目覚め
誰かに、いやナニかに起こされ目を開く。
それは眠りから覚めるような感覚ではなく、いつのまにか起きていたという様な感覚であった。
廃人になった、若しくは発狂した。まぁ、言い方に差はあれど、一度はおかしくなった俺が、こうして普通に起きる事に異常な事だと感じつつ、相も変わらず真っ白な世界に辟易しながら、周囲を見渡し、俺を起こしたナニかを捜す。
ソレはすぐに見つかった。見ればすぐにわかった。
この真っ白な世界の中で灰色のが丸い球状のものがふらふらと宙に浮いていた。
「ようやく起きたみたいだね。この寝坊助め!まぁ、普通の神なら怒るかもしれないけど、僕は心が広いから許してあげるよ。」
ソレは恩着せがましい言葉を吐きながら点滅していた。
声は男にも女にも、老人にも子供にも聞こえ、何というか、聴いていると怖くなる、そんな声だった。
先ほどの発言から俺を起こしたのはコレなのだろう。
いや、先ほどの発言からするとコレという言い方はまずいな。おそらくこいつは神もしくはソレに類する何かなのだろう。
なら、ここは下手に出るのが得策か。
「申し訳ありません。どうも私は先程まで狂っていた様でして、あなた様が私を起こしてもらった様で深く御礼申し上げます。」
「うんうん、そうそう何かをして貰ったらまず感謝だよねー。
この前会った奴はそこを分かっていなくてね。イラっとしたから殺しちゃった。」
「こ……殺したとは一体……」
「うん?だから殺したんだよ。君達が蟻を踏み潰す様にプチっとね。」
ヤバイ、この神は人を簡単に殺せる奴なのか⁉︎
警戒していて正解だったが、余り長く話していると危険だ。
「まぁ、そんな話はど置いといてまず君について話そうか。
君の疑問にも答えるかもしれないけど、期待はしないでね。」
「はい!」
「うーんいい返事だね。元気でよろしい。
さて、まず君がここに呼ばれた事について話そう。事の発端はある女神からの要請なんだ。
その女神は君が住む世界とは違う世界を管理しているんだけど、どうも最近かなりヤバイ魔王が生まれたみたいでね。
普通の魔王なら自分の世界の住人達で何とかなるけど、今回の魔王は歴代最高の強さを持つみたいで、どう頑張っても世界が滅ぶ未来が来るそうだって。
そこで女神は他の世界の住人を呼び、勇者として戦ってもらうことにしたんだ。
で、僕の世界から人を呼ぶ事になったんだけど、この話にはまだ続きがあってね。
呼んだは良いものの勇者は力しかないからそれを支える人を重ねて要請が来たんだ。
本当はそんな要請は面倒くさいから断ろうとしたんだけど、上に話をつけていたみたいで渋々やらされたんだよ。
で、サポートする人は計20人くらい集めたんだけどね。僕はその時、女神に対してかなりキレてたからその20人を適当に世界にばら撒いたんだよね。
そしたら結局5人しか今、生きてないんだ。
そしたら話がちがうと抗議して来てね。勿論僕も反論したよ。ちゃんと20人送ったよって。でもねそれに納得しなかったらしく、かなりキレていたよ。そんな言い争いを見かねた僕らの上司が仲裁に入ったんだ。で、結局予備としてもう1人つまり君を送る事になったんだ。ここまでに質問とかある?」
「えっと、私が呼ばれた理由は分かったのですが、なぜ私が選ばれたのでしょうか?言ってはなんですが、私には特別な才能はありませんし、これといって特徴はありませんし。」
「別に、そこら辺は気にしなくて良いよ。どれだけ才能があっても意味ないしね。」
「意味がないというと?」
「それはね、死体を再利用した体に君の魂を移すからだよ。」
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