第5話 お前らそれでも地球人か!

 動物園から車を停めてある駐車場に行く途中のことだった。足元の視覚障害者用の、凹凸の付いた黄色いブロックに目がいった。黄色い道と言えば黄色い道だ。

「ルフォンさん。黄色い道ってこれですかね」

 ルフォンさんは、足の裏で視覚障害者用ブロックをさすった。

「これなのだろうか」

 二人で黄色い道の上を歩き始めた。

 しばらく進んだところで、ルフォンさんが立ち止まった。

「他の部分も解き明かさないと、どこにもたどり着けそうにないな」

 僕も歩き出す前からそう思っていたが、言葉には出さなかった。

 ルフォンさんはそう言いつつも、黄色いブロックの道を歩いて駐車場に向かった。

コンビニエンスストアの前に、若者達がたむろしていた。ちょっとやんちゃな感じの若者達だ。

 その中の一人がゴミ箱に何かを捨てた。

 それを見たルフォンさんは、無言で若者達に近付いていった。

 なんだか嫌な予感がした。ルフォンさんに声をかけようとしたが、すでに若者達の前まで近付いていた。

 若者達は、ルフォンさんの姿を見て、会話をやめた。

 ルフォンさんは、若者達の横を通り過ぎ、ゴミ箱に手を入れた。燃えるゴミの中から出てきたのは、空き缶だった。その空き缶を若者たちの方に突き出しながら言った。

「ゴミの分別はきちんとしような」

 若者達は、一瞬黙レリくったが、すぐに顔に怒気を浮かべ始めた。

「何だてめえは。変な格好しやがって。やられてえのか宇宙人」

 詰め寄ってきた若者達に、今度はルフォンさんが怒り始めた。

「お前ら、それでも地球人か!」

 その言葉に若者の一人がルフォンさんに殴りかかった。

 ルフォンさんは難なくかわした。というか、若者は勝手にパンチを外して、自分で体勢を崩し、アスファルトの地面に転がった。

 次の若者も怒鳴りながら殴りかかったが、ルフォンさんに触ることも出来ない。ルフォンさんは何の動作もせず、ただ立っているようにしか見えないのに。

「地球人のパンチじゃ、俺は倒せねえなあー」

 若者は肩で息をしながら後ずさりした。

「何だお前は。俺はやくざと知り合いなんだからな」

 こっちは、やくざだけどな。さすがにこんな格好のやくざなんて、いるとは思わないだろう。

 ルフォンさんは、何も答えず、空き缶を突き出した。

 若者は、最初何をされているのか良くわからなかったようだが、空き缶をゆっくりつかみ取り、ゴミ箱の空き缶のところへ捨てた。

 ルフォンさんはそれを見て、こくりと頷いた。

 この宇宙人は、地球環境を心配してくれているようだ。


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