第1章 第12話 中級魔術

ここでは、魔術の強さについて説明をしよう。

魔術は初級魔術、中級魔術、上級魔術、神級魔術、大魔術がある。

初級魔術は殺傷力はないが、魔力を込める事によって殺傷力がある魔術に変化することがある。

中級魔術は初級魔術と比べると威力は桁違いで、直撃すれば命の保証はない。

上級魔術は範囲的なものが多く、殺傷力も十分である。が、その強大さ故に魔術階級黄以上の者でないと発動は難しい。

神級魔術は魔術階級虹だけが使えると言われる魔術で、その魔術の力は大魔術に並ぶと言われている。


決闘は、魔導師になっても中級魔術はなるべく使わないように、初級魔術の威力を少し高めてするものだ。

 

アレンはそれを無視し、シャルテに本気を出せといった。

 

シャルテはまだ学生といえども白。中級魔術を使えるレベルには、十分達している。

 

つまり、この決闘はテルルが心配していたものに変わりつつある。

 

単純なる、殺し合いに──。

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

シャルテは圧倒的なプレッシャーを放ちながら、アレンではなくその後ろの、テルルの方を見ていた。

 

(──良かった。テルルが防御魔術を張ってくれた。これで心置き無く戦えるッ!)

 

シャルテは視線をアレンの方に戻し、

 

「⋯⋯ちゃんと直撃は避けるのよ。でなきゃ──」

 

シャルテが掻き消え──

 

「──死ぬわよ」

 

シャルテはいつの間にか、身体能力強化の支援魔術、【バースドアップ】を使って、アレンの懐に、先程のアレンの様に潜り込んでいた。

 

しかし、使ったのは【ライトニング】ではなく、

 

「《猛りし雷電よ・彼の者貫け・刺し穿て》ッ!」

 

中級魔術、【ライトニングスピア】。

直撃すれば体に大穴を開けられる、殺傷能力十分な魔術だ。

 

アレンは自分がやったやり方をされ、

少し驚いていた。

先程、防御魔術がギリギリ間に合ったのはシャルテの才能あってのものだ。


(威力は殺してあるけど、直撃すれば絶対に起き上がれないッ!私の勝ちよッ!)

 

シャルテは【ライトニングスピア】をアレンの体目掛けて打った。

 

アレンの体に穴が開くことはなかったが、直撃したアレンは前のめりに倒れる。直撃した際に砂埃が大きくあがる。

 

「──さぁ、降参しなさいな」

 

沈黙の中にシャルテの声が響きわたった。

 


テルルは安堵していた。アレンが殺されずに倒れたからだ。もしあれを中途半端に受けていたら次の攻撃が来ていたかもしれない。

 

だが、テルルの中には疑問があった。

 

(最初にふらっと揺れてシャルテにダメージを与えた所から、アレンに違和感を感じる⋯⋯。⋯⋯この違和感は確か──)


そして、テルルがあっ!と叫びその違和感があった時を思い出したときと、この決闘を見に来ていた村人達が歓声を挙げたのは同時だった。

 


村人達の歓声を聞き流しながら、シャルテは思っていた。

 

(何よ⋯⋯本気出せとか言っときながらちょっと本気出しただけで終わっちゃったじゃないのよ⋯⋯)

 

シャルテがアレンから目を離し、テルルの方へ向かおうとした時、

 

「おいおい、どこ行こうとしてんだよ。まだ試合は終わってねぇぞ」

 

後ろからアレンの声がした。

 

咄嗟に振り返り、飛び退いて構えるも、アレンは先程の様に倒れている。

 

「っておい、どこ見たてんだ。俺はこっちだぞ」

 

その声は倒れているアレンからではなく、もっと離れた所から聞こえてきた。

 

前をみる。砂埃が風に乗って消えて来た。すると、1人の人影が出てくる。

 

「さっきの俺と同じやり方で来るとは思わなかったぞ。ちょっとびっくりした」

 

アレンだった。

 

シャルテは信じられないといった様に目を見開き愕然としていた。

アレンはその様子を見て、

 

「何だよ、そんなに不思議か?学校でやってるんじゃねえの?分身魔術」

 

それを聞き、シャルテはハッとして思い出す。前に先生が試してくれた事があった。魔術の名は【ダブル・ヒューミント】。闇系統の中級魔術だ。

 

「ま、そゆこった。さぁ、どんとこい!今からは分身魔術使わずに勝負してやる!」

 

シャルテは灰の魔術に騙されたことによる羞恥心と怒りで冷静さを失い、

 

「《炎獅子よ・猛り狂え・焼き払え》ッ!?」

 

広範囲型中級魔術を放った。

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