第28話スタート
「5・4・3・2・1スタートだ」
教官の合図だ。
「先に行くぜ」
サーシャにそう言い、走り出した。
急ぎはするが、転ばないよう慎重に。
「そうしろ。すぐに追い抜くから」
「楽しみに待たせてもらうよ」
サーシャが言っているのは、1回追いつくという意味ではないのだろう。
「1周差を付ければ勝負ありだ。それをするということだな」
始まる前にもそう言っていたしな。
「だが、こっちもいいペースだ」
幸運にも、バランスを崩したりしていない。
平均に比べ、格段に下回るスピードではないだろう。
今まで地道にやってきた努力の成果を出せているな。
「だが、それだけで勝てるわけがないが」
サーシャの専用機のことはよく知らない。
しかし、とんでもない能力が秘められているのは確かだろう。
「もうすぐ30秒たつ」
そうなれば、サーシャがスタートだ。
どうなるかは、想像できないな。
「時間だな」
背後から彼女の声が聞こえる。
「くる」
ここからが、本当の勝負開始だ。
「小手調べといこう」
「どういう意味だ?」
「今、お前を追い抜くが、私は全力を出さない。お前を試すだけだ」
「そうかよ」
なめられたものだな。
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