第200話当日

「サークル、アルス=マグナや。初参加やで」


何とか締め切りに間に合った俺たちは、販売イベントの会場にいる。


イベント開始前の今は、隣り合ったサークルに挨拶をしているところだ。


外国籍の比率が多く、美少女だらけの我がサークルである。


イベントが始まってもいないのに、会場の中で浮いている気さえしてきた。


サークルの名前だが「オタクたるもの、オカルトに詳しくないといけない」と言う意味。


「今はひよっこでも、いつか神クリエーターに」もかかっている。


人間が神の領域に近づくための、秘術のことであるからだ。


「やっぱり、自分の魔法が好きなんじゃないの?」


錬金術師をジト目で見るもうひとりの金髪魔女。


「前にも言ったけど、おかんに叩き込まれたものを使ってるだけやで。薬師であるあんさんも、似たようなことをするやろ?」


「もしもの時に役に立つしね。薬は大事だよ」


何故か吐き捨てるような言い方だった。オリヴィアの気にさわることだったのか?


「不快な思いにさせてすまんな。それはそうと、みんな売り子の服が似合ってるで。それだけで、ウチはこの企画を進めてよかったと思ってるんや」


俺とサラさんが同人誌を作る傍ら、ほかのメンバーで服をデザインしていた。


そもそものコンセプトが「美少女で客集め」であるため、衣装にもこだわったのである。


サラさん本人も含め、5人の特徴に合わせて微妙にデザインを変えたりした。


俺にはそこまでする必要はないように思えたが、そこは言い出しっぺのこだわりであるとか。


完売できない場合、どこぞの御曹司としないとの結婚を強制されるため、気合が入っているのだろう。


単純に、美少女に似合った服を着せたいだけかもしれないが。


当然だが、俺の目の保養にもなっている。超かわいい。


「何故私まで?」


しぶしぶと売り子服を着たサーシャは嘆いている。


氷魔法に合わせ、青色のチェックの服だ。


「まあまあ、似合っていると思うよ」


オリヴィアがなだめる。


こちらは売り子服は、金に近い黄色のチェック。


「もうすぐ開始やで。気を引き締めや」


こうして、いろいろな意味での決戦がスタートした。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る