第173話回想③

寝る前に、私はあの男の子について考え続けました。


境内に迷い込んで、私を楽しませてくれたあの男の子。


「かずきくん、また来てくれるかな?」


そんなことを考えていたせいで、なかなか眠りにつけません。


しかし心配をよそに、かずきくんは何日か置きにやってきて、私を楽しませてくれました。


見つかると追い出されてしまうため、毎回ひやひやします。


そのたびにかずきくん自身の話や、友だちなんかのことを聞きました。


「できればその友だちとも会いたいなあ」


そういった後、かずきくんは何人かを連れてきてくれました。


人が増えると目立ってしまい、入り込んでることがバレてしまうので、1回だけでしたが。


家族やお手伝い人としか話したことのなかった私は、知らないものをたくさん見れます。


かずきくんのおかげで、楽しい日々。


「ここの神社の桜は、きれいな花をさかせるの。かずきくん来年はいっしょに見てくれる?」


境内にあるご神木の前。


勇気を出して、かずきくんにお願いしてみました。


「え? もちろんだよ。ぼくも桜子ちゃんと見れたらうれしいし」


うれしいことに、かずきくんはこう言ってくれます。


「じゃあ、やくそくしよう。絶対にいっしょに見るって」


「うん。やくそくする」


私はとてもうれしかったです。

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