第86話カミ
話は最初につながる。
「そのカミがアラミタマになり、この地に悪い影響を与えている訳か」
巡礼者さんは、そんなことになっちゃったなんて、夢にも思わないだろうな。
「審神者である私が、カミの降臨の意味を尋ねたんだ。最初はいいマナの波長であったし。吉兆であると判断してしまった」
「しかし、今はそうではありません」
悲しそうに言うマイシスター。
「ある日、突如あのカミは暴れ狂うようになってしまいました。原因は不明ですわ」
「それが俺たちを呼んだ理由ね」
カミ退治に利用する気か。
「私たちはみなさまの後始末のために、呼ばれたというわけですね」
「それがボクたち魔女の仕事であるけど、少し悲しいです」
2人もいい気はしてないらしい。
「そうであるが、桜子がお前たちに向ける気持ちに、嘘偽りはない。だから、私は桜子に自由にさせたのだよ」
「分かりました」
2人を物置で生活させようとしたり、勝手に手錠をつけて俺と一夜を過ごしいたのは、裏のないマイシスターの本音であったか。
たいしたやんデレっぷりだ。
「かわいいが、危険な妹を持ったのかもしれない」
小声でつぶやく。
「お兄様、わたくしの.ことを呼びました?」
「いや、呼んでいないよ」
聞かれていた?
もっと気を付けないと。
「今は私と桜子以外の一族のもの総出で、秘法によってアラミタマを封印している。だが、長くは持たないだろう」
「1週間も猶予はないと思います」
驚きの期間。
「短いなあ」
そうなれば暴れ狂うカミが解き放たれ、この地は災厄と混乱に襲われるのか。
「今更ですが、異世界生物なんて信仰しなければよかったんじゃないんでしょうか?」
この世界の人間よりは優れているかもしれないが、だからと言ってカミではない。
「うむ、そうだな。だが、人間は都合のいいものを頼ってしまうのだよ」
「これはわが一族の問題です。その責任をお兄様はともかく、外部の方にまで押し付けてしまうとは」
「確かに」
業が深い一族になってしまった。
「って。何故、俺まで入っているんだ?」
思わずスルーしてしまったが、かなりおかしい。
「お前と桜子は、婚姻するんだろ?」
「はい、そうしてお兄様に、わが一族へ入ってもらいます」
「おい、勝手に話を進めるな」
今のところ、俺は鹿島一族の世話を受ける気も、一員になる気もない。
「残念だな。お前たちは似合いだと思うし、強いマナを持つ者を、一族に加えたい。二人の子供を、見てみたかった」
「わたくしも、お兄様の子供なら身ごもりたいです」
「妹が何を言っているんだ?」
いくら生まれてくる子供に、高いマナ適正が期待できても、兄妹での結婚は禁止。
「今はこの話はやめましょう。カミの対処だけで手一杯だ」
妹とのことで悩みたくない。
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