第3話 俺TUEEEEと思ったら現実は甘くない、ゲームの世界だし・・・

さっきまでいた場所に戻って荷物をまとめる。


落ちた衝撃でストレージのデータにヒビが入ってしまったようだ。


「よく見たら結構アイテムが散らばってんな。


多分全部俺のだ。


俺の剣とかあるしな。


スグ、ミク、二人のは大丈夫か?」


「はい、私のは壊れてません、

タクトくんが助けてくれたおかげです!」


スグの返事に続いてミクも頷く。


「よし!じゃあまとめ終わったから行くか!」


「はい!」「うん・・・」


さっき見つけたワープゾーンに向かう。


「でも、ワープゾーンあって良かったな!」


「はい、無かったら私たち、みんな死んじゃってたです!」


「NPCはお腹は好かないけど、


食事でデータの耐久度を回復しなくちゃ

死んじゃうから・・・」


「あぁ、そうだな!

体力0の俺も食事抜きだと死ぬのかな?」


「タクトくんも食事抜きだと死んでしまうと思いますよ……。


耐久度はHPに関係なく減っていきますから……。」


「やっぱそうだよな……。」


ワープゾーンが見えてきた。


「それにしてもモンスター居なかったな。」


「さすがにこんな場所にはモンスターも来たくないのでしょう。」


「そうかもな!」


3人はワープゾーンに乗って唱える。


「転送!バハクーレ!」


3人の体は光の雫になって消えた。


_________________________________________

シューーーン


「よし、転送完了!」


「やっと帰ってこられたです!」


「無事ではないけどね……。」


そうだ、


タクトがライフゼロ生活を送るハメになった本当の理由が分かるまでは安心はできない。


タクトはいつ消えてもおかしくない不安定な状況に立っているのだから……。


「分からないことはに聞こう!」


「はい!やっぱりですね!」


「うん……ならきっと分かるはず……。」


3人はのもとへ行くため、街中を歩いていく。


賑わっている商店街を抜けた少し人通りも落ち着いてきた辺りの一角にある普通の店。


ここにはかなりお世話になってきた。


アイテムやら装備やらがずらーっと並んでいて俺たち3人は大抵、ここでアイテムを揃える。


そしてここの店主が3人の言うなのだ。


「おー、いらっしゃい、タクトにスグにミク!」


彼はルート、NPCだが型は聞いたことがないからわからない。


もう結構歳だという噂をよく耳にするが、


そんなことを思わせない元気な声、


体はムキムキで噂だと、


エリアボスをたった一人で倒したらしい。


優しい笑顔……、


これのせいで今までどれだけのものを

無駄買いさせられたかわからない。


「今日は何を探してるんだ?」


「すまん、


今日は買い物に来たんじゃないんだ。」


「おー、じゃあなんだ?相談か?」


「あぁ、そうだ。」


タクトがそう答えると店の奥にある丸机に案内される。


3人はそこに座り、

ルートはお茶を入れてきてくれた。


「ありがとうございます!」


「ありがと・・・」


「サンキュー!」


3人はひと口お茶を口に含む。


「美味しい・・・」


「あぁ、美味しいな!」


「あちゅ!!ひたやへどひひゃふひょ!」


「スグ、気をつけないとダメだろ。」


「おめんなひ……。」


「なんて言ってるのかわからねぇよ!

ほら、こぼしちゃって……。」


タクトはストレージからハンカチを出して、


紅茶で濡れてしまったスグの胸と太ももを拭く。


これは決してセクハラではない!


傍から見たらそうかもしれないが違うのだ!


生まれた、


というより作られた時からずっと一緒にいる

二人のスキンシップである。


「あ、ありがとう・・・」


「どういたしまして、


気をつけないと今度は体をヤケドしちゃうからな?」


「うん!気をつけるです!」


やはりスグはかわいいな!


何でもしてあげたくなるよ!


なんてことを思っていると


後ろから何かを感じる。


振り返ってみると、


ミクが羨ましそうに見ていた。


「み、ミクもして欲しいのか?」


ミクは返事の代わりに頷く。


そしてお茶の入ったカップを持ち上げて……


「ちょ、お茶はこぼさなくていいから!


ヤケドしちゃうだろ!」


慌てて止めるタクト、


だが、何故かミクは不満そうな表情だ。


「よ、よし、拭くぞ?」


「うん、いいよ・・・」


なんだかとても緊張する。


どちらかというと、


濡れてもいない人の体を拭いている方が


セクハラなのではないか・・・と考えてしまう。


「タクトくん?なんだか……、


私の時より緊張しているように見えるんですけど?」


今度はスグ様がご不満だ。


「いや、だって、

スグは昔から一緒にいて何回もやってるからなれてるっていうか……、

それにミクがこんなことして欲しいって

あんまり言わないだろ?」


スグは少し考えて、


「うん、分かった!」


「良かった、分かってくれ「私はミクちゃんより女性らしくないんですね?」・・・へ?」


「だって!私の体を拭いても興奮しないんですよね?


じゃあ私はタクトくんが興奮するような美しい女性ではないということで……。」


スグの表情が少しずつ暗くなっていくのがわかる。


「いや、そんなことはない!


俺はスグでもドキドキするぞ?」


「ほ、本当ですか?」


「あぁ、どっちでもドキドキするぞ!」


「興奮しますか?」


「あぁ、興奮するぞ!」


客観的に見たらただの変態である。


「おい、そろそろ話を始めてもらってもいいか?」


「あっ!ルート、忘れてた・・・」


「忘れるなよ・・・」


「冗談だよ!」


「冗談かよ!

こう見えても俺、傷つきやすいから優しく扱ってくれよ・・・」


ルートは結構落ち込んでいるみたいだ。


「それで?相談の内容は?」


「それがさ……」


タクトは今日起きたことをすべて話した。


危険地帯に踏み込んだこと、


宝の噂のこと、


巨大なモンスターのこと、


崖から落ちたこと、


そして、タクトのHPについても……。


ルートは目を閉じて、うーんと唸りながら話を聞いている。


はなし終えると


「何者かによって操作されているか、

もしくは特別な力か・・・」


ルートはしばらくの間唸っていた。


だが、顔を上げてタクトに向かってこう言った。


「本当にバグの可能性はないと言えるのか?」


「あぁ、普通に考えたらシステム的に不可能だと・・・」


「いや、タクト、お前が死んだのはあの砂漠の谷の底だろ?」


タクトは頷く。


「実は、あの場所は最近のアップデートで入れなくなった場所なんだよ。」


「え?入れなくなった?」


「あぁ、プレイヤーがあそこは危ないからって苦情を言ったみたいでな・・・」


「ってことは・・・」


「あぁ、お前さんたちが入れたこと自体がバグだったんだよ、


つまりあの場所はバグエリア、


急なアップデートの影響でバグが大量に発生しているんだ。」


「そのうちの一つが俺のライフゼロ・・・」


「バグが発生しすぎて管理が追いついていないみたいだ、


そこから考えれば……」


「俺のライフゼロがバグだという線も十分にある・・・か。」


「バグってのはしばらくしたら馴染んじまうもんなんだ、


お前さんのバグもしばらくしたら永久化されるかもな!」


おぉ!それって俺、最強になるんじゃね?


「俺が話せるのはこれくらいだ!」


「おぅ!ありがとな!」


「ありがとうございました!」


「ありがとうございました・・・」


「あ!タクト、ちょっと来い!」


「な、なんだよ!」


「いや、もしかしたらお前が二人に聞かれるのを嫌がるかと思ってあとにしようと思っとったんだが・・・」


ルートはえらく真面目な顔つきで言った。


「ライフゼロの分、


お前さんのHPは耐久度なんだ、


あまり連続で強力な技を受け続けると、


お前さんはリスポーン出来ずに消滅するからな!気をつけとけよ!」


ま、マジかよ・・・消滅!?


あれ?おれ結構、やばいんじゃね?


だが、確かに二人には聞いて欲しくない内容だ。


二人が知れば俺を気遣って戦わせてくれないだろう。


二人を守るためにも俺は隠し続けなくてはならない。


入口で待っていた二人に合流する。


「なんのお話ですか?」


「い、いや、何でもないよ!ただギャグを聞かされただけだ。」


スグはタクトの前に回り込んで顔を覗き込んでくる。


「な、なんだよ……」


「スグ、嘘つく人は嫌いですよ?本当に嘘ついてませんか?」


なかなか鋭い!


「あ、あぁ!嘘なんてつくわけないだろ!」


そういうとスグは笑顔になって、


「それなら良かったです!」


(ふぅ〜、なんとか誤魔化せた・・・)


安堵していると今度はミクが体を寄せてきた。


「お前もか!な、なんだよ・・・」


するとミクは少し笑って小声で呟いた。


「う・そ・つ・き♥」フフフ…


鋭すぎる!もうバレた!


これは俺の演技が下手なのか?


それともミクが鋭すぎるのか!?


タクトが頭を抱えているとミクがもう一言、


「大丈夫、スグちゃんには言わないから・・・」


「あ、ありがとう……。」


ミクはニコッと笑ってスグのもとへ走る。


二人は笑いながら街に向かっていく。


そんな後ろ姿を眺めながら

タクトは誓うのだ。


「俺は自分を捨ててでも二人を守る!

あの笑顔は誰にも消させない、

モンスターにもプレイヤーにも、

それに、システムにも・・・」


そしてタクトも二人のもとへ駆け寄っていくのだった

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