第四話…「始まりの時と帰らぬ思い人」【2】


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 村を守る結界を解く場所に行った人たちが、部分的に解除する。

 ソレを知らせる球体は天高く打ち上がり、一番高い場所に至ったのか上る力を無くす。

 そして、前方にそびえる山を挟むように、同じく赤く光り輝く魔法の球体が打ち上げられた。

 いよいよ祭りの始まりだ。

「さて、今年も美味い肉を目一杯取って帰るぞ!」

 森から鳥たちが空高く鳴きながら飛んでいくのが見える。

 それは何かがそこにいる証。

 私は目を閉じて深く深呼吸をし、杖を持つ手を強く握って構えた。



 急げば何だかんだ言ってもできるもの。


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 目の前にあるモノ、野宿用の道具だったり食料だったり、旅行用と思われてもおかしくない量を積んだ馬車を見ながら、あたし、ドルチェは誇らしげに腰に手を当ててそれを見上げる。

 まぁ、あたしは発注をしただけで、それをまとめたのは別ですけど。

『おい』

 そこへ、荷物の入った木箱を抱え、馬車に荷をまとめたレッツォが、不満そうな表情を浮かべてあたしを見下ろしてきていた。

「何?」

 何を言ってくるのか、それは何となく想像がついていたけれど、あたしはあえてそんな事は言わず、彼の鬱憤を晴らすきっかけを与えた。

「お前が村に行くのはいいがな。なんで俺までそれに付き合わなきゃいけねぇ」


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 案の定、予想通りの言葉は飛んでくる。

「確かに行く事を決めたのはあたしだけど、こんなか弱く小さなあたしにこの荷物を1人で用意させるつもり?」

「そういう事を言ってるんじゃねぇよ」

「別にいいじゃないの。ダメなの?」

「ダメじゃないが、勝手に行く事が決まってんのが気に入らねぇんだよ。理由を言え、理由を」

「騎士団の仕事が休みに入って、残ったのは小隊内の仕事、それを早々に終わらせたあなたは、夜は呑みに出かけて、帰るのはほぼ朝。仕事を早々に終わらせたのは良い事だけど、その後が少々目につくわ。正直あれ以上酷くなる事が無かったとしても、だらしなさ過ぎ、いくら休暇とはいえ小隊の士気に関わってくるから、目が離せなくなる。そしてちょうど私は力のある男手が必要になった」


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 それ以外では、レッツォを連れて行く理由はない。

 レッツォは甲人種だからガタイは良いし力持ち、荷物を運ばせるなら持って来いの人材で、何より他の小隊の人よりも行動を共にする事も多いからやりやすい。

「長々と説明ありがとよ」

「分かってくれたかしら?」

「言いたい事はわかった…。理由も…まぁ納得はいくな」

「よろしい。普段からしっかりとした生活をしていれば、あたしたちも気が楽なんだけど」

「その分、隊には貢献しているつもりだがな。まぁ、今回は仕方ないから付き添うさ」

「本当にそれだけが理由かしら?」

「なんでそんなに疑うのかねぇ。俺ってそんな信用ない訳? 少なくとも、覚えている限りウソをついた事とかはなかったと思うが」


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「その辺は自分で考えなさい。とりあえず準備ができ次第行くから、そのつもりでね」

「へいへい、分かりましたよ、ご主人様」

「気持ち悪いから、やめて」



 その日、日の出と共に出発し、予定としては…昼頃にはプセロアに到着したい。

 その残った道のりも半分程過ぎた時、平原で進む先に小高い丘があるが比較的に見晴らしが良い場所でそれは起きた。

 いつものように…早くも無ければ遅くもない、適度な速さで走っていた馬が、その歩みを遅らせ、そして止まる。


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 それは後ろを走る譲さんの方も同じらしく、そちらは俺の方よりも少し早く歩みを止めたようで、仕方なく彼女が手で近くまで馬を歩かせてきていた。

「すみません。急に馬が足を止めてしまって」

「いや、こっちも一緒だ。そっちの馬はどんな調子だ?」

「外傷等は見られませんね。ここまで走ってきて疲れたにしろ…、同時にというのには何か引っかかります。そもそも十分休息を取りながら来たつもりですし、特に変わった事はなかったはずです」

「変わった事ねぇ。無い訳じゃないが、このぐらい動物に影響を与えるほどじゃ…」

 顎に手を当てて原因を考える。

 そこで、俺の呟いた言葉に彼女は疑問の表情を見せた。


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「その変わった事というのは?」

「あ~、周りの魔力が濃くなってるんだ」

「な、なるほど」

「まぁ魔法使いなら気付けるぐらいの変化だがな。もう少し濃くなればあんたでもわかるようになるだろう」

「集中して感じ取れば…確かにわかる…ような気がします。ですがこれが原因ではないんですよね?」

「そうだな。この程度で歩みを止めるようじゃ、俺の村の方も、そっちの王都の方も、動物が言う事を聞かなくなる所じゃすまない。下手したら凶暴化するかもな」

「確かに、そうですね」

「まぁそんなこんなで、原因は他にあるだろうさ。それが何かまではわからないが…。動物は人間より敏感な部分があるからな。何かの変化に気付いたか? はてさて、歩みを止めるほどの何か…、盗賊か? それとも、魔物や魔人の類か?」


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「周辺には何も見えませんが…」

 自分の馬車の上に立ち、譲さんが周辺を確認する。

「ふむ…。なら、魔物とかに怯えている訳じゃなさそうだな。じゃあ何が…」

 疑問に思いつつ、俺は地面に手を当てた。

 太陽の日差しで温められた地面、しかしこの程度なら問題なく進む事ができる。

 それに雨が降ってぬかるんでいる…なんて事もなく、走行の支障になる事はなさそうだ。

 立ち上がり、自分の操る馬へと近づく。

 こちらも譲さんの方の馬と同様怪我をしている様子はない。

 その代わり、周囲を気にするように首を動かしている事に気が付いた。

「どうしたんだよ。落ち着け」


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 とりあえず馬を落ち着かせようとたてがみ付近を優しく撫でる。

 毎年、王都へ買い出しに出る時に、馬車をいつも引いてくれている馬だ…、俺としても当然付き合いは長いし、今までこんな事はなかった。

 何度か馬を撫でて、改めて周辺を警戒しつつ俺は馬車の前へ出ていく。

 周りを見ても何ら変わった様子はなく、周辺は静かで、風が平原に生えた草達を撫でている。

「何もない、というか状況的に不気味な程に静かだな」

 ほんのわずかな時間、これからの事を考えたが、結論は考えるという程の時間を必要としなかった。

 無理に馬を進めるのは心苦しいが、村はもうすぐそこだ、走らせる事が出来なかったとしても、歩かせればいい…か。


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 それでも今日中には村に着けるだろう。

「・・・仕方ない」

 とりあえずの方針を伝えようと、周辺の警戒をしてくれている譲さんの元へ行こうとした時、この状況が嵐の前の静けさだという事を思い知らされた。

ゴゴゴゴッ!

 それは次第に、最初は小さく、徐々に足元と視界に違和感を覚え、そして伝わってくるモノだけでなく、見てわかる程の地揺れが起きた。

 最初は何が起きたかわからなからず、何かの魔法で幻覚でも見させられているのかとも…とさえ思った。

 だが、その答えが出るよりも早く、それが現実で起きている事だと思い知らされる。


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 その小さな揺れは、あっという間に大きなモノへと変わり、大地が立っていられない程大きく揺れた。

「なっ!?」

 俺はその大きな揺れにつかまって、思わず倒れるように膝を付く。

 世界の終わりかとも思えるその揺れに、思わず腰が抜けそうになった。

 原因はなんだ…と頭の中で考えはするが、揺れがそうはさせてくれない。

 短い時間なのか、長い時間なのか、時間の感覚がなくなる程、恐怖を感じる時間が続き、ようやく地揺れが収まったかと思えば、情けない事に足が震えて上手く立っていられなかった。

「はは…、マジか」

 自分の状態にある意味笑いが出る中で、今度は笑えないと思える失笑が出た。


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 自分の横を通り過ぎる大きな物体。

 さっきまで俺が乗っていた馬車が、速くはないが誰も乗せずに走って行ってしまった。

「・・・マジかよ!」

 1つの安心点として、譲さんの方は馬をなだめてくれていたから事なきを得ている。

 これまで魔物や魔人、盗賊やらに襲われた事もあった馬だったからか、何が起こってもとりあえず変な事にはならないという勝手な思い込みがあった。

 馬の主人である自分、俺自身も大抵の事では動じないと自負していて、この様だ。

「私が行ってきますよ」


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 俺の状態に気づいているかどうかはわからないが、譲さんの方から願ったり叶ったりな事を言われ、俺は素直に頷いた。

「止められたら、道沿いで待っててくれ。俺がそっちの馬車で向かう」

「はい」

 頼もしくも感じる返答を返し走って行ってしまった彼女の後姿が、小高い丘を越えて消えていく。

 にしても、自分はこんな状態で、騎士とは言え女性である譲さんが普通に動けている事に、いささか不甲斐ないというか、恥ずかしさを感じる。

 危険とか、恐怖を感じる場面、そういった場面に遭遇してきた場数とでも言えばいいか、そういった経験の差だろうか。

 なんで動けるのか、聞けるものなら聞いてみたい、経験が関係ないのならなおさらだ。


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 杖を突き、膝に手を当てて立っている様は、まさに老人のソレだ。

「ふぅ…」

 少しでも落ち着こうと、何回か深呼吸をしていた時、視界に何か黒いモノが映り込む。

「あ?」

 何かの見間違いかと、目を凝らして同じ所を見たが今度は何も見えなかった。

 頭の中に「?」が浮かぶ中で、足の震えも段々と収まり始め、そろそろ譲さんも馬車に追いつく頃合いだろう。

 一呼吸おいて、何かが見えた方向とは反対の方向に視線を送る。

 ただ視界に映ったモノが何か、それが気になった。

 その答えは、結果として、すぐにわかる事となる。


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 視線を送った先、本来ならどこまでも続く平原が続いているはずが、この時ばかりは視界のほとんどが真っ黒だった。

 真っ暗ではなく真っ黒だ。

 その理由は、こちらに何か得体の知れない物体が飛び掛かってきていたから…。

 そして頭で答えを出すよりも早く、それは危険だと体が防衛行動を取った。

 熱い鍋をうっかり触ってしまい、熱いッと手を離すのと同じ現象、とっさに手に持った杖を盾代わりに前に突き出して、自分に向かってくる何かを防いだ。

 防いだが…、向かってきていた物体は重量もあったらしく、その勢いを殺しきれなかった俺の体は後ろに飛ばされて倒れ込み、物体はそんな俺に覆いかぶさるように、杖をくわえる形でもなお、俺に向かって来ようとしていた。


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 その容姿は人ではなく、動物でもない。

 魔物か、それとも魔人か。

 自分の首へと迫ろうとする相手の口の形、見える範囲だけで見れば、頭は犬のそれに近いし、魔人ではなく魔物だと思うが、この近辺でこんな真っ黒な魔物を見た事はない。

「…ヒノ…カムイノミ…グロー…コシネ…エイワンケ…ッ!」

 魔物の体が一瞬光り、わずかな間をおいて杖にのしかかる力が緩まる

 相手が俺を襲うのをやめた訳ではない。

 相手の体が軽くなっていく…、すかさず魔物を前に押し出し、自分との間にできた隙間に足を入れて一気に蹴り飛ばす。

 強風で巻き上げられた綿胞子…とまではいかないが、それでも十分すぎる程、相手との距離は離れていき、その黒い体は弧を描くように次第に落ちていく。


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 さっきまでの老人のような状態はどこかへ消え去って、地揺れの恐怖よりも、目先の死へ意識が行き、地揺れと違って、何度も経験してきた魔物との対峙に、一応の調子を取り戻す。

 ガクガク言っていた足の笑いも消え、実に素直に立ち上がると、さらに呪文を唱える。

「…ヒノ…カムイノミ…グライフェン…カラ…」

 唱えると共に、空いた左手を突き出して何かを掴むような動きを見せると、ゆっくりと落ちて行った魔物がぴたりと止まり、そこから力一杯自分の方へと引き寄せるように動くと、今度は魔物の体が勢いよく俺の方へ飛んでくる。

 あとはしっかりと握った杖を力一杯叩きつけた。

 よくわからん相手ではあるが、こいつが魔物であるなら、これじゃまだ絶命する事はないだろう。


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 あくまで動けないようにするための攻撃だ。

 俺は今度こそ確実に仕留めるために、杖を左手に持ち替えて、剣を鞘から抜く。

 地面に倒れるソレは、全身が真っ黒で、その輪郭は靄がかかったようにぼやけている…、その形は大型の犬に近く、しかし毛が生えているようには見えない。

 どう見ても魔物だが、じっくり見てもやはり見た事のない魔物だ。

 時期が時期だし、魔力に流されて遠方から魔物が来た可能性は否定できない。

 それに、その普段見る魔物とは明らかに違うその容姿を見ていると、妙な胸騒ぎを覚えた。

 演技でもない感覚を首を横に振りながら飛ばして、いざトドメを…と思い、剣をその魔物の首へと突き立てた時、その真っ黒な体は一瞬にして膨れ上がり、そして破裂する。


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 とっさに後ろに引いて申し訳程度に目や体を守るために手で防御するも、破裂したにも関わらず、その体は、血も肉も飛び散らせる事はなく、周囲に一瞬だけ黒い靄を掛け、それもすぐに消えていった。

「何だってんだ…」

 一応、一難去ったと判断し、倒れた時に着いた土を払い落とそうとするが、思わずため息が出てしまうような光景が目に入る。

 道を挟むように広がる草原、風で揺られる草花たちの中に、明らかに不釣り合いな黒いモノが点々とあって、そちらがこちらに向かって動く。

 それが何なのか、それは見てすぐに分かった。

 今倒した魔物と同じ姿をしていたからだ。

 それが道の両サイドに見え、合わせて10匹は超えるほどの量。


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「…ヒノ…カムイノミ…マグシクラフト…ザメレン…カラ…」

 こちらが自分たちの存在に気付いた事を知ってか知らずか、一斉に走り出す魔物に対して、俺は覚悟を決めてそれよりも早く呪文を唱え始め、そして剣と杖を構えた。



 地揺れなんて初めての体験だった。

 怖くないと言えばウソになるけれど、それでも不思議と体はいつものように普通に動く。

 それどころか、地揺れそのものに既視感というか…昔体験した事があるかのような感覚すら覚えていた。

 彼のあの状態も不思議とは思わない。


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 というより、あんな状態になるのが普通だと思う。

 しかし、自分はそうはならなかった。

 そこに何かのズレを感じずにはいられない。

 そんな中、私は大切な荷物の乗った馬車に追いつこうとしていた。

 馬車は、先ほどよりもスピードが落ち、人が歩くほどの速さで進んでいる。

 それに道を外れる事もなかったため、余計な手間も取らずに済んだ。

「ふぅ…」

 安堵のため息をつきつつ、追いついた馬車に素早く飛び乗り手綱を引いて馬を止める。

 大した事ではなかったけれど、妙に焦り、馬車に追いついた事で1つ肩の荷が下りた。


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 滅多にない事だけど、他に馬車が来てもいいように一応道の隅に馬車を寄せて停める。

 そして少しでも落ち着けようと馬の首を撫でたが、馬は相変わらず何処か落ち着きが無い様子、それでもさっきよりも落ち着いているし、また勝手に動き出すなんて事はないだろう。



「…ヒノ…カムイノミ…ソイ…ウン…ブルォフ…カラ…ッ!」

 いくら何でも、10匹を超える魔物と同時に戦うのは自殺行為だ。

 相手が遅い魔物や魔人だったらいいが、相手は犬型の魔物で、遅いとは言い難い。

 幸いだったのは、魔物達の存在に早い段階で気づく事が出来た事だろう。


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 おかげで、呪文を唱える余裕があった。

 呪文を唱え終える頃には、飛び付けば俺に届く距離まで魔物が迫っていたし、実際に死角の魔物は飛び掛かっていたかもしれない。

 だが呪文を唱え終えた時点で、先手は俺だ。

 唱え終わった瞬間、わずかに俺の周辺が光りに包まれ、そして光は俺を中心に外側へ向かって爆発し、襲い掛かってきていた魔物達を吹き飛ばす。

 ちょうど、魔物達は道を挟んで半分半分に分かれた。

「…ヒノ…カムイノミ…バイバハルトン…ノ…ヴァイト…グロー…パセ…カラ…ッ!」

 片方の魔物の群れの周囲が光りに包まれる…、しばらくしてその空間だけ上から何かがのしかかっているかのように草花が押し潰され、小さなくぼ地を作り、そこにいた魔物達の動きが極端に鈍くなって動けない程の状態になる。


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「…ヒノ…カムイノミ…グロー…タマ…レラ…シュス…カラ…ッ!」

 すかさず反対側を振り向き、視界に入った一番近くにいた魔物に対して魔法を放つ。

 一瞬の間をおいて、ドンッ!という音と共にその魔物と、後ろにいた魔物を巻き込んで後方へと吹き飛ばし、3体の魔物が動かなくなる。

 それでも動きを止めない他の魔物達が、ただただ俺を仕留めようと襲い掛かってきた。

 1匹の攻撃を避けてその背中に向けて杖を強く叩きつけ、次から次へと来る攻撃を避ける。

「多いな、まったく…。…ヒノ…カムイノミ…フレ…タマ…」

 呪文を唱えながら、敵の攻撃を避けて杖を空に向けた。


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