第1章 第13話 決闘の行方

「《猛りし雷電よ・彼の者貫け・刺し穿て》ッ!」

 

シャルテの【ライトニングスピア】を難なく避けるアレン。

 

「──ッ!なんでよ⋯⋯なんで避けれるのよッ!?」

 

しかも、アレンは魔術なしでそれを避けていた。

【ライトニングスピア】は光系統の雷魔術で、その速さは文字どうり雷の如き速さだ。それを支援魔術なしで避けるなど不可能である。

だが、アレンはそれを可能にしていた。

 

「お前、狙うの下手なんだよ。だから避けれる。それだけだ」

 

「──ッ!?」

 

その言葉に、シャルテはどんどん冷静さを失っていく。

 

「《集いし暴風よ・巻き上がれ》ッ!」

 

アレンの周りに竜巻を発生させ、動きを封じる。そこに、

 

「《燃えよ炎・業火の焔で・焼き尽くせ》ッ!」

 

中級魔術、【ファイヤストーム】を放つ。竜巻の中に炎が入りこみ、大きな爆発を起こす。

 

だが、それでも──

 

「──終わりか?」

 

アレンは傷一つ負っていなかった。


シャルテはもう訳が分からない。

先程の融合魔術ですら傷一つ負っていないのだ。何か防御魔術を使っているとしか考えられない。

なのに、その呪文は聞こえてこない。

 

呪文が聞こえてこないという事は対抗魔術が放てない。

 

だからシャルテは先程から様々な魔術を使っているのだ。

 

「んー、そろそろこっちからも攻めるぞ。終わらねぇし疲れてきたからな」

 

アレンがやっと攻撃を始める。

シャルテが身構え、どんな攻撃が来ても大丈夫な様に少し多めに魔力を使って【ライトシールド】を使う。

 

「《雷電よ・刺し穿て》」

 

(⋯⋯?そんな呪文の魔術なんてないはず──)


シャルテが心の中で首を傾げていると、アレンの手から魔術が放たれた。

 

「────ッ!!?」

 

それは、【ライトニングスピア】だった。アレンは呪文短縮を行ったのだ。

 

シャルテは驚きのあまり固まってしまい、それを真正面から食らった。

念の為【ライトシールド】を張っていなかったらシャルテは戦闘不能になっていただろう。

 

シャルテはその場から動きながら次弾が来る前にもう防御魔術を張る。

 

「あなた⋯⋯なんで呪文短縮なんて出来るの!?私達も最近習った程度でまだ使えないのに!?」

 

「だから言ったろ?お前に勉強教えれるって」

 

その言葉を聞いたシャルテは動きを止め、

 

「──分かったわ。私が間違ってたみたいね。いいわ、この勝負私の負けよ負け。今の私じゃあなたには勝てない」

 

それを聞いた村人達が目を見開く。

 

「負けを素直に認める所は俺的にポイント高いぜ。よーし、俺からの要求、もとい晩飯の礼はお前とテルルに勉強教えること!これでいいな?」

 

「ええ、いいわ」

 

その返事を聞いた瞬間、村人達からアレンに向けての歓声が響いた。

おそらく、灰が白に勝ったのは、初めての事例だろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る