第131話帰国

「0勝3負。世界の壁は、やっぱり厚いね」


hahahahahaと海の向こうから来た彼女は笑いだした。


「一族ではなく、私個人の責任だ。自分の力を使いこなせなかったよ」


「そうですか」


またも笑い出す魔女に呆れ、受け流す。


「だけど、これであきらめた訳じゃないよ。自分を磨いてカズチャンにふさわしい私になれたら、また求婚にくるさ」


「来なくていいよ」


と言っても来るんだろうな。


「お前の術式が分からなかった。実体弾を跳ばしてることまでは理解できたが」


「ボクは仮説までできたけどね。専用機でばればれだよ」


「huhu、いいネーミングだろ?」


よく分からない俺たちを無視し、見つめ合う2人の魔女。


タイプの違う金髪が向かい合うと、絵になるな。


「負けちゃったけど、カズチャンさえいいなら今からでも」


「いいから帰れって」


全く結婚する気ないから。


持ってきていた機材はすでに、輸送機に搬入してある。


後はエミリーと副官の搭乗を待つだけ。


「同盟国だし、何かあれば私を頼って。ううん、そんなの関係なく、ただの私が協力するよ」


「ありがとう」


気持ちだけ受け取る。


「see you again」


そう言い残し、彼女は乗り込んでいった。


輸送機は爆音を響かし飛び去っていく。


「うん、また合おうな」




「ソーリー」


彼女から入った通信


その最初が、それである。


「頑張ったんだけど、全然歯が立たなかった」


空元気であることに、ゴディバはすぐ理解できた。


本当は、とても傷ついている。


「辛い役割をお前に任せてしまい、悪かった」


「私も納得してやったことだよ。それにさ」


「何だ?」


「隠し事なく自然体でつき合える男の子は、悪くないって思うよ」


人種や魔法に翻弄されていた彼女の本音だろう。




「今回は活躍がなかったなあ」


見送りも終わったし、嘆かせてもらう。


ずっと台の上だったし。


「ですが、お兄さまが魅力的すぎるため、ストーカーまで現れたのです」


「うん。自慢の夫だけど、嫁としては複雑な気分かな?」


「そうかな?」


あと、夫じゃないよ。


「あれを追い返せたし、それでいいではないか。アメリカなど時代に乗り遅れた、田舎者であると証明できたしな」


「ルールに助けられた部分はあると思うぞ」


と言いながら、視界をスライドさせる。


「また来るのか」


見えるはずがないのに、俺の瞳は海の向こうにくぎ付けになった。


「騒がしくなるのだろうな」

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