第7話 ファイティングポーズ

 私がかつて受けた研修の講師が余談でこんなことをおっしゃっていた。


 アメリカでは日本みたいにアポ無しで飛び込み営業をやると不法侵入で捕まりかねないらしく、場合によっては射殺されても文句が言えないのだという。そのため電話でまず商談を持ちかける必要があるとのことであった。しかしながら門前払いを食らわされることも多々あるわけで、それが何度も何度も続くと心がポッキリと折れてしまう。


 この時の立ち直り方法として、「がんばるぞ!」とか「やってやるぞ!」とか叫びながらファイティングポーズを取るのだと、講師がかつてアメリカでビジネスマン向けの研修を受けた際に教わったと言うのだ。


 実際にやっているのかどうか知らないが、オフィスの一角で凹んでいるビジネスマンが己を奮い立たせるために「負けないぞ!」とファイティングポーズしているのを想像してみるとかなりシュールである。しかし失敗してもへこたれずに立ち向かう、という姿勢は競争著しい社会のアメリカでは必須のスキルなのかもしれない。少なくとも日本よりは立ち上がるチャンスなんかいくらでも与えられているのだから(とはいえ個人的には日本より理想的な社会と思えないですが)。

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