第101話落下

「お兄さま、カミがこちらを見ています」


「派手に空を飛んでいるからな」


注目を集めて当然だ。


「盾を前に出し、硬化魔法を途切れさせないでください。盾だけではなく、全身に」


「あ、ああ」


お荷物のような俺がワイヤーで縛られ、一緒に飛んでいるのは妹の盾になるためである。


残りの2人がどれだけ銃撃しようが、近づけばこちらが攻撃されるからな。


そう思っていると、衝撃が走った。


「もう攻撃されている」


「やっぱり、物を投げてきますね」


幸い掲げていた盾に当たっただけであったが、近づくほど致命的な場所に当たる可能性が高まるだろう。


「耐えてください。兄同然の人にこんなことはしたくないのですが、万全の状態でカミと相対しなければいけないのです」


「お前の磁力は、金属以外には通じないしな」


カミが投げるのは、ただの石だ。


ただし、そのスピードはケタ違い。


「こんどは足に」


AAは魔法で動く鎧ではあるが、衝撃までは防げない。


それができる魔法はあるのかもしれないが、一般人に毛が生えたような俺に使えるわけがなかった。


「これはあざ、いや骨折かもな」


むしろ、命があれば儲け物かも。


2人がカミの意識を散らしてくれてるとは言え、攻撃が当たりはするもの。


途切れることなく魔法を使うため、体がだるくなってくる。


「それでも魔法を切れば本当に」


死ぬ。


近づくにつれ、カミの投擲は正確になり、頭の近くに当たることもあった。


「お兄さま、こんな時ですが聞いてください」


「なんだ?」


薄れゆく意識で、なんとか返事をする。


「わたくしはお兄さまをお慕いしています。最初は兄妹として尊敬の念かと思っていました。しかし、違ったようです」


「ならなんだ?」


「お兄さまはわたくしを妹としか思わないでしょうが、わたくしは違います。なんて罪深いのでしょう。神に仕える巫女なのに」


「そんなことか」


俺のハーレムには、妹要員ぐらい必要だぞ。


「俺は妹であろうが、性的な目で見るような男だ。妹最高」


もうろうとした意識で叫び続ける俺。


「もう落下に入ります。カミは目の前に」


すでに、スラスターの噴射材は尽きているらしい。


あとは桜子の磁力操作でカミの元へと迫る。


「お兄さま、すみません」


ワイヤーが外され、俺と桜子は分かれる。


俺がいては武器が振れないし、もう盾役は必要ないからだ。


かすむ視界で、カミが腕を振りあげたのが見えた。


落ちてくるマイシスターを、直接強打するらしい。


しかし、その拳は空をきる。


「魔法か」


あらかじめ磁力操作で設定していたコースに落ちた桜子は、カミの後ろに回り込む。


体を回転させるように、錘<フツミタマ>を振りかぶった。


それがカミに直撃したところで、俺の意識は途絶える。

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