Extra Phase avenger 02
「それで、さっき言った武器密売グループはどこの組織かわかる」
「と、東南アジアだ……」
「……というと、『レッドシャーク』か」
『レッドシャーク』は、ここ数年の間に勢力を拡大させた海賊組織だ。フィリピンやインドネシアなど東南アジアを中心に貨物船の略奪だけでなく、武器の密売や傭兵としてのビジネスをすることもあるという噂だ。
「どんな取引をしたの」
「ロシア製小銃の正規品を100挺近く、それから弾薬とグレネードを大量に乗せた船がやってきた。それが一番直近の取引だ」
「……100挺」
大した感慨も抱かずに呟く。男の答えは、彼女の予想の範疇を超えていなかった。
今度はまた別の方面から探ることにする。
「桜木テクノロジー。あんたたちは、こことも繋がりがあるでしょ」
「どうしてそれを……」
「ちょっと頭を使っただけ」
嘘ではなかった。実際は、そこに少しのヒントもあったのだが。
シオンが破壊された次の日、シロガネの足は無意識のうちにあの場所へと向かっていた。
そこにあったのは、シオンの抜け殻だった。
センサーとコンピュータは綺麗に抜き取られ、空っぽになった機体だけが他のガラクタと一緒に転がっていた。
そこにいた彼女は、思わず目を疑ってしまうほどに「モノ」だった。
だがそこで気づいたあることが、悲しみを上塗りにした。
機体の損傷が、異常に綺麗だったのだ。まるでその設計を細部まで完全に把握しているかのように。必要最低限の作業で、情報を隠蔽するために必要な最低限の部品だけを取り出していた。
そんな芸当をできるのは、よほどその機体について精通している人間だけだ。となると、必然的に候補は絞られてくる。
「大型作戦のターゲットがスタイラスジャパンやその機体に偏っているのは、その繋がりが関係しているの」
「……ああ。その通りだ」
シロガネが杭の先を男の口に向けると、彼は首肯する。
既に目は虚ろだった。もはや抵抗する気力も残っていないのだろうか。
これまで得た情報を統合しつつ次の質問を口にする。
「それじゃ、『オートマタ計画』は知っている? あれは本当に存在する計画なの」
今度こそ男は動揺を見せた。大きく目を見開き、シロガネを見つめる。
目は口ほどにものを言うとは、こういうことを言うのだろう。
「存在するんだね」
男の返事も聞くまでもなく、確信を得た。断片的だった情報が組み合わさり、1つの像を結ぶ。
この男に訊ねるべきことは、あと1つ。
男の口の中に杭の先端を入れる。
彼は口を開けたまま、閉じることもできずに涎を垂らした。
それを横目に。
「ミナト・コウダイ。ミナト・アスカ。この2人――わたしの両親を殺したのは、あんたたち?」
男が答えた次の瞬間、彼の喉奥深くに杭が突き刺さった。
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