愛が足りない

つぶやき先輩

第1話

(ねぇねぇ遥、今日カラオケいこうよ)   またカラオケかよと思いつつ       (どんだけーどんだけカラオケ好きなの)とIKKO の真似をして答える。       (ごめん今日は彼氏と合う約束なんだ。)  (あ、例の、冴島君、彼超イケメンだよねー、背、高いし、うらやましいなー)   (紹介しよっか)             (え、何で?付き合ってるんじゃないの)  (もう別れた。)             (えー何で、あんなイケメン君、もったいない、私に下さい)敦子は両手を広げ、チョウダイのポーズをする。遥はその手を叩く。(だって無理やりやろうとするから。男って、皆、そうなのかな。)       (ホントそう。お前らは猿かっ、てっ言いたいよね)                   (じぁあ今日合う彼氏って、もしかして新しい彼氏)               (そう)                 (いいよね、遥は背高いし、おっぱい大きいし、スリムだし、おまけに今流行りのロリ顔だし) 遥は、笑ってごまかす。     (じぁあいいや。今日は彼氏と遊んでらっしゃい。その代わり今度は付き合ってよ。)  (了解しました。)遥は、敬礼のポーズをとる。敦子が去って、遥は遠い目で校庭を見る。                家に帰った遥は着替えを済ませ待ち合わせ場所にいった。たまに町行く男の視線が遥を見る。遥は、その視線の意味を気づいているが、気にしないように歩く。駅近くのドンキホーテに着いた。向こうから小走りで男がやって来た。              (遥ちゃん、ごめん、まった?)      (いえ、いまきた所です。)        (じゃあ、飯食いにいこうか。)      合田は20才の、IT関係の会社に努めている男だ。二人は居酒屋に入っていった。   (ご注文は何になさいますか。)      (じゃあ、とりあえずビール2つで)    (私、ビールはちょっと)         (大丈夫大丈夫、少しだけだから)     (じゃあ、少しなら)     合田は話し上手で、酒を飲まそう飲まそうとしてくる。遥も抵抗しつつも、少しづつ少しづつ、酒の量は増えていった。店に入って30分もした頃、合田の携帯がなった。(ごめん、ちょっとトイレいってくる。)(はい)先ほどからトイレを我慢していた遥も、合田がいった後、少ししてトイレに向かった。    (遥ちゃんだよ。遥かちゃん、)男子トイレから合田さんの声が聞こえる。         (もうすぐ落ちるから。今、酒一杯飲ませてるから。JK とやるの久しぶりだぜ。)  その言葉を聞いた後、遥はトイレに行かず店を出た。                 (だから、男ってやつは)         このまま家に帰っても、腹の虫がおさまらない。遥は、フラフラと歩いた。     (よー君可愛いね。今から遊びに行かない。)またナンパか、慣れている遥は無視して歩こうとした。すると急にその男が立ちふさがり、体ごと遥を路地裏へひきづっていった。(声を出すと殺すよ)遥は地面に叩きつけられた。恐る恐る顔をあげると、男は三人組で、一人はナイフを持っている。私の人生終わった、と思ったときだった、        (お前らそこで何してる)        (誰だお前、なんだガキか、ガキは家で寝てろ)    (その人は僕の知り合いだ。警察呼ぶぞ。)知り合い?よく見ると同じ学校の生徒のの山田だった。            (警察、読んで見ろよ。その前にお前殺すぞ) (ウオー)山田が突っ込んで行く。男はそれをよけ、腹に膝げりを打ち込む。(うっ)山田のうめき声が漏れる。後は袋叩きだった。(ハアハアハア)ガキが調子乗るからこう言う目に会うんだ。  遥は怯えて一歩も動けない。ナイフを持った男が遥を見て近ずきながら(さて、本番だ)といった、遥は叫ぼうとしたが、それを察知した男が(黙れ)と言って、ナイフを突きつける。じょじょに三人の男が近づいてくる。            (ま、まだだ、まだ死んでねえぞ)山田がゆっくりと立ち上がる。          (くそが、邪魔しやがって)またも袋叩きにあう。一人の男のパンチがこめかみにヒットする。とたんに山田は倒れこむ。目は白眼をむいていた。               (おい、ヤバイぞこれ、白眼だぞ、こいつ、全然動かねー) (おい、ヤバイぞ、逃げるぞ) 男たちは急いで走っていった。遥が近寄る。(山田君。山田君。)        (うっ、うう、あいつらもういった?)   (大丈夫なの、山田君)  山田は少し笑って(必殺、死んだフリ)           (よかった。死んだかと思ったじゃん) 遥の目から涙がこぼれた。         (どうする、警察呼ぶ。)   山田は少し考えてから(青木さん、お酒飲んでるでしょ、お父さんに怒られるよ)  (でも)遥はチラリと殴られた所を見る。          (ああ、自分なら大丈夫。母親が看護師だから。女の子守る為についた傷っていえば、喜んで治療するから。)          (うん)    (さてと、駅まで送るよ。またあんな奴らがいたら大変だからね。)   (ありがとう)              二人は一緒に駅まで帰った。言葉はなく終始無言だった。(じゃあ、ここで)      (あ、ちょっと待って)ふいに遥の唇が山田の頬に触れた。(ありがとう)そういって、遥は駅に向かって走っていった。    山田は呆然と遥を見ていた。                   一週間が過ぎた。あれから二人の間に進展はない。が遥は、いつも校庭や、廊下や、体育館に行くとき、山田の姿を探していた。                     二人が付き合うか付き合わないかの進展は読者の想像にお任せします。ただ遥は、山田のおかげで少し愛がなんなのか、わかったようです。貴方は素敵な人に出会いましたか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

愛が足りない つぶやき先輩 @hirokazu2

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ