第174話回想④

ある日のこと。


境内に誰も来ない時間をねらい、私はかずきくんと、おいかけっこをします。


背中をめがけて、私は走り続けました。


私はバランスを崩して、足をすりむきます。


「痛い」


泣こうして気がつきました。


さわぎになれば、かずきくんがいることがバレてしまいます。


「だいじょうぶ。ばんそうこうは持っているからはるよ」


かずきくんはきずの手当をし、私をおぶってくれました。


「さくらこちゃん。実はぼくには兄弟がいないんだよ」


それはなんとなく、わかっていることです。


「だから、さくらこちゃんみたいな妹がいたらうれしいなって思っていて」


「私も、かずきくんみたいなおにいちゃんがいたらいいと思っていたの」


これはいつも閉じこめられていた、私の気持ちです。


「だったら、ぼくたちは兄妹になろう」


「うん。おにいちゃん」




その何日かあとの夜のことです。


声が聞こえてきたので、家の中で誰かがさわいでいるのだろうと思いました。


気になった私は、その場所にまで行ってくわしく知ろうとします。


「だから、さくらこちゃんに会わせてくれ」


「え? この声って」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る