第98話狙撃

「ビット、射出」


私アナスタシアは、専用機である<ルサールカ>に装備されているビットを展開する。


「同調開始」


事前に設定しておいたように、新装備の対物ライフルとビットを連動させる。


「風はないようだな」


対物ライフルのスコープ部分。


それを覗くと、ビットが観測したデーターが映し出される。


視線の先にいるのは、もちろんカミ。


「重力にも異常なし」


撃った銃弾は、真横に飛んでいくわけではない。


少しずつではあるが、重力に引かれて落ちているのだ。


当然、遠くの存在を撃つほど、落下が大きくなる。


「カミの少し上を」


これで的に当たるはずだ。


計算に狂いはないはず。


「バレット生成」


私は引き金を引いた。


触媒が詰まっていた薬莢がはじき出る。


この狙撃は、2段階に分けて行われるシステムだ。


1回目で飛んでいく氷弾、いや氷の杭を生成。


2回目の魔法で熱量や重力を操作し、弾を発射する。


「当たってくれよ」


引き金に指をかけたまま祈る。


銃身内の溝や、発射の反動などで微妙に弾のコースがずれ、遠くに行くほどそれが大きくなるのだ。


当たるように調整したとしても、必ずうまくいくとは限らない。


「あいつら、出発したようだな」


頭上に飛翔する影が見えた。


あの男と、私を姉と呼ぶその自称妹である。


当然、カミも近づいていけば気が付くだろう。


「当ててやるさ」


できる限り、カミの注意をこちらに引き付ける。


私は再度、引き金を引く。


薬室内に大量の熱量がはじけて、銃身内の重力が歪む。


爆風と空間に押されながら、目に見えないスピードで氷の杭は飛び去った。


ストック内の反動吸収装置が作動。


反動を抑えるために銃身の上に取り付けられたマズルブレーキから、水蒸気を含んだ爆風、それにマナのざんしが吐き出される。


「弾は?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る