第249話機会

「以前言った、メッセージを届けてくれるのは、ちゃんとやってくれるのか?」


真剣なまなざしで、俺を見てくる。


「それねえ」


たまらず首をそらす。


勢いで言い放った感がありすぎるが、確かに俺はあの日そう約束した。


当然だが、孤児院の場所は知らないし、ロシアに行く予定すらもない。


そもそもだが、俺って勝手に国外に出ていい立場なのだろうか?


「お前のほうから言ったことだぞ」


「そうだな」


誰に強制されたわけではなく、自分の意思である。


おぜん立てされてデートしたような気もしているが、他人のせいにはできないだろう。


「機会があったら、やるってことでいいんじゃないのかな?」


そうやってお茶を濁す俺。


自分でやって思ったが、これは悪手だろうな。


「それはいつになるんだ? お前にいい姉と言われて、本当に救われたような気になれたんだぞ」


「そう言ってくれるのは嬉しいんだけど……」


予想に反して、サーシャは洗脳されてるわけではなかった。


だが、これはこれで十分対処が難しい。


というか、現状の俺では何もできないのだろう。


「いつかね。その日まで待ってください」


「やっぱりそれがお前なんだな」


そう言ってサーシャは立ち上がり、部屋を出て行った。


「今日はこれで終わりのはず。さっさと寝よ」


明日もこの個性的な女のこと、関わらないといけないわけだしな。

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