3
やることを済ませた男の人が、自分のを抜いて淡々と後始末を始めた。
その手にそっと縋りついて、あたしは尋ねる。
花売りを終えた後に決まって聞く、いつもの文句。
「おはよう。よく、眠れた?」
お得意様のその男の人は、なんでもなさそうに答える。
「ああ、よく眠れたよ」
それを聞いて、あたしの胸に1つ、温かなものが下りた。
__ああよかった、この人はちゃんと満たされたんだ、と。
くたり、とあたしが何とか起こしていた体が倒れる。
何せ男の人たちは、その衝動を必死にあたしにぶつけてくる。
満たしてくれ、潤してくれ、と苦悶の表情を浮かべながら。
だからあたしは毎回こうやって倒れてしまうのだった。虚弱な体が恨めしい。
こんなんじゃ、この人に気を遣わせてしまうかもしれないじゃあないか。
「平気かい」
ああほら。この人はこんなところで花を買っているけれど、中身はとっても優しいのだから。
カウンセラーをやってるという男の人が、あたしをそっと支えていた。
普段は弱った女の子たちのことを癒してあげてるくせに、こういう時は弱った女の子に縋っているのだから、まったくもって、この人もひどくいびつだった。
「平気です、いつものことですから」
あたしがそう言うと、男の人はため息をつく。
「全く、君のような女の子がここで働くものじゃない。体も弱いのに」
体も、というあたりが随分な皮肉だ。まるであたしの心まで弱いみたいじゃないか。
弱いのは、縋りたくて縋りたくて、飢えて飢えて仕方ない、あなたたちだろうに。
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