第213話博打

「ようは、吹いたら本当に飛んでいきそうな状態だと」


話して分かったのは、2人はあまり強くないということであった。


魔女としての強さは、”血の濃さ”とも言うべきなのだろうか?


強いマナ資質を持つ男を迎えれなければ、世代をまたぐたびに弱まっていくのは道理。


両方とも弱体化が続き、個人経営にような一族になり果てているとか。


当然だが、資産などあるはずがなく貧乏。


貴重な資金を交通費にして、俺のところにまで来てくれたらしい。


「あなたが一般人に近いということもあります」


武士のほうがそういう。


どうやら、親近感を抱かれているらしい。


「それで、2人の一族を吹き飛ばしかねないのが、先輩の従妹というわけですね」


「さよう。某らはあまり重視されていないのだ」


悔しさをかみしめるような声である。


「まあ、しょうがないでしょう」


吹いたら飛ぶくらい弱い連中を、ほかの仲間と同格に置くことはできないだろうし。


顔も見たことがない先輩の従妹も、間違った判断をしているわけではないだろう。


「だが、ほかの一族が優遇されたら、私たちに入る隙間がなくなってしまいます」


武士のほうが言う。


そんなこんなのため、今の関西は賀茂家の後継者争いが注目されてるとか。


「上手く勝馬に乗れたらいいですね」


あれだけ体を張って世界中から感謝されてるし、できれば先輩に後継者になってほしい。


だが、負けた場合は先輩に協力した存在は皆、反逆者のような扱いを受けるのではないのだろうか?


と思って話を聞いてみたら、両方の一族とも何もしなければ近い未来に淘汰されるので、ここで博打を打たざるをえないようである。


「一応、どういうことか理解できました」


とはいえ、俺の手で簡単に解決できない問題であることは明確である。


さい先を思い、俺はため息をついた。

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