第172話回想②

どうやらその男の子は、近所に住んでいるようでした。


両親の仲が悪いため、家にいたくなくないとのこと。


悪いことなのでしょうが、そんなかずき君が少しうらやましく思います。


「私なんて、ここから出れないのに」


「どうして?」


「周りから止められているから」


誤魔化すこともなく、私は本当のことを言いした。


「いいじゃん。勝手に出ちゃおうよ」


かずき君の言葉に、私は心がゆれました。


「でも、お母さんのいいつけをやぶるのは」


うらぎるようで、心がいたくなります。


「じゃあ、ぼくがここに来るってのはどうかな? きみがここから出るわけじゃないし、いいんじゃない?」


「それは……」


本当は、ここには他人が入ってはいけないんです。


そういって断るべきだったんでしょう。


「それなら、私が出ることにはならないから、いいと思う」


こんなことを言ってしまいます。


友達もいなく、周りをうらやましいと思っていた私は、この男の子にまた来てもらいたかった。


「またくるね。約束する」


私は隙間から出ていく男のを見送ります。


「ぜったいに来てね」








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