第190話訪問者

登場こそ異常であったサラさんだったが、意外にも受け入れられ、周りになじんでしまう。


様子を見に来た先輩に抱きついたり、美少女への熱い視線で嫌がられるくらいの騒ぎしか起こしていない。


厄介な存在を抱え込んだと思っていたが、意外な結果に拍子抜けである。


とはいえ、追ってくるだろう親族はいつ現れてもおかしくない。


波乱の幕が開けるのだろう。




そんなことを考えていたある日のことだ。


正式な訪問者として、ホーエンハイム一族の者が来たらしい。


確認していないが、彼女の父であるとか。


サラさんの友人はよしか先輩しかいないゆえ、関係のある場所に捜査の手が伸びたのだろう。


俺たちは抜きにして、サラさんと直接話し合いたいといったようだ。


だから、個室でサラさんと対面してもらっている。




「やはり来たな、おとん」


ウチことサラは、予想通りの訪問者に呆れていた。


おかんは予想を外さへんな。


「姉やんの修行は順調か? 将来は一族を背負って立つ人材やからな」


おとんをからかうような言い方をしてみる。


姉やんはウチより年上ではあるが、魔法の才能は劣っていたのや。


「順調だとも。お前が心配するようなことじゃない」


「そか、それはよかった」


本当は順調じゃないだろうと思いながら、ウチは納得したフリをした。


「おかんに言われて、連れ戻しに来たんやろ? 嫁に命じれないと娘に文句さえ言えない立場で、恥ずかしくないんやろうか?」




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