第109話贈呈

「元気になってくれてなによりだ」


「どうも。生きながらえました」


無事に退院できたので、とりあえず感謝しておく俺。


「では、早速贈呈品を公表しよう。瀬川一樹君」


「はい」


「活躍に敬意を表し、我が一族は貴殿に……」


報奨金か?


「大事な、跡取りを贈呈しよう」


「へ?」


このおばあちゃん、今なんて言った?


「我が一族の将来を担うだろう人材。桜子を渡すという意味だ」


「あいつをですか?」


もう、俺のものじゃないのか?


「私は認めた覚えはないのだが。今回の一件で、お前のものにしていいと思えたんだ」


「よろしくお願いしますね。お兄さま」


「ほかに、何かないんですか?」


副賞で金一封とか。


「実を言うとだな、カミを押さえる術式を使い続けるため、かなりの経費がかかったのだ」


触媒、助っ人魔女、ほかの一族への口利き。


費用はどんどん膨れ上がり、一族の財政を圧迫し、すっかり金欠になってしまったとか。


「これからのことも考えると、資金は多い方がいい。ゆえに、お前さんに出すカネなどないのだ」


「そんな」


またも、期待はずれのただ働き。


「気を落とさないでください。わたくしがいい活躍をしますので」


「ボクの一族が出してあげてもいいんだけどね」


「それは断る」


絶対に、裏があるから。


「まあ、地道に稼ぐのだな。私よりは楽な道のりであると思うぞ」


「サーシャ」


お前が言うと、シャレにならないから。


こうして俺たちは大きな戦利品(?)を抱え、カミが封じられた地を後にするのだった。

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