第1章 第25話 敵陣営では

『⋯⋯おぃ、どうするぃ、この人間⋯⋯?』

 

剣を持ったゴブリン、イドラが男の右肩を刺し、持ち上げながら言う。

 

「ぐ、あああああッ!」

 

その場に男の絶叫が響き渡り、鮮血が飛び散る。

 

『うるさぃ⋯⋯、ぞぃ!』

 

イドラはそう言うと剣を右肩から抜き、男をその場に投げ出した。

剣が抜かれたことによって、肩から大量の血が流れている。

 

「ぐぅ⋯⋯!ああッ!はぁ⋯⋯、はぁ⋯⋯ッ!」

 

男は右肩を反対側の手で抑えながら、

悲鳴を押し殺している。


『こいつぁ⋯⋯殺していいよなぁ⋯⋯?』

 

大きな棍棒を持ったゴブリン、アドラが男の前に立ちそう言う。

 

『待てよ兄者、そいつから村についての情報を──』

 

『おまぁえは黙ってろァ!』

 

その言葉に地図を捨て、イドラと同じく剣を持ったオドラが止めようとするが、アドラの恫喝にとって黙らされる。

 

『おまぁえは⋯⋯、下っ端達に指示だししときぁ⋯⋯いいんだよォ』

 

そう言われ、オドラが舌打ちをしながら引き下がる。

 

『でぇ?⋯⋯結局どうするんだぇ?⋯⋯こいつ』

 

「があああああッ!」

 

弓を持ったゴブリン、エドラが男の右肩を踏みつけながらそう聞く。

 

『⋯⋯俺が殺す』

 

その時、アドラ達のやり取りを黙って聞いていたワイト、ラトルビアが馬から降り、腰にぶら下げた鞘から剣を引き抜いた。

 

その剣は黒く光り、男の表情が反射している。素人目からしても一級品なのは明らかだった。

 

「ひっ⋯⋯ッ!」

 

男が小さく悲鳴を上げる。

 

「た、頼む⋯⋯命だけは⋯⋯!」

 

男が最後の命乞いをする。が、

 

『それもまた、運命』

 

無慈悲な剣の一閃が一人の人命を刈り取った。

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