じゃないか・・・
「ありがとうな、看病してくれて」
「いえ、私こそありがとうございました、それと、うつしてしまってすみません!」
「別にいいよ、もう治ったし・・・」
「よかったです!そ、それより・・・」
「?」
「わたし、変な事しませんでしたか?」
この様子だと覚えてないみたいだ
「あ、あぁ、何にもなかったぞ?」
するとスグはホッとした表情で
「よかったです!」
「二人ともご飯よ!」
「「はーい!」」
二人は朝食の並べられた前に座る
「あとお味噌出すから・・・」
今日の朝食は和風みたいだ
「はい、味噌汁」
ミクがスグに渡す
「はい、タクトくんも、」
そう言ってミクがタクトに味噌汁を渡した瞬間、ミクはこうささやいた
「変な事ってアレの事かな?」
まさかミク、見ていたのか!?
恐るべしミク・・・
ミクはニコッと笑って
「なーんちゃって!」
そう言って自分の椅子に座った
タクトはモヤモヤが残るまま手を合わせる
「「「いただきます!」」」
今日はここから始まる!
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