第60話 式神仲間
やがて白蛇の体から白い煙のようなものが発生する。
それは住宅街を覆うように広がり、月明かりと黄龍から発する光を遮っていく。
霧のような白い煙が徐々に晴れてくる。
路面の陥没の痕には白蛇の頭部はなく、胴体も消えていた。
上空を見上げると、2匹の龍が星空の中を楽しそうに泳いでいるのが見えた。
魔物には死という概念はない。
白蛇は魔界へ還ったか、あるいは――
「智恵子、怪我はない?」
「うん、うちは大丈夫だけど……」
智恵子は誰も住んでいない家の庭先に隠れていた。
路面に着地した二人に近寄ってきたのだが、智恵子は目を丸くしていた。
「佳乃ちゃんこそ大丈夫なの!? 服に血が付いているじゃない!」
「えっ? ああ、これは庸平の口から出た血だから――」
と言って、はっと気が付いたように――
「庸平、あなた大丈夫なの!? 口から血が垂れているじゃないの!」
「ああ、これは黄龍と佳乃に体当たりされたときに口の中を切ったんだ。若干、内臓もやられているかもだけど……」
「ひええええ――、だめじゃん庸平、早く手当をしなくちゃ! 赤鬼さんはどこ?」
慌てふためく佳乃をじっと見つめる庸平。
その視線に気づき、
「な、なに? 私の顔に何か付いている?」
「お前……佳乃本人か?」
「えっ? 私は私だけど……何なのよ?」
戸惑う佳乃。
庸平は視線を外さずにじっと見つめている。
「佳乃は今、白虎に憑依された状態なんだろう?」
「う、うん……そうだと思うけど……?」
佳乃は手を広げ指先に力を込めてみる。
すると、爪がシャキンと伸びた。
「なのに意識がはっきりしている。戦闘中もそうだったよな?」
そう。
これまでの佳乃であれば、白虎に憑依された瞬間に意識を喪失していた。
いや、意識はあったのだが、それはあくまでも白虎の意識を通して映像を見せられているような感覚だったのだ。
「あっ……本当だ! どうして私こんなに意識がはっきりしているの? あれれれー!?」
伸びた鋭い爪を引っ込めて、頬に手を当てて天を仰ぎ見る佳乃。
「それはな、白虎の奴がお前に気を許し、信頼している証拠だな。良かったな小娘。お前は白虎に式神仲間として認められたということでもある」
赤鬼が甲高い声で解説した。彼は隣家の門の上に腰をかけていた。
「私が式神仲間として……認められた……? そうなんだ。白虎さんが……」
佳乃は胸に手を当てて嬉しそうに呟いた
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