第19話魔女

「瀬川、走れ」


 俺は早速しごかれている。


 データー収集と操縦技術アップのための走り込み。

 

やっぱ、かなりつらい


「どこが簡単な仕事なんだよ?」


 あの求人誌に書かれていたのは、嘘だらけだな。


 やっぱり、詐欺だ。


「でも、やってやるぞ」


 借金返済。


 母の苦労の肩代わり。


 そして、ハーレムのため。


 しかし、マナ操作が悪いのか、AAが誤作動を起こす。


「足がもつれる」


 そのまま派手な音をたてて転がった。


「壮大にコケてしまったな」


 俺ってかっこ悪い。


「起きて。手を貸すよ」


 オリヴィアが手を伸ばしてくれた。


「ありがとな」


 その手をつかんで立ち上がる。


「貴重な専用機でこんな特訓をやるとはな」


 サーシャが冷たい目で俺を見てくる。


「こんなに転んでばかり。機体が壊れるんじゃないのか?」


「転んだのは今日、何回目だっけ?」


「30回ぐらい?」


 10を超えるあたりから数えていない。


 憶測で答えている。


「高価な機体だ。丁寧に扱え」


「分かっているよ」


 だが、現実はそうはいかない。


「壊れちゃったら、何円するんだろう?」


 ただでさえ多い借金だ。


 それが増えたら目も当てられない。


「何かあったら、ボクが便宜を図るよ。安心して」


「ありがとう」


 気持ちだけでもうれしいよ。


「そいつは魔女だぞ」


 サーシャが俺に言う。


「魔女に手助けされても」


 対価をとられそうで怖い。


「何もしないよ」


「本当か?」


「本当」


「信じていいのか?」


「大丈夫だって」


 そうは言うが、安心できんな。


「なら、対価をもらうよ。ボクとキスして」

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