第27話ハンデ

「誰が油断するのだ?」


 サーシャがオリヴィアを睨む。


 もちろん、専用機を着こんでいた。


 <ルサールカ>という名前らしい。


 水色のカラーリングだ。


 背中に専用装備らしいものを付けている。


「とりあえず、一樹じゃないよ」


「当たり前だ。アイツが全力を出しても、私には勝てるはずがないからな」


「どうだろうね?」


「何?」


「ボクは一樹の勝利に賭けるよ」


「アイツに賭けられるとは、安い魔女なのだな」


「いや、魔女ってのは、本当に信じる男性にすべてを託すんだ。おばあ様もお母様もそうしてきた」


「詳しく知らないけど、そうなのだろうな」


「だからボクも一樹にすべてをささげる」


「そう決意してくれるのはいいが、落胆するぞ」


「どうかな? ボクのお婿さんになる人だし」


「おい、待て」

 

俺は話に割りこむ。


「勝手に決めるなよ」


今のところ、誰かと結婚するつもりはないぞ。


「じゃあ、事実婚なのかな?」


「そんなわけあるか」


 変な意味でとらえるな。


「なら、本妻なしのハーレムを目指すのか。全員を平等に愛するってことだね。それは建前にして、ボクを1番にしてよ」


「違うから」


 さっきからこいつは変なことばかり。


 いったい、何が狙いなんだ?


「静かにしろ。もうそろそろ始まりの時間だ」


 教官の言葉で、ざわついていた会場が静かになった。


「開始5分前だ。スタートラインにつけ」


 俺たちは位置に移動。


 会場に緊張感が漂う。


「お前にハンデをやろう」


 ハンデ?


サーシャが変なことを言いだす。


「ああ、スタート合図後の30秒間、私は進まない」


「大判振る舞いだな」


 サーシャは攻撃できないだ。


 後ろをとれても意味がないのに。


「そのまま俺を追い抜いて先にゴールできる自信があるわけか」


 そうじゃないと勝てないからな。


「違うぞ」


「何?」


 どういう意味だ?


「お前を後ろから追い抜いてゴールする」


「まじか?」


 1回追い抜いただけではダメなんだぞ。


 俺より先に一周し、再び追い抜かないといけない。


 サーシャの方からは俺を攻撃できないし、いくらなんでも無理じゃないのか?


「言ったな? 私の実力を見せつけてやろう」


「見せてくれよ」


 俺はその上をいくからさ。


 心の中でそう付け加えた。

 

教官が時計を見た。


「もうすぐ時間だ。カウントを始める」


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