第1章 第17話 索敵
昼食を終え、一行は森のさらに奥へと進んで行った。
森に入ってから道らしき所を通ってきたアレン達だが、ついにその道がなくなってしまった。
「こっからは道的なもんがねぇのか。シャルテ、魔術でこの場所に印付けといてくれ」
「なんで私が?アレンがやればいいでしょ」
「こういうのは魔力が多いやつがやった方がいいに決まってんだろ。俺みたいな灰じゃなくて、天才と言われる白のお前なら印も長く続くだろうし」
「⋯⋯仕方ないわね。今回だけよ」
こいつ天才とかそういう褒め言葉に弱いな。メモメモ。
アレンが心のメモ帳にメモをしていると、
「私も念の為印付けておくね」
テルルも魔術で印を付けた。
魔物がシャルテの印の魔力を感知して壊さない様にだろう。現にテルルが付けた印は魔力を感知するのが難しい。
「よし、そんじゃあ行くか。俺は楽できたから疲れないし」
「あー!やっぱりさっきの言葉はサボるためのものだったのね!」
「別にサボるためじゃねぇよ!お前にしてもらった方が効率いいってのが4割だよ!」
「過半数サボるためじゃないのよ!」
そんなやり取りをしながら、一行らは道無き道を進んでいく。
アレン達が森に入ってから4時間が経つが、未だに魔物にも、動物にすらも遭遇しないでいた。
シャルテがアレン達に尋ねる。
「⋯⋯ねぇ、私達は森の魔物が森から出てきているのが目撃され始めたからこうやって調査に来ているのよね?」
「そうだな」
「なのに魔物どころか動物にすら遭遇しないのは、おかしいんじゃ⋯⋯?」
「ああ、そうだな」
「⋯⋯私、ちょっと周りを索敵してみるね」
テルルがそうやって魔術を起動させる。
「⋯⋯ねぇ、アレン。私、ここら辺で引き返した方がいいと思う」
「シャルテ?」
シャルテが珍しく自信なさげでそう言うので、アレンは不思議に思いシャルテの名を呼ぶ。
「ただの勘なんだけど、ここより先に行くと、何かとてつもなく危険な事が起こると思うの。しかも、私の勘って悪い時によく当たるのよ」
少し不安そうに、
「だから⋯⋯引き返しましょう」
シャルテはそう言った。
その時、隣で索敵魔術を起動させていたテルルが息を飲んだ。
「ア、アレン。シャルテ。大変だよ」
少し声を震わせ、ものすごく小さな声で、テルルは2人にそう言った。
「おいテルル。どうしたんだよそんなに声を小さくして──」
「しっ!」
「むぐっ!?」
テルルに話しかけていたアレンの口を手のひらで塞ぎ倒れ込む。テルルはその体勢のままシャルテに目配りをした。すると、シャルテは小さく頷き、テルルと同じ様に身を伏せる。
⋯⋯⋯⋯なんか剣呑な雰囲気だけどテルルの胸が当たっててそれどころじゃないんですけど男の子だからね仕方ないね。
そんなアホな事を考えていると、何やら少し離れたところから生い茂っている草を掻き分ける音が聞こえてきた。
アレンの顔もシャルテ達と同じく険しくなる。テルルに目配せをし魔術で反応があったものを聞いてみると、
「──多分、ゴブリンの大軍だと思う。ちゃんとした数は分からないけど⋯⋯1万は超えてる」
「「──ッ!?」」
シャルテもテルルからその数を聞いて絶句している。
アレンは声小さくテルルに尋ねる。
「い、1万て。そんな数いるわけないだろ⋯⋯?確かにゴブリンは群れる魔物だが、そんな数で移動するなんて聞いたことないぞ」
「でも、これで森から魔物が、ゴブリンが出てきてたのが説明出来る」
シャルテがそうアレンに言う。
「⋯⋯そのゴブリン達はずらっと並んで⋯⋯⋯⋯村の方に進んでる」
「────」
アレンはテルルに言葉を返すことができなかった。だが、テルルが次に放った言葉にアレンは今度こそ理解が追いつかなくなる。
「でもね、そのゴブリンの大軍の中に人がいるの」
「⋯⋯⋯⋯は?」
アレンは意味がわからないと言ったふうにテルルに問い返す。見るとシャルテもポカンと口を開けている。アレン同様、理解が追いつかなくなっているようだ。
「人ってお前⋯⋯。ゴブリンが人と意思疎通なんて出来るわけ⋯⋯」
「でも、そうとしか考えられないよ。近づいてきたゴブリンに指示とか出してるリーダー格的な感じだし、なにより、シルエットがほぼ人なんだよ」
アレンがそう言うが、テルルは否定し人だと言い張る。
確かにゴブリンは魔物の中では知性がある方ではある。だが、人間と意思疎通が出来るほど脳は発達していないのだ。
そんなゴブリン達の中にいるリーダー格のような人──。
「⋯⋯⋯⋯私も今索敵魔術を使ってみたわ。テルルの言っている事に間違いはないわ」
「シャルテまで⋯⋯」
自分よりも優れているシャルテとテルル2人に言われると、もうそうだとしか考えられない。
「⋯⋯⋯⋯わかったよ。その変わり、俺が撤退って言ったら即撤退だからな。ここだけは譲れない」
シャルテとテルルは顔を見合わし、
「⋯⋯ええ、それで問題ないわ」
「うん⋯⋯私も」
そうアレンに対して答えた。
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