第96話発射台

「お兄様、固定できたなら乗ってください」


「そうだな」


ここまで引っ張ってきたカタパルトである。


鹿島一族総出の秘術でカミを封じている影響か、邪魔らしいものは入らなかった。


当然、故障などはしていない。


縛られているので歩きにくいが、倒れないように気を付ける。


「お兄様を感じれてうれしいです」


後ろにいる妹が言う。


「そうか?」


一緒に縛られてるだけなのに。


「はい、お兄様とはずっと離れ離れでしたので。お兄様、ずっとわたくしのおそばにいてください。私の伴侶として」


「それはお断りする」


またもそれだ。


カミの問題で揺れてるし、一族の地盤固めのために結婚するのだろうが。


「そもそも、俺は神道のことを何も知らないぞ。結婚できる年齢でもないし」


ああいうのは作法や教義などを勉強しないといけないのだろう。


「かまいません。わが一族は実力重視ですから。お兄様ほどの才能があれば、多少の問題など乗り越えれます」


「一族と縁もゆかりもない婿だぞ。反対する奴は多いと思う」


「そこはわたくしとお兄様の愛の力で何とかすればいいんです」


密着してるので振り返れないが、かなり嬉しそうな顔で言っていると予想できた。


「その話はあとだ。今は集中しよう」


すでに、発射台の上に乗れている。


というか、これに乗ってワイヤーで縛れば良かったんじゃ?


「聞こえます? 俺と桜子は準備が終わりましたよ」


『聞こえているさ。こちらの合図を待て。そうしたらマナを注いで発射しろ』


教官の声がする。


「分かりました」


『あと、任務中に色恋の話をするな」


聞かれていた?


『当たり前だろ。ずっとこちらと繋がっていたぞ』


「すいませんでした」


謝ってから気が付いたが、桜子のほうからしてきた気が。


まあいい。


妹を守るのは兄の役目。


『全員の準備が終わったようだ。カウントを開始する。5・4・3.2.1』


教官のカウントを聞きながら、俺は発射台にマナを流した。


「発射」


幸運にも、カタパルトは問題なく作動。


バネの力で、俺たち2人は空中に投げ出された。


「桜子」


「分かっていますわ」


マイシスターはバックパック型ブースター<トリフネ>を起動させる。


推進剤が噴出された。


俺たちにはそれに押され、宙を疾走。


ここまでは何も問題はない。


だけど、押されるのが斜めのため、安定が悪くてななめを見て飛んでいるのが難点か。


「ワイヤーに問題はないようですね。もう少しでカミが見えてくるはずですわ」


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