第43話

すると何か聞こえてきた。


ずるっ ずるっ


何かが這いずっているような音だ。


それがこちらに近づいて来る。


「おい、木本か」


ずるっ ずるっ


「おい、木本だろう。俺だ。上条だ。何か言えよ」


ずるっ ずるっ


音は玄関の前で止まった。


そこに何かがいる。


おそらく木本だ。


「木本」


そう言うと、上条はドアに耳を当てたままで待った。


すると地の底から呻いているかのような声が聞こえてきた。


「吸鬼……様あ」


声はそう言った。


「木本」


返事はなかった。


ずるっ ずるっ


再び何かが這いずるような音が聞こえてきた。

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