第1章 第26話 戦闘開始!

『『『グガラァァァッ!』』』

 

「「「《我・地の精より授かりし力・解放せん》!」」」

 

「「「うおおおおおおああああ!!」」」

 

ゴブリンが攻めてくるのに対し、生徒達が警備隊に支援魔術をかけ、警備隊がゴブリンを蹴散らす。

 

だが、蹴散らしても蹴散らしてもゴブリンは次から次えと襲って来る。

 

「クソっ!これじゃあジリ貧だ!俺達の魔力が切れたら終わりだぞ!」

 

「うるせぇ、黙って術句を唱えろ!《光集いて・彼の者を癒したまえ》!」

 

弱気になる者を鼓舞し、自分自身も不安と戦いながら回復魔術で傷を負った警備隊を癒す。

 

だが、魔術は万能ではない。

魔術で治せる傷には上限があるのだ。


魔術は世の摂理に干渉し、その人の自然治癒力を増幅させ一気に回復させているだけ。

そのため、ある上限に達すると治癒力が働かなくなり治癒魔術が効かなくなるのだ。

つまり、勝負は自然治癒力の上限、ヒースリミットが来た時に決まる。

そして、この数のゴブリンをヒースリミットまでに倒しきることは不可能に近い。


そして、もう一つのリミットがある。


それが──

 

 

「うあああああ!」

 

「おい、左翼が崩れたぞ!もっとそっちに隊員を送れ!」

 

「ダ、ダメです!右翼もギリギリで⋯⋯」

 

「クソッ⋯⋯!後退、後退ー!」

 

警備隊の防衛線である。

こんな国の端にある小さな村だ。久遠の森がすぐそばにあるとは言え、警備隊の人数は50人もいないだろう。

そして先程の奇襲で何人かはこちらに戻ってこれていない。

50人足らずで1万のゴブリンをそう何時間も食い止めることは出来ない。

現に今、左翼の警備隊が崩れ、後退するしかなくなった。

今は東門から約50メートル程の位置で食い止めている。

 

この戦い、本当に勝てるのだろうか?

 

それが今、この戦いに参加している皆の総意だった。

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

「《雷電よ・貫け》!」

 

シャルテは東門少し離れたところで【ライトニング】を放ち、防衛線を抜け出した数匹のゴブリン達を撃退していた。

 

「ふぅ⋯⋯、これくらいならまだ余裕ね」

 

「油断はダメだよ、シャルテ。それに、防衛線が後退してきてる。私達もそっちに行った方が⋯⋯」

 

「⋯⋯そうね。でも、テルルはここで防衛線を抜け出したゴブリン達を撃退して」

 

その言葉にテルルは顔面蒼白になり、

 

「ダ、ダメだよ!シャルテだけには行かせられない!私も──」

 

「ダメ、テルルはここに残って。テルルがいなかったら村にゴブリンが入っちゃう。だから、どちらかが残らないといけないの」

 

テルルは案に反対するが、シャルテは力強く説得する。

 

「それに、みんなだけじゃ支援魔術間に合わないから、手伝ってあげて?あと、治癒魔術もね」

 

最後はシャルテは笑いながらテルルに言う。

 

「⋯⋯分かった。でも、約束して。絶対に死なないって。絶対に帰ってくるって」

 

「分かってるわよ⋯⋯。絶対、絶対にね」

 

「うん⋯⋯」

 

シャルテはテルルの返事を聞くやいなや、防衛線に向かい走り出した。

 

見ると、3匹のゴブリンが防衛線を抜けてきている。


「《雷電よ・つら──》」

 

「《水よ凍て・氷柱となりて・打ち据えよ》ッ!」

 

シャルテが【ライトニング】を放とうとすると、後ろからテルルが【バレットウォーター】を放ち、3匹のゴブリンを死滅させる。

 

「ありがとう!」

 

声が届いたかは分からない。

でもきっと届いたと信じ、走る。

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