第99話感心

「おお、やればできるじゃない」


双眼鏡をのぞきながら、ボクことオリヴィアはつぶやく。


狙撃がそれほど得意ではないサーシャ。


予想に反し、長距離狙撃を一発で成功させた。


あ、本当に信じていたよ。


「体勢が崩れたね」


視界の先にいるカミであるが、高速で飛来した氷の杭を受けたんだ。


バランスが崩れ、尻餅をついている。


跳んできた方向と銃声、マナの流れからサーシャのいる位置がバレるだろう。


怒ったカミは、彼女を襲うかもしれない。


「だけどね、キミ」


ボクは双眼鏡をしまい、マナをチャージした砲をかまえる。


「キミが本当の注意しないといけないのは……」


スコープをのぞき、照準を合わせ、


「ボクなんだよ」


トリガーを引き、高威力のレーザーが発射された。


当然、光のスピードで放たれる。


カミはボクの存在に気がつくまでもなく、攻撃を受けた。


照射時間も長めのため、カミの体に傷がつく。


突然の出来事で、うろたえているのが見て取れた。


「でも、連射はできないんだよね」


威力のせいで収束用の結晶体は使いものにならなくなるし、機関部にも熱がこもる。


そんなことは折り込みづみ。


一樹と桜子ちゃんが接近するまで気を引き、時間稼ぎができれば十分さ。


レーザー砲を捨て、代わりに狙撃用のライフルをつかむ。


「さあ、おいで。忌まわしいもの通し、仲良く争い合おう」


スコープの先にいるカミめがけて、ボクはつぶやいた。


「でも、こんなボクでも、愛してくれたら嬉しい」


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