第1章 第8話 学校での授業

ナガスの依頼を果たすため大治癒術を使ってから一週間後、シャルテとテルルは、今日も仲良く学校に登校していた。

学校といっても小さな村の学校なので、周りにある家々よりも少しばかり大きいだけで制服などもなく、木々を組み合わせて作っただけの建物である。


「おはようシャルテ、テルル」

 

「おはよーティトフ」

 

「おはようティトフ君」

 

その後も他のみんなと挨拶をかわし、教室に入る。

 

この世界の学校には大きくわけて二つのクラスがある。

一つは、魔術がほとんど使えない黒、灰が所属するクラスだ。

このクラスでは魔術を使わないで生活するためのことを学ぶ。いわば普通の学校である。

もう一つは、それ以外の者、魔術師を

目指す青から上の者が所属する。例外的に灰がいることはあるが、そんな事はほとんどない。

このクラスでは、王都に行き魔術師見習いになるために、魔術の他、先程説明したクラスの勉学もするクラスだ。


シャルテとテルルが属しているクラスは当然後者の方で、およそ20人程の生徒達がいる。


「おいお前ら〜、授業始めるから席につけ〜」

 

先生が入ってきてそう言い、話していた生徒達が席につき黙る。

 

「ええ、今日する授業は『魔術呪文の短縮、及び改変』とそれの実践だ」

 

それを聞いて一部の生徒にどよめきが走る。

 

「先生、魔術呪文の短縮と改変なんて出来るんですか?」


1人の生徒がそう尋ねる。

 

「ああ、出来るとも。その代わり、デメリットもあるがな。まずは短縮についてだが、これは魔術呪文の要点を掻い摘むことによってする事が出来る。

その代わり、掻い摘んで消した呪文の所の分、性能が下がる。威力が落ちたりな。」

 

生徒達はメモをとる。

その様子を見て先生は何度か頷き、

 

「よし、もう一つの魔術呪文改変についてだが、これはそのまま、魔術を改変すると言っていいだろう。例えば、【ファイヤボール】。この魔術の正式な呪文を唱えてみろ。⋯⋯えーと、じゃあティトフ!外に向かって唱えてみろ」

 

「はい。《炎よ・火球となりて・燃え上がれ》!」

 

そう外に向かって唱えると、炎の球が空に向かって飛んでいき、本当に小さくだが爆発する。

 

「よし、そーだな。これを短縮してみるとだな、《火の玉よ》!」

 

そう唱えると先程のファイヤボールが放たれる。

 

生徒達からおおっ!と言う声が上がる。

 

「それで、簡単に改変してみるとだな、⋯⋯そーだな、《炎よ・火球となりて・燃え広がれ》!」

 

そう外に放つと空中で小爆発したものが横に広がっていく。

 

「とまぁ、こんな所だな。よし、それでは教科書を開け。簡単に説明したものの詳しい事を教える」

 


今日の授業が終わり、帰路に着いていた時、テルルが少し興奮気味に、

 

「ねぇシャルテ。今日の授業凄かったね!呪文短縮と改変なんてさ!」

 

「確かに凄かったわね。特に改変。あれなら初級クラスの魔法でもかなり強力になるわ。⋯⋯でも、デミリットがちょっと⋯⋯」

 

「えーと、確かその分消費魔力が大きくなったり、暴発したり、だよね」

 

「そう、暴発の方がちょっと怖くて⋯⋯」

 

「⋯⋯そーよね。練習して暴発なんか起きないように頑張ろ?」

 

「そうね。練習あるのみよ!」

 

2人は両親から頼まれていた買い出しを済ませて早く家に帰るために少し速足になった。

 

 

ナガスの依頼を終え、その後結局依頼料が貰えなかったアレンは、とてつもなく飢えていた。

 

どんなにとてつもないかと言うと、この一週間、口にしたのは魔術で作った水だけである。

 

「⋯⋯⋯⋯やべぇ、このままじゃ餓死しちまう⋯⋯⋯⋯」

 

アレンがどうすればこの状況から逃れられるか考えていると、家の外からシャルテとテルルの声が聞こえてきた。

 

「そうだ!あの二人になんか奢ってもらえばいいんだよ!そうだそれだ!」

 

そう言ってアレンは力を振り絞って、走って家を出た。

 


「そこの2人止まれえええええええ!」

 

アレンは2人の前に立ち進路を塞ぐ。

2人はいきなり走ってきて前に立たれた事に驚き、少し身構えている。

 

「頼む!俺に何かを食わしてくれ!」

 

その言葉に2人は何を言われるのかと思って身構えたままポカンと口を開けて固まる。

 

「俺、一週間も何も食ってねぇんだ!このままじゃホントに餓死しちまう!だから何でもいいから食わせてくれ!このとーりッ!」

 

アレンは土下座をして頼み込む。

 

「ええ⋯⋯」


「えっと、私は食べさせて上げたいんだけど⋯⋯。いいのかな?シャルテ。少し多めに買えばいいのかな?」

 

「うーん、お母さんとお父さんがいいって言えばいいんだけど⋯⋯。まぁ、あの二人ならいいって言うでしょ。その代わり!今回だけだからね!?」

 

「お、おおッ!俺、お前が女神に見えて来たよッ!」

 

そうしてアレンはシャルテの家でご飯を食べる事になった。

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