第二十七話…「不安の拠り所と見えぬ敵の影」


「なんか、人少なくないかえ、隊長先生?」

 フォーが、俺の背に隠れながら、軍施設内を進む中で、周りを伺いながら不安そうな声を上げる。

「この中だけで問題が発生してる訳じゃあるまいし、人が出張っててもおかしくはないだろ」

 実際、杭の方には精鋭の連中が出向いているし、王宮に繋がる通路も設けられている…、なら、こんな施設内に閉じ篭っているより、そのまま王宮の方へ行くのが、戦果だって挙げられるだろう。

 兵士としての何たるか…それを理解するには、俺にはまだ経験が浅すぎるが、余程の理由でもない限り、その場を離れる理由としては申し分ないはずだ。

 少なくとも、そういう理由で自分の責務を果たしている…という前提で行くなら、俺の背に隠れてへっぴり腰になりかけているフォーより、兵士らしい。


---[01]---


「前に案内を受けた通りなら、このまま進めば、訓練場…開けた場所に出るはずだ。別の道もあるはずだが、そこを突っ切った方が王宮には早く着く」

「でもさ、本とか読んでると、そう言う所では大物と出くわすのがお約束なんだぜ?」

「そうは言うけど、ソレはソレで…だろ。問題を知らずに突き進んで早く着くよりも、問題を見つけて解決するか逃げるかしてた方が…後々楽だ」

「いやいやいや、隊長先生それはおかしいって、人間、問題に突き当たらない方が人生楽だって証明されてるんだじぇッ!?」

「誰の証明だよ?」

「私デスッ!」

「そうか」

 フォーの言葉をそこそこ聞いて、俺は歩く足を止めない。


---[02]---


「うひゃ~…ご無体なぁ~、隊長先生のいけず~…」

「お前の言葉の選択が意味わからん…」

 半ば半ベソをかいているフォーに呆れさえ感じ始める。

 行きたくない…そんなのは、俺だって同じだ。

 でも、その気持ちに正直になって、何も考えずにソレを口にしようものなら、フォーどころか、アレンとシオにまで不安が伝播する。

 昔、村で帰りが遅くなるからと、姉さん達の代わりにヴィーゼとジョーゼの世話をしてた時、急な雷雨で雷が何度も落ちていた日、何気ない質問だったけど、ヴィーゼが俺も雷が怖いのか…と聞いてきた事があった。

 まだ小さかったジョーゼは、怖いあまり泣きじゃくってて、ヴィーゼもなんとか堪えていたけど、その眼は涙の洪水の決壊寸前で、俺はその質問に対して、俺だって雷が怖かった…と言った…、それに続けで、でも今は怖くない…と言うつもりだったけど、怖かった…の単語がトドメになって、ヴィーゼは泣き出した…、そこからは大騒ぎだ…、ヴィーゼの泣き声に、ジョーゼがさらに激しく泣き始めて…。


---[03]---


 昔はそんなに泣く事なのか…と反省したが、今思い返せば、アレはヴィーゼが自分に雷は怖くないと言い聞かせる中で、俺に賛同してほしかった為に投げかけてきた質問だったんだろう。

 怖かった…という言葉に泣いたんじゃなく、その言葉に籠った感情を感じ取ってしまったんだと…今では思っている。

 こうやってフォーが不安の言葉を、どんどんと口にしていくのは、それに似た部分があるのかもしれない。

 不安に思う事を口から身体の外に出して、体の中に建てた大丈夫…の一言を安定させる…。

 こんな状況で、俺まで不安に思う事を口にしようものなら、フォーの精神的支柱を壊す…それどころか、1人崩れれば、その倒壊した破片は他の支柱さえも壊す…。

 アレンやシオが、どういう感情を持ってこの場にいるかはわからないが、不安が無いわけがない。


---[04]---


 その不安を押しのける大丈夫…の言葉を壊す訳にはいかないのだ。

 最終的に隠れるどころか、フォーは俺のローブにしがみつく始末…、しかしそうしている中でも、足を止める事は無く、俺達は訓練場まで何事も無く来る事ができた。

 そもそも軍施設の通路を通って来たと言っても、各施設に繋がる道というより、問題が起きた時にすぐに外へ出て対処できるように…と訓練場から直で外へと繋がった通路だった事もあって、フォーが言っていた通り、人の姿はまばらなのも当然と言える。

 あの通路で立ち止まる事は無く、あの通路を通っている最中は、急な腹痛にでも襲われない限り、だれでもさっさと外に出るだろう。

 むしろ人が居なくて当然だ。

 もし、人が多くいたら、それは問題が起きたばかりか、それ以外なら、施設内で問題が起きて人が逃げ出ている最中か…だ、極端な話だが。


---[05]---


「ほら、何も無かっただろ?」

 通路とは当然違う、大勢の兵が訓練を行う空間…、どことなくヴィーツィオを討ったあの鉱山の空間を思い出すが…、それはここが同じく山を掘り進んで作られた中にあるからだ。

 向こうとは違う、壁も床も、天井も、どこもちゃんと石などで補強されているし、強度を増す為に太い柱が何本も建っている。

 今は、負傷した兵を集めた治療所となっているようで、あちらこちらでうめき声とともに、治療にかられる医療士達の怒号が響いていた。

「何も無いってのは違う…。こういうのは入った瞬間じゃないんだよ。入った瞬間から何か問題が起きるなら、ガシャンッて入って来た扉が閉められるから…」

 そう言って、フォーは今来た道へ振り返る。

 当然、その道が塞がれている…なんて事は無く、引き返そうと思えば引き返せる状態だ。


---[06]---


「それで…、来た道が塞がってない場合の可能性は何だ?」

「・・・それは少し行った所でどでかい魔物とかが出てくるってお約束が…」

 魔物…か。

 一見、そんな大きさの魔物がいるようには見えないな。

 兵士の訓練場らしい戦闘痕こそあるが、魔物と大捕り物をしたような痕跡は、どこにも見て取れない…、そもそも仮設の治療所で戦闘を始めれば、それこそ大騒ぎだ…、それでも、フォーが言わんとしている事がわからない…と全否定するつもりもない。

 ココへ来る途中でほとんど人に会わなかった訳だし、不安に駆られるのもわかる。

 何回かすれ違った連中も、急ぎ足で話をする暇さえなかった。

 王都を襲った問題…ともなれば、当然と言えば当然だが。

「ほら行くぞ」

「あ~…あああ~~~…、お約束が…」


---[07]---


 まったく、これだけビクビクしていて、よく騎士団に入れたもんだ。

 その見た目だけなら、この面子の中で、一番の曲者でツワモノの様相をしているっていうのに。

「つかお前、いつもはそんなおどおどしてなかっただろうが…」

「なんか今日はもうさっき襲われたのといい、私の精神限界なんだよ~ッ!?」

 気持ちはできる限り尊重してやりたいが、それはあくまで平常時の気遣いだ…、緊急時でまでそんな事をやっていてたら大事が起こる。

 だがしかし、こいつらの話だと、これから行く王宮が問題の中心地の1つである可能性が高い…か、それなら下手に連れて行くより、少し引いた場所で何かの貢献をさせていた方が安全か?

「じゃあ、フォーは王宮に向かわず、ココで救護の手助けをするか? こういったのはいくら人手があっても足りないからな」


---[08]---


 簡単な治療なら、フォーでも問題なく熟せるはずだ…、それに、治療用にいくつか杖魔法用の杖を持っていたはず、この国では重宝するものだろう。

「・・・なんか、来なくていいと言われると、ソレはソレでなんか寂しい…」

 面倒くさい奴だな。

「なら言い方を変えてやる。ここでの治療に、お前の杖魔法による治療が必要だと思うんだよ。適材適所だ。俺は譲さんと合流しなきゃいけないし、頼めるのはお前しかいない」

「ん~…、そう言われると、寂しさも吹っ飛んで、悪い気もしない…なぁ」

 そう言って、フォーはもじもじと体をくねらせる。

 話に乗せやすいというか…逆に心配になって来るな。

「じゃあ、一旦ここで別行動をとるぞ。アレンは俺と譲さんとの合流、シオはフォーと一緒にここでの手伝いに回ってくれ」

「え、いや…その…」


---[09]---


 戦闘もちゃんと熟せるとは思うが、シオはまだ経験が浅いだろうし、こっちでフォーと協力してくれた方が、フォー自身もやりやすいと思ったんだが、こっちの提案にシオは不満…というか何か言いたげで、こちらを見ながら何かを訴えるように控えめに手を上げた。

「ウチも、そっちと一緒に行きたい」

「え…、シオっち、まさか私と一緒が嫌とかッ!?」

「・・・そうじゃない」

「…今、何か間がなかった?」

「違う…そうじゃなくて、ウチ、あの子達が心配だから…」

 あの子達…、あの鉱山で保護した子達の事か?

「保護したって言っても、結局閉じ込めてるみたいな感じだったし、・・・それは仕方ないのかな…て思うけど、でも、やっぱ心配だから…」


---[10]---


「そうか。じゃあ、シオもこっちだ。フォーはここで治療を頼む」

「え? マジな感じ? 1人とか嫌なんじゃが? 知ってる人がいない場所で1人とか、人見知りな私は不安で、魂が圧し潰されちゃうんだけどッ!?」

「その見た目じゃ、むしろ相手の方が引くから安心しろ…」

「こんな状態じゃ、ソレも安心できないッ!?」

 ただでさえ不安な状況で1人になるのは、確かに不安だとは思うが、これ以上どうするかを話し合っていても埒が明かない。

 さっきは他に人もいなかったから、仕方なかった部分もあるが、今は周りに助けを求める人がいる…、その人達の助けになって少しでも自信がつけば、不安も幾分かマシになるだろう。

「・・・そこの人、すいません」

『はい?』


---[11]---


 負傷者の治療のため、せっせと動き回っている人を呼び止める。

「こいつ、見た目はアレだが、杖魔法である程度の傷なら治す事ができる。ここに置いて行くから指示を出してやってくれないか?」

「え? 隊長先生?」

 状況が状況でも、頼れる人間が他にもいるんだと知るには、丁度良いだろう。

 フォーの驚く声を流しながら、俺はその背中を押す。

「本当ですかッ!? 助かりますッ! では取り急ぎ治療してほしい患者がいるのでお願いしますッ?」

「えッ! ちょッ!?」

 フォーが手を引かれて連れていかれる。

 顔に付けた仮面のせいで、どんな表情をしているかはわからないが、その声を聞く限り、動揺はしているようだ。


---[12]---


 だが、それも治療の手伝いをし始めれば、すぐに消えるだろう。

「これでフォーも大丈夫だろ。行くぞ」

「本当に大丈夫か、アレ?」

 シオが苦笑気味にフォーの連れていかれる姿を見る。

「大丈夫だ。問題があるようなら任せたりしない」

 俺達は、小走りに、王宮へと続く通路へと入っていった。



 レッツォの兄であり、この国の重要人物であるアット…、彼の願いにより、自分達がいた場所より、さらに王宮を進み、国の命たる王…キャロルナの捜索に当たる…。

 今までも、王宮を進む中で、ちらほらと遭遇していた白き者達とは相変わらず出くわしていた。


---[13]---


 動きの鈍い相手の中には、動きの早い相手もいるらしく、それを個性…と言っていいかはわからないけれど、個々に能力の差が確かにある事が確認できる。

 まるで多人数の人…を相手にしているような…、そんな気さえした。

「こりゃ~またうじゃうじゃと…」

 こちらの存在に気付いた白き者達…、二桁に届かなくても、それに近いだけの数が一斉に向かってくる…、その様子に、レッツォが嫌そうな顔をした。

「言ってもしょうがないでしょう…」

 それに…、どこから…という疑問に対しては、アットの話では保護した子供が…という事。

 何の目的があって…と疑問が頭をチラつき、それでもあのヴィーツィオの協力者という線で行けば、その目的は今までの流れを汲めば封印の杭だ。

 この人の群れが、あの怪物の一部であるなら、数的に外へと溢れた白き者達が主力…、能力が未知数だからこそ、不安が拭えない。


---[14]---


 アレで杭をどうにかできるのか…それとも他に策があるのか…、白き者達を排除するのは、怪物の力の低下を見込めるかもしれない…、しかし、それにはまずその大本を止める必要もある。

 消した傍から増えていかれたら、数では不利である以上、消耗し続けるだけで負けはあっても勝ちは無い。


「盾持ち、前へ」

 盾を持った兵2人、私達の前に出て、強く踏ん張りを効かせて盾を前へ構える。

「弓持ち、放てッ」

 その盾持ちの後ろから、弓を持った兵が矢を放ち、足の速い白き者を倒し、続けてきた相手を盾持ちが進行を遮る…、そこへ剣を持った私ともう1人が続けて止めを刺していく。


---[15]---


 敵の強さを考えればここまで堅苦しく陣形を組んで進む必要もない気がする…、でも、今は要救助者がいる以上、速さ重視で進む訳にもいかない。

 そして、最後の1人を倒し、追撃が来ない事を確認した上で、薄々なれど気になっていた事が次第に大きくなっていく。

「白き者がいるにはいますが…、外へと溢れんばかりに出てきたにしては、少ないようにも思えますね…。仮に、あの部屋から白き者が溢れ出したとして、そこに思考が孕んでなければ四方に溢れかえるはず…。でも王宮の外とは反対側のここにはそこまで多くの白き者がいない…、数だけを見れば、王宮の入口で遭遇した数の多い程…」

 通路の奥へ…、足を進めながら、疑問が疑問を呼んでいく…。

「数が少ない…という事は、こちらに白き者を送る必要性が無かったか…、もしくは…」


---[16]---


「もしくは…、ここに溢れていた連中が…、何らかの理由で移動した…という事ですかね」

 私が言おうとした事を代わりに言うように、言わんとした事をそのまま正確にアットが答えた。

「はい…、どちらにしてもイイ事が起きるとは思えませんが…」

「ですね…。しかし、こちらに敵の数が少ないのは、むしろこちらには好都合…」

 キャロルナがこの先にいるのなら、確かにそうだ。

 そして、通路を進んだ先、まばらだった白き者達が、1つの部屋の前で集まる様に群がっているのが見えた。

「盾持ち、弓持ち、1名ずつ残ってバイネッタ様の警護、残りは私に続いてください」

 その白き者達は、その扉を叩いたり引っ掻いたり…、知性の欠片を感じないが、それでもまるでそこに何かがあるように動いていた。


---[17]---


 この通路だって永久に続く道でもあるまいし、それなりに道を進んできた中で、目的地が近いという事は、感覚的に察しが付く…、ならその扉が目的地である可能性は必然的に上がる…。

 そこへ敵が群がっているなら、急を有すはず、私は、アットへの確認をする間も捨て、走り出す。

 部下もそんな私に続いて動いた。

 弓持ちが矢を放ち、群がっていた白き者達がこちらの存在に気付く。

 数は…、1、2、3、4、5体…。

 真っ先に飛び込んできた白き者、こちらを掴まんと手を伸ばしてくる…、しかし、わかっている事ではあるけれど、そこに戦術も何も無い…、ただ襲う…という思考のみが存在するような単純さ…。

 私は踏ん張り、腰を入れて、思い切り剣を横へと振った。


---[18]---


 生身の人間が手を伸ばした所で、その間合いにこちらが負ける道理はない…、魔物魔人のように異様にその腕の長さが伸びたりしていない限りは、相手の間合いにこちらが入る前に、こちらの間合いに相手が入る。

 私の剣の切っ先は、相手の顎へと直撃し、その肉を斬り、顎骨を砕いて、その体を横へと引っ張って行く。

 続けてくる白き者へ、私と位置を入れ替えるように盾持ちが割り込み、その盾で相手の跳ね返し、続けて弓持ちが後続の白き者の動きを鈍らせる。

 今までと同じように、それは戦いというより、一方的な掃討で終わった。


「王よ…、ご無事ですか!?」

 白き者を倒してすぐ、焦りを見せつつ、アットが体に鞭を打つようにその扉へと駆け寄る。


---[19]---


 何度か扉を叩き、王を呼んだ。

『アット?』

 そして、扉越しに、聞き覚えのある声が届く。

「王よ、ご無事でッ」

 扉を開けようとするが、固定されたように開ける事ができない…、その直後、少し待って…と返答が来た後、中から何が重い物を動かす音が聞こえてくる。

 そして、中から扉が開いた。

 私は、王の声が聞こえている…としても、何かの罠かもしれない…と身構えつつ剣を収めず握っていたけど、それは杞憂だったようで、中から声相応の幼い少女が姿を現す。

「アットッ!」

「ご無事で何よりです…」


---[20]---


 王である少女のキャロルナに怪我をしているような様子は無い。

 アットが安堵と共に、無理をしようとするのを遮って、私は少女に頭を下げた。

「失礼します王様、再会を喜びたいとは思いますが、彼が負傷していますので、まずはその治療をしたいと思うのですが…」

「は…はい」

 最初こそ喜びの顔を見せていたキャロルナ、その目でレッツォに肩を借りる自身の従者をしっかりと捉え、不安そうに顔を曇らせる…。

 できる事なら、王とはいえ、まだ子供であるキャロルナにそんな顔をしてほしくは無いけれど、そうも言っていられないと、彼を中へと入れた。


 部屋の中には、王以外に子供数名と使用人が1人、王の警護に当たっていたであろう兵が3名…内1名が負傷中…と言った所…。

 部屋の中で戦闘が行われた様子は無く、白き者が中へと入る前に家具を使って扉を塞ぐ事ができたようだ。


---[21]---


 それでもある程度揃った数で押されでもしたら、侵入を防ぐように固めた扉とは言え、急ごしらえで防げる時間はたかが知れている…、それでも最悪の状態になっていない…という事は、やはりこちらにはさほど多くの白き者が来ていない…という事だろう。

『はい…、カヴリエーレ隊長が言うように、こちらにはお聞きしたような数の敵が来る事はありませんでした…、しかし、急だった事もあって負傷した者も…』

 ここで王様を守っていた兵も、こちらの話を裏付けるように頷く。

「では…下手に移動するよりも…、ここに留まった方が…、安全である可能性が高いですね…」

 そして、今後どう動くべきかを話そうとした時、簡易的な治療を受けているアットが、口を開く。

 状況を考えれば、彼の言うように、大人数になるであろう移動をするよりも、被害が少ないこの状況的にも移動しない方が、安全性を保てるかもしれない。


---[22]---


 何より、子供の多い面々に、負傷者まで連れては、外に敵がいる状況でただでさえ危険なのに、より一層危険性が増す…、それらを踏まえ、私も彼の意見頷いた。

「ではその様に」

「君達は…、これからどうするのですか?」

「私達は、一度王宮の入口まで戻り、その場所の確保を兼ねて待機している部下と合流したいと思います。最終的には当然ここからあなた達を移動させる必要がありますし、その為には今よりも兵を増やさないと…」

「わかりました…」

「では、レッツォと盾持ちの1名を残し警護に当たってもらうので、私達が出ていった後、再び扉の防御を…」

 その時、僅かな揺れとドオォーーンッ!という大きな音が部屋中にこだまし、壁や天井からパラパラとホコリが落ちた。


---[23]---


 突然の事に、子供達は泣き始め、驚きから、兵士たちは周囲に意識を向ける。

「今のは何ですか?」

 私は、周囲に視線を送るけれど、その答えを持つ人はおらず、皆首を横に振った。

「・・・大きな音に、部屋を揺らす程の衝撃…ですか」

 普通に考えれば、イイ事なんてあるとは思えない。

 ここではないどこかで、問題が発生したと言っていいだろう。

「音のした方角から言って…、恐らく軍施設の方から…だと思いますが…」

 この状況では、得体の知れない何かが問題を起こしていてもおかしくはない…、1つ問題が解決したかと思えば、次の問題が姿を見せる…、その状況に次の行動へ、私は再び何をすればいいのか、思考を巡らせるのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る