第1章 第5話 3人の物語の始まり

目が覚めると知らない天井があった。どうやら気を失ったまま放ったらかしにはされなかったらしい。ベットに寝かされ、布団も被せられている。

外を見ると太陽が昇ってきている。

 

「俺、半日位寝てたのか⋯⋯」

 

アレンはベットから起き上がろうとして、何かいい匂いがする事に気がついた。匂いがする方を見ると、そこにはお粥が置かれている。冷めているようだが、空腹のアレンはそんな事を気にしない。

 

ガツガツと大きな音を立てながらお粥を一瞬で食べ終え、元にあった場所に戻した時、気づいた。

椅子に座っている女の子がベットに倒れ込むようにして寝ているのを。

 

「こいつ、確かあの時いた⋯⋯」

 

その時、部屋のドアが開きまた違う女の子が部屋に入ってきた。

その女の子はお粥を持っている。恐らく冷めたお粥を変えに来たのだろう。

 

その女の子は目覚めている俺を見ると目を見開き、寝ている女の子に「シャルテ!起きたよ!男の人が起きた!」と呼びかける。

シャルテと呼ばれた女の子は飛び起き、俺の方を見る。すると途端泣き出して、

 

「よかった⋯⋯、よかったよぉ〜テルル〜ッ!」

 

部屋に入ってきた女の子に抱きついた。

テルルと呼ばれた女の子も泣きそうな様子で、「うん⋯⋯。うん⋯⋯ッ!」とか言っている。

 

その光景を見ていたアレンは、

 

「いや、そこは俺に抱きつくところじゃね?」

 

と、冷静にツッコミをいれていた。

 

 

2人が泣きやみ、アレンがテルルが持っていたお粥を食べ終えた後、

 

「ええと、とりあえずは礼言っとく。ありがとうよ」

 

「いえ、私の放った雷魔術が原因で倒れたんですから。看病するのは当然です」


「へ?看病?」

 

すると、今度はテルルが、

 

「そうですよ。夜中もずっと看病してたんです。でも、シャルテの治癒魔術でも起きないから、これはもうダメかと思ってたんですよ」

 

「へ、へぇー。そーなんだ⋯⋯」

 

その時のアレンの内心は、

 

(⋯⋯言えない。あの時倒れたのは空腹と疲労が原因だから治癒魔術しても起きないですよなんて、絶対言えない⋯⋯)

 

だか、アレンはそんな事が頭から吹き飛ぶくらいの言葉をシャルテから聞く。

 

「ホント、一応でも魔術階級白の私の治癒魔術が効かないってなったら、もう死んじゃったとしか思えないもの」

 

「⋯⋯⋯⋯は?」

 

「そりゃ、私もまだまだ未熟だから効かないこともあるかもだけど、光系統に1番力がある私の治癒魔術が効かなかったんだから、もっと勉強が必要ね」

 

「⋯⋯ま、待って!」

 

「へ?な、何?」

 

「お前、シャルテって言ったよな?」

 

「う、うん。そーだけど⋯⋯」

 

「シャルテ、魔術階級白なの?」

 

「ええと、うん」

 

「⋯⋯そんな⋯⋯が、⋯⋯向け⋯⋯を打っ⋯⋯か?」

 

「ええと、何⋯⋯?」

 

「そんな奴が人に向けて魔術打ったってのか──ッ!」

 

アレンは朝早くから近所迷惑などを考えずに発狂する。

 

「どうりで魔術が通り抜けた時異常な位熱いと思ったわ!魔術階級白の奴が人に向けてあんな高威力の魔術なんか打つな!低威力でも打つな!」

 

またも昨日のように突然怒鳴られ目を丸くするシャルテ。

すると、テルルが呟く。

 

「⋯⋯⋯⋯通り抜けた?」

 

「あ」


早々にボロが出るアレンであった。

 

 

「ええと、一応自己紹介しとくわね。私はシャルテ=カミラよ。17歳で、魔術階級は白」

 

「私は テルル=セシクォーゼって言います。同じく17歳で、魔術階級は黄です」

 

「⋯⋯⋯⋯なんでそんな奴らが2人もいるんだよこの家。⋯⋯俺はアレン=イルヴァレルだ。17歳で魔術階級は灰」

 

するとテルルが、


「私は、ホントはこの家の子じゃないんですけどね。両親が幼い頃に他界していて⋯⋯。そしたら、シャルテのご両親がこの家に引き取って下さったんです」

 

「⋯⋯そ、そうか。なんか悪いこと聞いちまったな。あと、同い年なんだから敬語使わなくてもいいぜ?現にシャルテなんか敬語使ってねーし」

 

「そう?じゃあ普通に喋らせてもらうね。質問していい?」

 

「ん?なんだ?」

 

「なんで久遠の森に入ったの?ゴブリンを連れてきたってことは森に入ったんでしょ?」

 

「そりゃ、あれだよ。猫を捕まえるために──」

 

すると、アレンはハッとして、

 

「そうだ!猫はどうした!?俺が掴んでた猫!」

 

今度はシャルテが話す。

 

「あの猫ならケガしてたから治癒魔術で癒してあげたわよ。そしたらその猫の飼い主だって子供が現れてその子に渡したわ」

 

それを聞いたアレンは、

 

「そ、そうか。よかった⋯⋯⋯⋯ってよくねぇよ!?俺あのガキから依頼料貰ってねぇよ!?あのクソガキめ、依頼料払わないで帰りやがって!今から家に押しかけちゃる!」

 

「あ、そーいえばあの子結構なお金を『あのお兄ちゃんに渡しといて』って言ってたわね」

 

「あの子ったらいい子じゃない〜!今度あったらナデナデしてあげる!」

 

「まぁ、そんなお金渡さなくていいからその猫に使ってあげなさいって言って返したけど」

 

「てめぇぶん殴るぞ!?」

 

「とにかく!またこんな事が起きないように、これからアレン!貴方を監視するわ!」

 

「とにかくじゃねぇよ、お前が俺に依頼料払いやがれ!」

 

2人の言い争いと、そんな2人の会話の押収を隣から苦笑をしながら見つめるテルル。

 

ここから、そんな3人の物語が始まる。

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