第三話…「まだ見ぬ歪みと見えてくる何か」


「あんま甘くないな…」

 昼前、調査の一環として町の方に出てきた俺は、青果店…だろうか、そこに並んでいた林檎を買い、店主の押しに負けるとさらに数個同じモノを買わされて、その複雑な味わいに眉をひそめながら歩を進める。

「お前も食うか?」

 懐に抱えた林檎を1つ取り、隣を歩くシオに差し出すが、その表情にはどことなく嫌そうな雰囲気が現れた。

「ウチに処理を手伝えって事か?」

「そんなつもりはないが…」

「まぁいいけど」

 林檎を受け取り、一口かじったシオの表情は、こっちと同様にいかにも複雑そうだ。


---[01]---


「それで、なんでウチと組んで町に来たの?」

 口の周りに付いた果汁を拭いつつ、シオはこちらに視線を向ける。

「真面目なアレンとかで良かったんじゃないのか?」

「アイツは真面目過ぎるから、こういう町で行動するのは合わないだろ。フォーはあんな格好をしてるし変に警戒されて話どころじゃない。セスに関しては自分達がちゃんとした関係が築けてないのに、話を聞くだけの関係だけだとしてもうまくやれるのか怪しい。そうやって考えていった結果がお前だ」

「…う…ウチならうまくやるだろう…て?」

「消去法だが、4人の中じゃ一番臨機応変に動けるかな…と」

「・・・そう。じゃあ期待に応えられるよう頑張ってやる」

 シオは口いっぱいに林檎を頬張り、こちらを指差す。

「でも、この林檎みたいに残飯処理はごめんだ」


---[02]---


「残飯…て。れっきとした売り物だぞ。まぁ、加工する事前提なのは確かだな。材料があればジャムにでもするんだが」

「先生って、案外なんでもできるよね? アイセタとか魔物を食べるのはどうかと思うけど」

「褒めたいのか貶したいのかどっちだ…。・・・魔物だって獣は獣、喰えない訳じゃない。アイセタなんかは、ちゃんと血抜きをすれば臭みが抜けてそれなりに食えるんだぞ? まぁ肉は筋が多くて食える場所が少ないのと、そもそも肉が硬いのが難点だが…」

「あの硬さは確かに独特だったな…。臭みが抜けてるって言ったって、臭いが消えた訳じゃないし」

「そうやってブツブツ言う割には結構食ってただろ」

「食べ物は粗末にできない。他者の命を貰っているんだから」


---[03]---


「そうだな。アレンとか譲さんの部下は物珍しそうにして食ってたが、さっき林檎を食ってた時のお前みたいになってたな」

「あれは…その…。いやいい」

「そうか」

 俺は、食べかけだった林檎を一気にかじり尽くす。

「…ん?」

 その時、自身の右手側にゾワゾワっとした悪寒が走る。

 嫌な雰囲気がした訳じゃなく、勘違いでもない。

 それは普通とは違う魔力の流れを感じ取った時に、俺自身がよく感じるモノだ。

 足が止まり、その悪寒の元が何処か探ろうとした時、ドンッ…と前から俺より背の低い何かがぶつかってくる。


---[04]---


「あ、すまない」

 俺自身、急にその場に立ち止まってしまったのだから、当然他の人間の邪魔になる。

 それを証明するかのように、マントを羽織り、フードを被った誰かがぶつかってきた。

 俺は謝罪と共にすぐ横にずれて道を譲る。

 ぶつかってきた誰かは、こちらを見る事もなく、そそくさと俺達が来た道を小走りに走っていった。

「先生…ッ」

「悪い。ちょっと気を取られた」

「いや、そうじゃなくて…」

 焦った雰囲気を見せるシオが何を言いたいのか、皆目見当もつかず、俺は首を傾げる。


---[05]---


「チッ…。先生、今の…スリだ」

「すり…?」

 その言葉に釣られるように、俺は懐へと手を伸ばすが、その結果は背筋が冷えていく。

 あるはずのモノがない。

 問題を理解するのに、頭の理解と、体の理解、その2つが同時に殴りかかってくる。

 煮えを切らしたシオは、俺が状況を理解し、その相手が走っていった場所へと視線を向けた時には、すでに走り出していた。

 問題の相手の姿は、俺からは既に見えなくなっているが、シオには居場所が分かっているかのように進んでいく。


---[06]---


 遅れながらも俺はその後ろを追っていくが、シオが建物の間の路地に入った時、再び悪寒が走る。

 今度は全身を風が撫でるように、前から後ろへと流れるように、その悪寒は俺の肌を撫でた。

 正直、気持ちが悪い。

 周囲の魔力が何かに影響を受けた痕跡…あるいはそのモノ、悪寒として感じているのなら、感じ取った魔力に、影響を与えた何かは良き意思が元になっていないという事だ。

「…ヒノ…カムイノミ…ケマ…ミ…マグシクラフト…セ…」

 考えすぎならそれでよし、それでも気は前へ前へと逸り、俺は足を魔法で強化する。

 急いだのはシオとの合流。


---[07]---


 しかし、こちらの焦りとは裏腹に、建物の間を抜けた先で、何事もなくシオはマントの相手を捕まえ、地面に押し倒していた。

 騎士団に入団できるだけの実力があるだけに、経験は浅くても、その力は本物の様だ。

「あ、先生」

「手際がいい事で」

 その光景に驚きつつも、剣の柄を握る左手を離せずに、シオに押し倒されたそいつの視線の先に落ちた自分の硬貨入れを拾い上げる。

 それが元あるべき場所に戻った所で、周囲を見回してみるが、何の変哲もなく人通りの少ない建物が並ぶ裏手が広がっているだけだ。

「どうかしたのか、先生?」

「いや…」


---[08]---


 地面に押さえつけられているそいつが、ぶつかってくる前に感じたモノ、ここへ来る途中に感じたモノ、それが同じモノなのか、また別の何かなのか、細かい所まではあの一瞬だけじゃ判断はできない。

 だが、どちらも好意的なものは感じられなかった。

 その場に残った残滓なのか、それともその瞬間に贈られたまだ見ぬ誰からの悪意なのか…。

『うぅ…う~ッ!』

「ち…ちょっと」

 周囲に異変が無いか、より細かく調べたい所だが、足元のそいつは我慢の限界に達したようだ。

 シオに腕を後ろに回されて、地面に倒されているそいつは、拘束から逃れようともがき始める。


---[09]---


「まぁ、こっちが優先か」

 何から調べていくべきか、それが明確になったように思うが、まずはこいつの処遇をどうするか決めるのが先決だろう。

「シオ、取られたモノは帰ってきた。そろそろ放してやれ」

「・・・そうだな」

 シオは何か思う所でもあるのか、一瞬の沈黙の後、頷いて掴んでいた手を離す。

「…かはッ…」

 すると、そいつは今まで息を止めていたかのように呼吸を荒くする。

「はぁ…はぁ…はぁ…」

「・・・立てるか?」

 息が整ってきた頃合いで、俺はそいつの手を掴んで立たせようとするが…。

「・・・?」


---[10]---


 その手は驚く程冷たかった…。

 布越しだからか…、その子がそういう体質なのか…、掴んだ手が感じる温もりは、温もりと言うにはあまりに低い、というか温もりなんてない。

 まるで人形でも触っているかのような…。

 立ち上がった子は、相変わらずフードを深々と被っているから顔は見る事は出来ないが、身長はシオと同じぐらい、掴んだ手の感触からして、温もりはともかく男らしい無骨さは感じなかった。

 身長が高いだけで、年齢が伴っていないというのなら、男の腕と言われても驚きはしないが。

 こいつが女だったとして、シオを基準にするなら、大人…というには少々背が低いし、少女というのが妥当だろう、それに…。

 華奢…、このまま掴んだ手を強く握れば、少し力を加えるだけで壊れてしまうガラス細工のように、簡単にその形を変形させてしまいそうだ。


---[11]---


 子供だろうが、大人だろうが、俺は別に悪い事をしている訳ではないけど、なんか自分が攻めているみたいで、やりづらい。

「はぁ…さて、どうするか」

 普通なら、その地区を任されている憲兵に預ける所だが…。

 ガチャンッガチャンッと、何かが散らばる音が響く。

 昨日はこの町に到着して店員のグイグイ来る集客に驚いたが、この子供?なのかどうかわからない奴といい、存外に忙しい町の様だ。

『姐さんから離れろやッ!』

 何かの散らばる音の次は、こちらに向かってくる大声と…鍋。

「ん?」

 咄嗟に、立ち上がらせるために掴んでいたマントの奴の手を離し、飛んできた鍋を叩きはらう。


---[12]---


 シオの方にも何か飛んできていたようで、一瞬だけ動きが鈍り、その隙を突いて走ってきた誰かに、マントの奴は連れていかれた。

『待てや、クソガキィッ!』

 その直後、今度は肌が黒く焼けた毛の薄い男が現れた。

 身長こそ俺より低いものの、ガタイが良く、筋肉質な姿から、鍛冶師か、それに近い職の人間だと思える。

「ああ? なんだお前らは…。あ~、昨日来た軍人達のお仲間か」

「まぁそんな所だ」

 俺は、男性に空返事で答えつつ、自身の左手に残った感触を思い出しながら、その場を去って行った2人の後姿を見送る。

 掴んでいた手を離す直後、別の何かを感じた。

 体の感触ではない、もっと別の何かだ。


---[13]---


「あんたら、ここらじゃ見ねぇ装備をしてるが…。軍の関係者ならあのクソガキ共を、牢屋にでもなんでも詰めてくれや」

 男性の方へ向き直り、俺は、それはできないと、首を振る。

 関係者…協力者ではあるが、そう言った所まで、俺達は権限を得ていないのだ。

 だからこそマントの奴を押さえた後、どうするか迷った訳だし。

 金をすられてからの、この男性の登場、穏やかな話ではないし、あの2人が善行をしてない事は考えるまでもないだろう。

「あの子達は、普段からあんな事をしてるのか?」

 そして、俺よりも早く、シオが男性に疑問を投げかける。

 シオの目はすごく真面目で、男性ひゃ一瞬だけ怯みながら頷いた。

「あいつらは「鉱山孤児」だ」

「鉱山孤児? なんだそれ」

「採掘作業中の事故であの世に逝っちまった連中の忘れ形見だ」


---[14]---


「なるほど」

 養ってくれる親を失って、生きるために選択したモノがアレか。

「どこの国にもいるんだな…。不幸な子供は」

 そう言って、シオは2人が走っていった方向に視線を送る。

「子供じゃできる仕事が限られる。鉱山に入れるにしたって、子供じゃ効率が悪くなるし、むしろ邪魔だって思う連中も多くいてな。かといって、他の町に行った所でどこの馬の骨ともわからねぇ奴を雇いたい奴がいるのかって話だ」

「子供達が可哀そうだ…」

「とにかく、あんたらじゃあのガキ共を牢に入れられねぇんじゃ、話しててもしょうがねぇ」

「確かに俺達じゃ、あの2人を捕まえる事は出来ないが、一応一緒に来た軍の連中に話はしておこう」


---[15]---


「ふん」

 あからさまに不機嫌そうな表情を浮かべ、男は来た道を戻っていった。

 話を通しておくと言っているのに、その反応はいかがなものか…。

「嫌な話だ」

 その子供達の話、俺からしてみれば、少しだけ自分に重なる部分があって、他人事として処理しにくい。

「うん。・・・先生、ちょっとお願いがあるんだが」

「問題はあったが、一応仕事中だぞ」

「まだ何も言ってない内からそういう事言うな」

「そうだな。じゃあさっきの2人を追うか」

「え…?」

「お前はそうしたいようだったが、違うのか?」


---[16]---


「ちが…違わないけど、いいのか? 仕事中だって自分で今言ってたろ」

「仕事を投げ出して追ったら問題だと思うが、ちゃんと理由があってやるなら問題ないだろう。それに、少し気になる事がある。あのマントの奴の掴んだ手を離す時、少し違和感を覚えた」

「違和感?」

「少しの変化だ。魔力が少し激しく乱れた」

「ウチはまだ魔力の制御に必死で、自分がどういう時に、どんな魔力の状態なのかわからないけど、その乱れは問題なのか?」

「わからん。別段その乱れが異常という訳じゃない。俺が、なにか引っかかるモノが残ってるような気がするんだ…」

 俺は左手を見るが、その時の違和感の原因に思い当たらない。


---[17]---


「魔力の形は持ち主の精神状態にも左右される。それが魔法の元々、原形、始まりって言われているが、それはいいとして、大人になると、精神が成長する分、ある程度の制御はできるようになる。でも子供なら少しの感情の変動で、大人以上に魔力が乱れる事は少なくない」

「じゃあ問題ないんじゃねぇのか?」

「そうだったらいい。俺の杞憂だったって事で片が付く。でも、その乱れ…変化は、そう言ったモノとは違う気がする。…そうだな。近い状態がなんなのか例えるなら、アレは魔法を使う直前の魔力の高ぶりに近い」

「それじゃあ、さっきのマントの子は、魔法を使おうとしてたって事か?」


---[18]---


「わからん。だが、身長で年齢を予想するとして、シオと同じぐらいだとするが、お前は半人前も半人前だとしても、それでも魔力を制御する事ができるようになってる。さっきの奴が魔法を使えたとしても、変じゃない。俺の住んでた村を基準にするなら、そもそもジョーゼはお前達よりも魔法や魔力の扱いに長けてるし、シオぐらいの年齢は、村からしてみれば、魔法を普通に使えるようになって、それが未熟なまでも成人して、正式に魔法使いと認められるぐらいだ」

「じゃあ、ほんと何が問題なんだっての」

「なんなんだろう…な」

 自分から話を切り出しておいて、説明ができない。

 漠然とした微かな感覚、その手に残っている感覚がなんなのか、俺はわからなかった。

「悪い。今はあの2人を探す口実とでも思っておいてくれ。魔法使いが少ない国だ。それでさらに子供が魔法を使う事に違和感がある…て建て前なら、調査として動ける理由にもなるだろう」


---[19]---


「別に…、ウチは構わないけど」

「そうか」

「じゃあ、まずは情報収集だな。魔法が絡んでるって可能性を強くできれば、あいつらを追う許可が下りやすくなる」

「随分とやる気だな」

「うっさい。いいから行くぞ」


「とういう訳だ」

 町の方でその2人の事と、最近この町ないしはその近辺で問題は起きていないか…を聞いて回り、それを譲さんへ報告した。

 まぁ動機はどうであれ、目的地の見えない課題を熟さなきゃいけない身の上である以上、気になる事は片っ端から調べていく必要があるという事で、譲さんの方もその報告には納得をしてくれたようだ。


---[20]---


「実際の所、面と向かってそいつらと話をするか…、手荒になっても接触してみない事には始まらないが」

「私達の目的の一つはこの国の杭の問題を調べる事ですから、問題があるかも…と来た場所で変化が起きているのなら、調べる価値はあると思います。それで、その子供達の件はどの程度わかっているのですか?」

「この町ではその子供達を鉱山孤児なんてて呼び方をしているらしい。孤児達は廃坑を根城に生活しているみたいだ」

「その子の内の1人が魔法を使おうとした…と」

「正確には魔法を使う時の魔力状態に近い状態になった…だな。ほんの少しの間で、俺の間違いって可能性もある。だが、町の人間の話だと、最近になって盗みをする頻度こそ変わらないが、その時の連中の動きというか力が強くなっているみたいな事を話していた。最近捕まえられずに良く逃げられるんだと」


---[21]---


「子供の成長は早いですが、この場合短期間で力を付け過ぎているといった所ですか」

「人によってばらつきはある。孤児の全員が全員そうではないらしいが、力を付けている奴らによっても強さが違うとか。大の大人が力負けしたって話もある」

「子供に負けたと素直に言えない人が、大きく話を誇張していないのであれば、注意すべき話ですね」

「そうだな。なんだかんだ力に自信のある人間が多い国だ。本当に大人に力で勝っているのなら、本当に魔法を使っている可能性が高い。とまぁ、その話に関してはこのぐらいだ。…譲さん達の方はどうだ?」

「私達の方は、坑道の方へ行こうと思っています。なんでも採掘を進めていく中で、広い空間に出たとか。自然にできた場所にしては不自然な点も多く、出来ればサグエさんについて来てほしかったのですが…」


---[22]---


「広い空間…か。それだけだと何とも言えないな。でも…、不自然な点が多いっていうのは気になる」

「鉱山孤児の件は、調査を進めて様子を伺う所でとどめて、サグエさんはこちらに合流してもらえますか?」

「・・・その方がいいかもしれないな」



「という訳で、ウチらで子供達の調査をするぞ」

 仲間3人に向かって、ウチは胸を張る。

「はい。頑張りましょう」

「ほどほどに頑張ろう」

 ウチの号令に返してくれたのは、アレンとフォーの2人、もう1人は、いかにも不機嫌…嫌そうな顔をして、腕を組みながらそっぽを向いていた。


---[23]---


「ちょっと、ちゃんと聞いてたか?」

 自分よりも頭1個分以上身長の高いセス事セ・ステッソ・フォルテに、ウチは向き直る。

 返事をしろと言うつもりはないけど、隠す事なく嫌そうな表情を浮かべている事に腹が立つ。

「あ? 聞いてるっての、うるせぇな…。アイツから指揮を任されたからって、調子乗んな下の出が…」

「む…」

 ブレないというか、もうそれを言うのが当たり前のようになったこいつの罵倒。

 兵学院にいた頃ならいざ知らず、騎士団に入団したのだから、あの頃のように挑発にも等しい言葉に乗らない様にと、感情をウチは押さえ込む。

「セスっちは相変わらず協調性がないな」


---[24]---


「師匠からの任務ですから、いがみ合わずに協力していきませんか?」

「フンッ…。てめぇらと群れて何かをするなんざごめんだ。こっちはこっちでやらせてもらう」

 そう言って、セスはその場を去って行く。

「相変わらず素直じゃないよねぇ、セスっちは。ねぇ、アレっち?」

「あれは素直かどうかの問題なのでしょうか…。でも、一緒に行動しないだけで、彼は彼で任務に当たってくれると言っているので、僕達は僕達で、師匠からの任務を進めて行きましょう」

「アレっちはアレっちで凄く前向き思考だ。良い、良いと思うよ、その思考。さぁシオっち、セスっちは言い方は悪いけど、やる事はちゃんとやる子だ。・・・たぶん。だから私達は私達でやっていこうじゃないか」


---[25]---


「・・・そうだな。ムカつく自己中は放っておくに限る」

「シオっちもなかなかに言葉が汚い。でも、いつも以上にやる気になってるみたいで何より何より」

「じゃあ、まずは子供達が住処にしている場所が何処なのか、もう少し聞き込みをしよう」

「隊長先生との聞き込みの時に聞かなかったの?」

「なんでも、廃坑になった坑道が少なくないらしくて、良い情報は何もなかったんだよね。今はちょうど昼時で、坑道に入ってる人達も戻ってきてるから、むしろ今の方が有力な情報がもらえるかも」

「なるほど、坑道の方に行っている人達なら、廃坑の事にも詳しいと思いますし、僕はそれで良いと思います」


---[26]---


「私は~、正直動き回るのはちょっと…」

「そう言わず、頑張りましょう、フォーさん。師匠にも頼まれたのですが、良い機会だから、フォーさんにはいつも以上に頑張ってもらえと」

「・・・本気? いや、隊長先生の事だから、きっと冗談で言ってると思うんだけど…」

「いえ、師匠の目は真面目でした」

「え…ええぇぇ…」

「それじゃ、ここで話してても仕方ないし、行こうか。フォーが頑張ってくれるみたいだから、期待してるよ」

「シオっちまで…勘弁して…」


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