第130話秘密

「エミリー、それはいけない」


俺たちよりも年上の副官の声が、仮想空間に響いた。


「止めるな。今の私は気持ちを抑えれないんだ」


米国の魔女の装備が変わる。


「ヘクトパスカル、コーリング」


濃い紫色の装甲を纏い、手には大きな筒を持つ。


一瞬槍かと思ったが、穂先がとんがっていない。


「斧だ」


AAなしでは絶対に人間が持てない大きさであるのに、マニュピレーターが器用につかんでいる。


「仮想世界だから?」


現実ではこんな斧は使わない?


「違うよ。これが本当の私さ」


「今までの装備は、偽物だったのか?」


「それも違う。魔女には秘密が多いから」


一族の秘技は、簡単に見せれないのか。


「だけど、披露しちゃっているじゃない」


「ノープロブレム。技の射程や威力までは再現していないからさ」


ヴァーチャルでは、そこら編はあいまにされているらしい。


「だから、好きに使わせてもらうよ」


そういうと彼女は、巨大な斧のえを持ち、振り回した。


「桜子チャン、最終試合を始めよう。もちろん……」


と区切り


「最後まで立っていた方が勝利だ」


「逃げろ」


俺の叫びは間に合わない。


桜子に向かって振りおろされる、巨大で無骨な戦斧。


当然、彼女を切り裂くように見えた。


「あれ?」


何も起きてない。


斧がすり抜けたのか、桜子はけが1つなかった。


「忘れてた。ここはヴァーチャルだね」


俺たちの生身は、武器はもちろんAAさえ装備してない。


「ほっとしたら、余計に疲れた」


「まあまあ、私に反則負けってことにしていいからさ。hahaha」


「当たり前だ」

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