第87話手配
「ということでした」
基地に戻り、教官に説明する俺たち。
「なかなか複雑な話だというのが、私の素直な感想だ」
「そうですね」
お家騒動みたいなものだし。
「桜子を責めんでくれ。私が許可を出したんだ」
今まで教官の前に姿を出さなかった冬音氏が頭を下げた。
「それはいいのですけが、私たちはどう協力すればいいのでしょうか? 3人とも、私の生徒であるので、教師として全力で守らないといけない」
かっこいいセリフ。
「私としては危険な状態で収集できるデーターに興味があるので、できるだけ激しい作戦がいいです」
「佐伯さん」
アンタは今、黙っていてくれ。
「先ほども説明したように、今は一族総出で、カミを封じている」
「それは理解しています」
「作戦はその強化だ。桜子が近くにまで行き、秘法によって強い封印をかける。そちらにはその援護をしてもらいたい」
「討滅ではなく、封印の強化ですか?」
「ああ、腐ってもカミであるしな」
「分かりました。しかし、こちらの生徒には専用AAがない」
「そうでしたね」
妹とあの2人に翻弄される傍観者じみた役割をあてがわれていたせいで意識できなかったが、俺の<スサノオ>はこの場所になかったんだ。
「それなら大丈夫よ」
笑顔で言う佐伯氏。
「どういう意味だ?」
「こういうこともあろうかと、運んでもらうよう手配しておいたの。もう少しでここに着くんじゃないかしら?」
「手配?」
そんな時、会議室の電話が鳴った。
みんなが首をかしげる中
「私が出るわ」
と佐伯さんが受話器を取る。
「では、例のものがここに届いたということね。今は物資の運搬口にある。分かったわ。教えてくれてありがとう」
「何の電話ですか?」
俺をはじめとして、全員が意味を理解できていなかっただろう。
「きっと、行けば理解できるわ。この基地の物資の受け取り場所よ」
俺の担当医は笑顔でそういった。
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