第108話サイン

「ありがとうございました」


お世話になった関係者の皆様に挨拶をし、俺は病院を後にする。


幸い、後遺症もなかったので、簡単に退院できたぞ。


「長いようで短い間だったな」


蛇を吹っ飛ばしたり、カミを封じたり。


普通の高校生では体験どころか、知ることもできない日々であった。


借金から逃げた父を呪い続けたけど、危険とファンタジーに溢れる非日常も、そんなに悪いものじゃなかったんじゃないか?


「あくまで一区切り」


これで全てが終わる訳ではなく、ハーレム作りは続くのだ。


むしろ、今日が本当の始まりの日とさえ言えるな。


「てな感じで、やってきました」


俺と桜子が再開した神社。


ここで俺への贈り物が公表され、手渡されるらしい。


どこでもいい気がするが、格好が付かないのか?


「遅いぞ」


「おーい、こっちだよ」


先についていたらしい金銀コンビが、遅れてきた俺に気がつく。


2人も一緒に受け取ることになっているのだ。


「感謝してよね。ボクが飲ませた薬のおかげなんだからさ」


「それについてはありがたく思っている」


西の善き魔女である我が嫁のおかげで、俺の命は今もあるんだ。


飲まなかったら、傷とマナの使いすぎで、本当に死んでいたかも。


「ボクが救った以上、キミの命はボクのものでいよね?」


「魔女じゃなくて悪魔みたいなことを」


こんなやりとりをしていたら、桜子が現れた。


「先にこの紙に名前を書いてください」


「はいはい、ここにね」


サイン一つで借金がチャラにならなら、いくらでも書くさ。


「って、これは婚姻届けじゃないか」


まだ結婚できる年齢じゃないので、紙を破り捨てた。


「はは、書いてくださるといいと思ったのですが。それより、もうおばあさまがいらっしゃったようです」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る