第269話メインヒロイン

ホント、困った女の子たちだこと。


「だったら、全員で左手にしがみついたら?」


おれからしたら、全員がメインヒロインなわけだし。


「でもな、そんなにしがみつけるの?」


オリヴィアが嫌そうな声で言う。


というか、そろそろ俺から離れればいいのに。


「俺が腕を伸ばすから、みんな手を重ねればいいんだよ。これで全員がメインヒロインになれる」


「おもろいなあ。いっそのこと、特例で重婚でもさせてくれたらええのに」


面白そうに言ってるが、それやったら先輩の評判が下がると思うぞ。


「できればわたくしは一人を選んでほしいのですが」


「そういうわけにはいかないんだよ」


全員が平等。


「残り二人もいい?」


「私としては、何の問題もありません」


「私もだ」


「よし、やっと鐘を鳴らせるぞ」


俺としてはただの願掛けなのに、女の子は変にこだわっちゃう。


俺は言った通り左手を伸ばした。


5人のメインヒロインの、合計で10の手のひらが重なる。


俺は顔を傾け、女の子たちを見た。


誰もが個性的で、魅力的な美少女である。


「ハーレムの成就を願って」


そう言って俺は、右手に持ったひもを引いた。


きれいな鐘の音が響き渡る。


俺はこの音を聞きながら、この関係がいつまでも続くことを祈った。

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