第4話 女の子なら着飾りましょう!例え、NPCだとしても
街の中心部にやってきたタクト、スグ、ミクの3人はどうしようかと悩んでいる。
「アイテムは充分にある、じゃあ・・・」
「はーい!」
「ん?なにか思いついたのか?スグ」
「私はショッピングに行きたいです!」
「わたしも・・・」
「二人ともか・・・じゃあショッピングに決定だな!」
「わーい!」「・・・」
「何を買うんだ?」
「私は服です!」
「わたしもです・・・」
「どうしたんだ、二人とも!服が破れたりしたのか?」
「はい、この前の戦闘で着ていた服が敗れてしまって・・・」
「ミクもか?」
「わたしは・・・新しいのが欲しい・・・」
「やっぱり女の子だもんな!」
ミクは小さく頷いて返事をする。
「服屋ならあっちだな」
中心部からそう遠くない場所に行きつけの服屋がある。
人で賑わった商店街のど真ん中にある店が服屋マーマレードゥだ。
なぜ最後がドゥなのかは分からないがどうでもいいので聞いたことは無い。
店に入ると
「いらっしゃい!あら、タクトくん、スグちゃん、ミクちゃん!今日は何をお探し?」
ここの店主のミラさんには顔見知りで話しやすい性格とフレンドリーな笑顔が仕事という場面で輝いて見える。
「今日は・・・」
「今日は私とミクちゃんの二人が買いに来ました!」
「へー、二人ならなんでも似合っちゃうからどれ買おうか悩んじゃうわねぇ」
「もー、お世辞なんていいですよぉー」
いつもどおりの会話だ。
こんな日常を見ていると自分が置かれている状況が嘘なんじゃないかって思ってしまう。
「じゃあ、ゆっくりまで行ってね」
ミラさんは店の奥へと入っていった。
「ふっふふーん♪どれ買おうか迷っちゃいます!」
スグはあれやこれやを手に取って見比べてはうーんと唸り、決めた!っと思えばまた別のと悩んでいる。
そんな姿が微笑ましい。
ミクはというと・・・
「タクトくん・・・どう、かな?」
もう試着している。
「可愛いよ」
「そ、そんないつも通りじゃなくて・・・もっと言って?」
「え、えーっと、ミクの細いクビレが出ていてミクらしい爽やかな感じがありつつも太ももを最大まで露出した感じがナイス!」
なんて、言えるわけないので
「ミクらしくて好きだよ、そういうの」
といっておく。
これは決してでまかせではなく、本心から出た言葉の省略である。
ミクは満足したようで試着室へ戻っていく。
すると立て続けにスグも
「どう?変じゃない?」
と聞いてくる。
「うん、全然変じゃないよ、可愛い」
スグは顔を赤くして試着室へ帰って行った。
しばらくの間、二人とも出てこない。
何かあったのでは?と思い始めた頃、
「ど、どうですか?」「どうかしら?」
二人が出てきた。
「!そ、それは!」
二人ともビキニアーマー姿だった。
「な、何でそんな!?」
「は、恥ずかしいので早く感想を言ってください」
「は、恥ずかしい・・・」
「ふ、二人とも可愛いよ、でも、それはダメ!」
「なんでですか?」
「そんなのを毎日見せられたら俺の理性が持たないからだ……
てかそもそも何でここにそんなもんがあるんだよ!」
「フフフ、私の趣味だからよ!」
現れたのはミラさん。
「ミラさん、なんで・・・」
「だって可愛いじゃん?」
なんて軽い人だ・・・この人なら聖火ランナーの火でさえ悪びれもなく消してしまいそうだ。
「まぁ、とにかく!それは買いません!着替えなおしてきなさい!」
二人は落ち込んだように試着室へ戻っていく。
そしてもう一人は店の奥へと戻っていく。
しばらくして元の格好に戻った二人が出てきた。
「何を買うか決まったのか?」
二人ともニコッとしながら頷く。
気に入ったのが見つかったんだな。
そう思いながら会計を済ませて外に出る。
「次はどこに行こうか」
「あ、あの・・・」
「どうした?ミク・・・」
ミクはスグにそっと近寄って耳元で何かを囁いた。
「タクトくん、ミクちゃんはブラ「そ、そんな直球で言わないでよぉ!」えーっとミクちゃんは下着のサイズが合わなくなっ「さいずとかいわないでぇ!」えーっと、ミクちゃんは・・・」
「とにかくあそこに行けばいいんだろ?」
タクトが指さしたのは下着、特に女性用を置いている店だ。
「そうです!」ミクも頷く。
「じゃあ行くか」
3人は店に向かって歩くがタクトにも徐々に不安が現れ始める。
「俺、入っても怪しまれないよな?」
女性ものばかり置いてある店だ。
男が入るのは気が引ける。
「私たちといれば大丈夫ですよ!」
「そうかなぁ〜」
不安が消えぬまま店に踏み込む。
「いらっしゃ・・・」
店員さんも俺を見て固まったようだ。
だが、ついてくる二人を見たらまた動き出した。
(は、恥ずかしい!早く終わってくれ!)
「じゃあ探してきますね!」
「まってくれ!ひとりにしないで!」
「お、女の子が下着を選んでいるところなんて恥ずかしくてみせられませんよぉ」
照れ笑いしながら二人は店のどこかに消えた。
人が通るたびにヒヤヒヤする。
(早くしてくれないと死ぬ!)
授業中にトイレを我慢しているのと同じくらいやばい!
残り25分あるくらいのやばさだ!
_________________________________________
「おまたせしまし・・・って、大丈夫ですか?」
二人が戻ってくる頃にはタクトの心は乾ききってひからびていた。
「大丈夫?」
「あ、あぁ、だ、だいしょうふだ」
「乾ききっていて口が回ってませんよ!?」
あたふたする二人。
何を思ったのか・・・
「ぎゅぅーーー!」「ぎゅぅーーー!」
抱きついてきた。
だけど、なんだか乾ききっていた心が潤った気がする。
「これが・・・愛の力か・・・」
『スグとミクはタッグ技、愛のぎゅぅーーー!』を覚えた。
「決まったのか?」
「はい!」「うん・・・」
「はやめに帰ってきてくれ、またひからびてしまう・・・」
「はーい!」「わかった・・・」
二人は同じ試着室に入っていった。
しばらくすると中から声が聞こえる。
「ミクちゃん、おっきいね!」
「そんなこと・・・ないよ?」
「もぉー!私の前でそんなこと言っても嫌味にしか聞こえないよぉー!」
キャッキャウフフな後継が広がっているのだろうか。
つい想像してにやけてしまう。
「タクトくん!ちょっと来て!」
なんだ?とおもいつつ、二人が入っている試着室の前に立つ。
すると中から四本の手が伸びてきてタクトの腕をつかむ。
「ひぃっ!」
俺、死んだ?
中に引きずり込まれていくタクト。
それを見ていたものは誰もいなかった。
タクトは怖くなって目をつぶっていた。
「タクトくん!目を開けてください」
恐る恐る目を開けると・・・
そこには下着姿の二人がいた。
「な、なんで?あれ?」
混乱するタクトにスグが
「どうです?」
「どうって言われても・・・可愛いと思うよ?」
「そんな単純な答えじゃなくてぇ!その、何かを感じません?」
「何かって・・・」
タクトはじーっと二人を眺める。
(下手なことを言えば魔法弾を食らう可能性もある、いや、スグのことだ、顔を赤らめてだんまりを食らう程度か・・・だが、今の乾ききった俺には絶望的なダメージだ、どうすれば・・・)
その間、二人とも体をさすったりで落ち着かないようだった。
「寒いなら服、着た方がいいぞ?」
「ち、ちがいますよ!その・・・あんまり見られると恥ずかしいです」
「あ、ご、ごめん」
タクトが何をいえばいいのかを悩んでいるのを察してミクが耳打ちをしてくれた。
ゴニョゴニョ
「お、おう、わかった」
タクトは一つ深呼吸して
「スグ、少し痩せた?」
その瞬間、スグの目が輝いたように見えた。
「やっぱりタクトくんなら分かってくれると思ってました!そうなんですよ!私、0.3MB痩せたんです!」
いや、分かんねぇだろ!とおもいつつもミクに目線でお礼をする。
ミクはスグに見えないように親指を立ててニコッと笑う。
「っていうか、なんで引きずり込んだんだ?」
「だって、こうでもしないとタクトくん、見てくれないじゃないですか?」
まぁ、確かにそうだ、でも、だからって・・・
「外に人いるのに、どうやって出ればいいんだよ・・・」
この時間帯、この店が一番混み合う時間帯だ。
カーテンをそっと開けて目をのぞかせる。
見えるのは店の風感に似合わないマダムたち。
「これは見つかったら相当やばいぞ・・・」
「じゃあ、私が・・・」
「ミク、魔法でなんとか出来るのか?」
ミクは強く頷くと杖を取り出す。
いったい下着姿のどこに杖を持っていたのやら・・・
「っていうか!何とかする前に二人とも服を着てくれ!」
その声は意外にも響いたようで店員さんが
「どうかされましたか?」
と近づいてくる。
「やばい、やばい!この状況を見られたら相当ヤバイよ!」
「あわわわわ!」
「スグ、慌てすぎるな!スカートに足入ってないぞ!」
その瞬間、店員さんの手がカーテンをつかむ
「もう仕方ありません!」
「開けますね!」
シャっ
「あれ?いない・・・」
_________________________________________
3人は彼らの泊まっている宿屋の部屋に転送された。
「な、なんとか転送できましたね」
「あぁ、ってなんで二人ともは、は・・・」
「えっ!なんで下着がないんですか!?」
ミクは焦って身につけていたものを一緒に転送できなかったらしい。
タクトは、もしかして!っと思って自分の体を見る。
「よかった!俺は着ている」
何故かわからないがタクトだけは服を着ている。
(ま、まさか!ミクがわざと?)
そう考えてみるとミクがなんだか不敵な笑みをしているように見えてきた。
そして目が言っている。
『タクトくん!襲っちゃえ!』と・・・
なんて恐ろしい子だ・・・
タクトはつい二人を見てしまう目線をあさっての方向に向けて……
「は、はやく服を着てくれ」
「そ、それが・・・」
「ま、まさか!?」
「ないんです!前に破れてしまって、今日来てたのが予備だったので・・・」
「他に何か着れるものはないのか?」
「はい、何故か無くなってます・・・この前、崖のしたに落としてきたんですかね?」
「崖のしたで落としたなら全部拾ったはずだが・・・」
タクトは自分のストレージの中を見る。
下の方に服らしいのが見える。
「これじゃないのか?」
ストレージから出してみるとストレージにヒビが入った影響で中に入れたものが壊れてしまったようで服はビリビリに破れていた。
「ご、ごめん・・・」
「あっ!タクトくん!取ってきてくださいよ!」
「へ?何を?」
「服ですよ!今動けるのはタクトくんだけです!」
「え、いや、ミクも・・・」
タクトがミクに目をやるとミクは寝ていた。
スッボンポンで・・・
思わず目をそらし、ため息を一つ
「わかったよ、行ってくる」
仕方なくもう一度店に行くことになった。
最後にミクが少し笑った気がした。
「仕組んだな・・・まぁ、男に二言はない!」
なんて言ったものの、いざ店の前に立つと進めなくなった。
「な、なぜ動かぬ!うごけ!俺の足!」
そんなことを言っていると……
「あ!先程の!忘れ物ありましたよ!何故か・・・全部・・・」ギロッ
確実に変なやつだって思われてるよ!
タクトは店員さんと目を合わせることなく服を受け取り帰ろうとするが・・・
「あ、店員さん!一緒に落ちてたブラ、いや下着も買って帰ります」
またもや店員さんはギロッ
「なにに使うつもりでしょうか」
「何って下着なんだから身につけるでしょう」
ヒイッ!
店員さんはそう叫んで変態でも見るような目で会計を済ませた。
ふたりの服と買ったばかりの下着を別々に分けて持って帰る。
帰り道、女性もの下着専門店の袋とタクトの顔を何度引いた目で見られたか分からない。
宿屋に帰ると二人は布団にくるまって魔法で出した炎で暖をとっていた。
寒かったんだろうな。
何しろスッボンポンだから。
「ほら、とってきたぞ!」
スグがすぐさま駆け寄ろうとするが
「ちょっと待て!おれがでていってからにしてくれ」
スグははやくはやくっと言った感じで体を揺らす。
「終わったらよんでくれ」
そう言ってタクトはトイレに入る。
この宿屋は寝室と風呂&トイレしかないのだ。
タクトはトイレに座った瞬間尿意を感じた。
「ついでにトイレしとこう」
タクトがトイレに座った瞬間
コンコンッ
「タクトくん?トイレしたいんだよぉ」
「わかった」
急いでトイレを済ます。
ドアを開けて
「お待たせ!って、な、な・・・」
その瞬間、タクトの意識が吹き飛んだ。
最後に見たのはスグの……アレである
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目が覚めたのは夕飯時、ベッドの上。
「あ、目が覚めた?」
「あぁ、あれ?俺、何してたっけ」
眠る前の記憶が無い。
「お、思い出さなくて・・・いいですよ」
「?」
理由はわからないが思い出さない方がいい気がする。
「タクトくん!スグちゃん!ご飯よ」
ご飯はいつもミクが作ってくれる。
メシウマ過ぎてミク神!って感じだ。
「今日はオムライスか」
「私、オムライスが一番好き!」
「お前、スパゲティの時も同じこと言ってただろ」
「えへへ」
「好き嫌いがないのはいい事よ・・・」
「それじゃぁ「「いただきます!」」」
モグモグ「うまい!」
モグモグ「美味しいです!」
モグモグ「おかわりは早めに行ってね」
ミクは歌う時、料理の時、戦う時はいつもよりハイテンションだ。
どちらのミクも俺は好きだけどやっぱり笑ってる方が可愛いよな。
スグはいつも笑ってるけど……
そんなことを考えたら崖から落ちた時のスグの泣き顔が浮かんだ。
(うっ、あんな顔、もう二度とさせない)
「どうしたの?タクトくん、ご飯食べてる時にそんな怖い顔しちゃダメだよ?」
スグに言われて自分の顔が強ばっているのに気づく。
「どうかした?」
「いや、何でもないよ」
そう言ってオムライスを口にかき込む。
「おかわりはいる?」
「いや、今日はあんまり食欲がない」
そう言って椅子から立ち上がる。
「そう、でもたくさん食べないとね、特にタクトくんは・・・ね?」
「は、はい」
そうだった、俺は耐久度を高めないといつかは消滅する。
タクトは席に座り直し、
「おかわりをいただこうか」
_________________________________________
その日の夜、この宿屋にはベッドが何故か一つしかないため、3人で1つに・・・
というわけにもいかず、
タクトはひとり、ソファーで寝る。
スグが「タクトくんと一緒がいいです!」
って駄々をこねたけれどドキドキな展開を期待してるわけじゃないし、ジェントルマンでいたいから。
寝る前にそっと二人の寝顔を覗いてみる。
ベッドに入って5分も経っていないがもう寝息を立てている。
よっぽど疲れたんだな。
タクトもあくびが出てきたのでソファーに戻って目を閉じる。
「今日のことが夢ではありませんように・・・」
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