第2話

店に入る前に看板に表示してあったアクセス座標 802G-JHmn08-EWにつなぐ。

ほどなく脳内に間接接続されたデバイスに情報パターンが流れ込み、仮想の店内が表示され狭い店内を調べる。

妙なコスプレの仮想の店長が現れ、彼からのセールス文言を聞かされる。

とりあえず新着商品の一覧を見せてもらうことにする。

それらすべての商品の概要を音声解説の補助説明と共に認識。

「まあまあ、だな。悪くない品揃えだ」と判断。


現実の店の古いスチール製ドアを引き、店内に入る。

デバイスには新たに情報パターンが流れ込み、実際の視界と重なり表示された。

(MR)複合現実となった狭い店内を歩き周る。

実際の店長は60歳くらいのさえないオヤジだと思うが、前に現れたのはかなり修正を施された初老のイケメンの男性だった。

さっそく、そもそとしゃべる少し聞き取りにくい口調の男と、先ほど何点か入店前にチェックを入れていた人格データーの値段交渉を始めた。


支払いを今月の政府支給の生活ポイントから済ませ店を出た。

今日は、いい買い物ができた。


店を出た後はどこの店にも寄らずに急いで莉土里台駅から徒歩6分の単身者用住居の自宅に戻る。


部屋着に着替え、駅前のファミマで購入したマッシュライスを食べながら、3品のチップを喰してみることにした。

リクライニングシートに座りヘッドセットをかぶる。脳内で電源投入を指示し、意識をプログラムコアに認識させた。


一つ目のチップは、30年前に中東で戦死した女性兵士の人格意識データ。


メモリチップの読み取りが始まり、脳内へ女性兵士のすさまじい戦闘体験がなだれ込む。


本物の戦闘体験の記憶が俺の意識と重なり戦場を走り回り、逃げ回る。

夜間戦闘のさなか、敵部隊の突然の待ち伏せを受け同じ部隊の仲間が次々と肉の塊に変わって行く。

援軍を待ち続ける民家での銃撃戦の末、無数の銃弾を受けて絶命する最後の瞬間までを体験。


かなりの刺激で意識を無くす寸前まで追い込まれた俺は、装置のスリープ機能を呼び出し休憩。

用意していた飲み物を一口注ぎ、興奮が治まりきらないうちに次のチップを手に取る。


何という幸せな時間…


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