第176話回想⑥

その夜、私は泣かないでいれませんでした。


「かずきくん、せっかくお兄ちゃんになれたのに」


いつか会えると言われても、何年もはなればなれ。


これからはみまわりもきびしくなり、目をぬすんで会うのもむずかしくなるでしょう。


「どうしてこんなことに?」


かみさま、私がいったいなにをしたんでしょう?


だれも来なくなった境内で考え続けます。




その少しあと。


異世界化というものにより、世界はかわってしまいます。


一族もまきこまれ、私もおまけのような扱いでマナ検査をうけました。


まさか、魔法の才能があるなんて、思いもしませんでしたが。


それからの日々は、あっという間です。


親元から離れ、一族の本拠地での修行の日々。


適性に見合った実力を身に着けるため、必死で魔法の訓練を続けます。


つらい時に考えるのは、もちろんあの少年について。


彼への想いは、膨らむばかりです。


一族の代表であるおばあ様からも、実力を評価してもらいました。


いくら実力主義とはいえ、人間である以上嫉妬もされます。


傍流にすぎない私は、嫌味を言われることも多々ありました。


胸をはっておにいちゃん、いえ一樹お兄様と再会するため、必死に耐え続けます。


仮とはいえ、代表の座を渡されるとは思いませんでした。


そして現代にいたります。




「再会した果てが、こうなんですよね」


あの時とは、何もかもが違うのでしょうか?



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